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神のみぞ知る
しおりを挟む闇の国シュタウト。
そう聞くと、知らない者は恐ろしい国だと思い込む。
光の国ボランジュ。
そう聞くと、知らない者は幸せに満ち溢れた国だと思い込む。
だがその実態は。
内情は。
イメージと真逆であることを知る者は、一体どれくらい居る事だろう?
ボランジュ国は何よりも身分を重要視した。
それは生まれつきのものであり、選ばれた者であるとされた。
次いで、容姿を重要視した。
かつてはそうでも無かったのだが、いつからか金髪碧眼の美丈夫が多く生まれるようになったのだ。それも貴族に多く。
光の国。
輝く容貌。
それらはいつしか国民の意識を捻じ曲げていった。
ボランジュは選ばれた国なのだ、神に愛されし国なのだと。
結果、真逆ともいえるシュタウト国を忌み嫌うようになった。
だがボランジュ国は知らない。
その歪みが、偏見が……この国を滅びへと向かわせてる事を。
彼らはまだ知らない。
実際は、シュタウト国こそが神に愛された国であることを。
貧富の差に苦しむボランジュとは対照的に、シュタウトは身分はあるが皆が皆、幸せだった。尊い身分の者は下の者を思いやり大切にし。下の者達は国を愛し、国の為に動く。
皆が皆、幸せであろうと努力する国。平等な幸せを求める国。
そんな国を神が愛さないはずがない。
ミレナの曾祖母は、そんなシュタウト国のかつての王女の一人だった。まだ仲が良かった頃に、ボランジュ国の公爵家に嫁いだ。
だが嫁いで間もなく。
風潮が激変したのだ。先に述べた選民思想が強まって来たのだ。
結果として、ミレナの曾祖母の晩年はけして幸せとは言えなかった。屋敷の奥に閉じ込められ、外に出る事は叶わず。
ならばせめて祖国に帰りたいという願いも、両国の関係悪化を危惧したボランジュ王家と公爵家によって却下された。
ひっそりと。
ミレナの曾祖母は。
涙を流しながら。
一人寂しく、最期を迎えたことを。
もはや公爵家の者ですら、知る者は居ない──
幸か不幸か、彼女の容姿を受け継ぐ子孫は生まれなかった。
それゆえ忘れかけられた彼女の存在。
だがこれまた幸か不幸か。
代を経て、ミレナへとその容姿は受け継がれる事となる。
それは果たして偶然なのか運命なのか。
神のみぞ知る──
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