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4、メリッサとフィリア─と、床
しおりを挟む「どうにかしてください」
「それは私からもお願いしたいです」
いよいよ卒業間近となり、卒業に向けて皆が忙しく動き回る季節。
私ことメリッサもまた、将来に向けて真剣に動くべき時が来ました。
──マジであの馬鹿、どうしよう。
それが目下の悩み。
いやね、本当なら婚約解消してしまいたいくらいに不良物件なんだけどね。親同士が仲いいから成立した婚約だけに、なかなか難しいのよ。
さてどうしたものかと思案に暮れていたら、訪問者がありました。
それが目の前の女性、フィリア男爵令嬢である。
うん、美人だ。
それが私の彼女に対する第一印象。
黒髪黒目のせいもあってか、不思議な雰囲気を醸し出す妖艶な美女。そりゃモルスも愛人にしたがるよねえ。と納得した。
だが、突然の訪問……用件は何だろう?と身構えてしまうのも仕方ない事。
未だに私とモルスは婚約が継続されており、モルスは彼女と一緒に我が屋敷で暮らすことを諦めてない様子。
もしかして、部屋のデザインや自分付きのメイドに関してあれこれ注文しに来たんじゃないだろうな。
もしそうなら、どう返そうかと考えていたら。
「モルスの馬鹿が、私を愛人としてこの屋敷に住まわせようとしてます。絶対嫌なので、婚約者であるメリッサ様から、どうにかやめるよう説得してください」
まさかの発言に、私は一瞬言葉を失ってしまった。
そして彼女の目を見つめる。
私の視線を感じて、彼女もまた見つめ返して来て──
(フィリアさん、モルスに苦労してるのね……)
(メリッサ様、貴女も……?)
と目で会話しました。いやホント、目で会話できるものなのねえ。それだけ私の目が憐れんだ目になっていたからなのか。それともお互いに通ずるものがあるからなのか。
そしてメリッサさんの「どうにかしてください」に始まり、私の「それは私からもお願いしたいです」に続くのである。
お互いに同志である事を理解した私達。
そうなると……出るのはモルスへの不平不満である。
ドンッとフィリアさんがテーブルを殴って叫んだ。
「大体ですわね、モルスの馬鹿は!自分がモテるとか思ってるんですよ!?どの顔が言うかって話ですよ!鏡見て出直して来いっつーんだ!」
その言葉に私は大きく頷いた。そして私も叫ぶ!
「性格マシならまだしも、腐れ外道ですものね!誰があんなのに惚れるかっつー話だわ!」
フィリアさんもウンウン頷いている。
「知ってますかメリッサ様、あの男、未だに魚の骨をメイドに取って貰ってるんですよ?自分で取って食べれなーいって、じゃあ食うな!魚食うなよ!」
「何それキモイ!そう言えばあの男、『出来る男はまずこれを読め』とかいう本を買ってましたね。出来る男はそんなもん読まねえっつーの!」
「ひええ、何それ!よくそんなの恥ずかしげもなく買ってるわね!てかそれ読んでも全然出来る男になってないし!」
「そうそう、大体ねえあの男は……!」
「そういえばこんな事も……」
言っておきますが酔ってないですよ。私達、全くの素面ですよ。
雰囲気だけで酔ってるような感じになってます!
そして。
「あのう……二人とも。せめて僕が居ないとこでそういう話、してくれる?」
「うるさい黙れ、虫けら」
「ゴミがしゃべるな」
「二人とも酷くない!?」
実は居ました。最初から居ました。
毎日のように押しかけて来るキモルス。違ったキモイモルス。
きっとモルスは、フィリアさんの訪問目的は『モルスと一緒に住みたい』って話をしに来たと思ってたろう。まさか『イヤ』なんて言われると思ってなかったようで、ずっと置物と化していた。あまりの事態にほぼ石状態。そのまま化石になれ!
「もういっそのこと籍だけ入れて、次期当主はメリッサ様がなるので宜しいのではないでしょうか?」
「そうですね、親の顔を立てて一応結婚しますけど……養子を迎えて育てるのも有りですね」
「いいですわね、それ。モルスとの子作りなんて嫌でしょう?」
「吐き気しますわ」
「分かります!私、モルスに手を握られた事があるんですが、それだけで鳥肌立ちましたもの!」
「まあ、お気の毒に……。ちゃんと消毒しました?」
「しましたしました!何度も消毒液をバチャバチャかけまくり、手を洗いすぎて荒れてしまいましたが……」
「あら大変。うちのメイド達が使用してるハンドクリームがとても良いので差し上げましょうか?」
「是非!」
いやあ、気が合うわ~。まさかフィリアさんがこんなに素敵な人だったとは!モルス、意外に見る目あるね!
楽しい時間はあっという間だ。
最終的に、私は一応モルスと結婚するが子は成さない事。養子とって後継育成に勤しむ事。
そしてフィリアさんは、卒業後は私付きのメイドとして当屋敷で働いてもらう事。
それらの話がついたのであった。
何もかもうまくいきそうで満足だ。私もフィリアさんも満足だ!
お互いに戦友のような絆が出来た私達は、ガッチリと握手するのだった。
全てを見ていたモルスは、既に屍と化し、床に泣き崩れている。
床の一部となった奴を踏みつけて、私達は新しい門出に向かって。
バタンッ
扉を開いた──!!
~fin.~
===あとがき===
オチがちょっと弱かったかな…と言い訳な後書きです(汗
婚約破棄しないの!?という意見も出るでしょうが、こういうのは野放しにしないで管理・監視しておくのが世のため人のため。
モルスは、浮気もお金使い込んで遊ぶとかも出来ず、窮屈な人生を送ることでしょう。生活に困らないだけマシと思えってことです。
女性二人は仲良く楽しく人生謳歌します、きっと。
というわけで最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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面白すぎる🤣
養子が取れるってことは分家は、居るのかな?🤣
言われぱなしで、同じ空間にいるキモルスもすごいね😳
ドMなのか?🤣
感想ありがとうございます!
そうですね、逃げ出さないキモルスはMなのかもしれません。
となると、今後の虐げられ人生も、意外と苦ではないかも…!?(笑
初めまして、ですね。引退したオジサン勇者からこの話に来ました。
モルス君は少し同情を……同情は……ないですね(^-^;)
メリッサ嬢とフィリア嬢がタッグ組んだら最強では?と思いました。モルス君を裏から操るでしょうね、むしろそれが分かって両家の両親は婚約させた?! 他の小説も楽しく読ませて貰っています。
ではm(_ _)m
初めまして。
随分前に書いた作品ですのに、感想いただけて嬉しいです(*´∇`)
ありがとうございます!
キモルスは草
モ で始まってる名前の時点でキモルス決定なのです(笑)