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1、メリッサ

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「なあメリッサ、俺達の結婚の話なんだが」
「はいはい、なんでしょう?」
「俺が君の家に養子に行く事になるだろう?少し屋敷内を改装してもいいだろうか?」
「はいはい、大改装とかでなければ構わないですよ。して、どのように?」
「フィリアが住みやすい部屋を作ってあげたいんだ」
「はいはい、却下です」

 お前は阿呆か!



【幼馴染令嬢のことが大好きな私の婚約者。三人一緒に住もうねって、馬鹿じゃないの?】



 私の婚約者はダルシュ伯爵家次男のモルス。モルドー伯爵家の一人娘である私と結婚して、我が家の次期当主となる予定の人。

 私達は17歳で、貴族が通う学園卒業まであと一年と少し。卒業と同時に結婚して、モルスは我が伯爵家の仕事を学ぶ事になっている。

 の。だ。が。
 のだが!

 なんでかフィリアという女性も一緒に住むことが決定してるようです。何それ?

 いや違う、誰それ、だよね。
 最初普通に「誰それ?」って聞いたんだよね。初耳な名前だったから。

 むしろ他に質問すべきことは山のようにあったと思う。だっていきなり「結婚したらフィリアも一緒に住んでいいかな?」とか言って来るんだもの。

 あまりにサラッと言われたので、それが誰なのか聞く事しか思い浮かばなかった。

 ひょっとして……すごく優秀なメイドさん?とか思った直後。

「僕の幼馴染だ!」

 と言われた瞬間、思考が停止しかけた私は悪くないと思う。

 なんで幼馴染を?
 聞けば男爵令嬢らしいので、ひょっとして使用人として雇って欲しいってことなのかな?男爵令嬢ならそういうケースも多いだろうし。

 と思った私は悪くない。至極真っ当な思考だと思うの。

 だからそう言ったら、とんでもないって顔された。

「使用人だって?とんでもない!僕の大切なフィリアを使用人にするわけないだろう!?僕らと同じように大切に……貴族として共に暮らしたいんだ!」

 なんなら専用のメイドは三人くらい付けたい!

 とか言われた瞬間。

「あ、こいつ馬鹿だ。馬鹿がいる」

 って思わず言ってしまった私は……絶対、悪くないと思います。

 あまりに阿呆な提案は即却下した。この話はもう終わったと思って数ヶ月……学園では三年生となり、卒業まであと一年を切った頃。

 唐突に言われました。
 つまりは冒頭の台詞を。

 え、なに、もう貴方の中ではフィリアさんとやらは一緒に住むことが決定なのですか?
 この家に?
 新婚ホヤホヤとなる私達と一緒に?
 貴方の幼馴染である男爵令嬢が?
 一緒に?
 住むの?
 決定したの?
 誰が決めたの?

「僕が決めた!」
「アホか」
「僕は次期当主となるんだ!好きにさせてもらう!」
「アホか!」
「アホじゃない!」
「じゃあ馬鹿か」
「馬鹿でもない!」
「アホか馬鹿のどちらか選べ」
「え、選択肢を与えられると悩むな……じゃあアホで。ってアホじゃないし!」

 思わずアホを選んだモルス。
 否定してるが私は声を大にして言おう。

 お前は阿呆で馬鹿だっ!!!!



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