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11、姉は私を虐げたい
しおりを挟む「酷いわルナ!私が貴女に何をしたと言うの!?」
食堂に響き渡る姉の叫び。
私は呆然としながら、ただそれを聞く事しか出来なかった。
「貴女が怪我をしたと聞いて心臓が止まりそうになるくらい驚いたのに。恐ろしかったのに。大した怪我ではなかったと聞いてホッとしたのよ?貴女の事をいつも大切に思って、心配してたのに……なのに貴女は私が突き落としたと思ってるんですって!?どうしてそんな……酷いわ!!」
一気にまくしたてて、ワアッと姉は泣き出した。泣いて……ルーカス様の胸に顔を埋めるのだった。
そんな姉の頭を愛し気に撫でるルーカス様。
美しい二人のそんな様は、とても絵になる。
「そんなことしないわ、するはずないわ!私は貴女を愛してるのよ、ルナ!?」
これは何の茶番だろうか?
姉に嫌がらせをやめてくれるよう頼み。
王太子に事情を説明して数日後。
突然二人は昼食を一人とる私の元へとやって来て、このような騒ぎを起こしたのだ。
私はもう何も食べる事も出来ず、ただそんな二人を呆然と見やる。
「大丈夫だよ、マリナ。君がそんなことする人じゃない事は、皆が知ってる」
「ですが!まさかルーカス様にまでそんな事言ってるなんて……!!」
「信じてないから大丈夫だよ」
そう言って、涙を流す姉の顔を覗き込んでニコリと微笑むルーカス様。
あと少しで二人の唇が触れあいそうな距離だ。
これはなんの茶番だろうか。
私は何を見せられてるのだろうか。
ルーカス様は、信じてないと言った。
婚約者である私の言葉を信じてないと。
ああ……もういいかな。
その瞬間、私の中に芽生えた感情は──めんどくさい。
ただそれだけだった。
恋の炎は一気に燃え上がるものだけれど。
水をかければ一気に消え去るものだと知った。
私は。
私の中には。
もう、ルーカスへの恋慕の情は無くなっていた。綺麗サッパリ。それは消え去ったのだった。
「酷いわね、マリナ様の方が美しいからって陥れようとするなんて」
「マリナ様が居たら不安なんでしょうけど……鏡を見てこいって話よね」
「見てよなんてお似合いの二人なのかしら。とっとと婚約解消してマリナ様と王太子様が婚約なさればいいのに」
ひそひそと、聞こえよがしに聞こえてくる声。ざわつく食堂。
この場に私の味方は居ないのだと痛感した。
そして。
「ルナ!君とはまだ婚約しては居るが、実の姉を悪く言うような性根が腐った態度を改めないなら……そうであるなら、私にも考えがある!」
私を好きになったからと婚約希望してきた人物は。
身勝手なことをほざく。
もういいかな。
私はもう一度、心の中で呟いた。
どんどん心が冷えるのを感じながら。
目の前の茶番を、どこか別世界のように感じつつ、ただただ私は考えていた。
もう、いいよね……。
私の心がどす黒く染まる──
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