吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます

リオール

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第一部

25、吸血鬼と独白(1)

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※ギャグ無しの真面目です








 
 何なのだ、あの女は。

 今日の事を反芻しながらイライラを抑えられなかった。

 やはりフィーリアラを町なんかに行かせるべきじゃなかったんだ。
 あの愛しい存在を……少し気は強いが、とても優しくて暖かい……愛しくて仕方ない女性。

 金髪金眼の彼女を見た時、太陽の女神が舞い降りたのかと思った。クオーターの私は陽の光も平気だが、それでも強い日差しにはふらついてしまう。その私が初めて正面から太陽を見たと思ったのだ。

 あれほどまでに美しい存在に出会ったことは無かった。
 あれほどに強い魂の光を持った存在を俺は知らない。

 一目で惹かれた。一目で恋に落ちた。

 父も祖父も、伴侶である母や祖母の事を褒め称えていた。お前も彼女たちのような伴侶を見つけろと言われていた。

 だが少しとは言え、血を求める俺を好きになってくれる者など居るとは到底思えなかった。──母や祖母はかなり特殊なのだと思っていた。

 勿論、女性の吸血鬼だっている。祖父のような純血から私のように混ざった者まで。何度か会った事もあるけれど。

 誰も俺の気持ちを震わせる事は無かった。

 そんな俺が。
 出会ってしまったのだ。

 ──運命の相手に。

 フィーリアラの気持ちは分からない。けれどもう手放す気など無い。
 彼女が自分を受け入れてくれるまで待つ。自分を拒むのなら仕方ない。それでも誰にも渡すつもりは無かったけれど。

 分かっている、これは非常に自分本位な我儘だ。

 それでも、彼女が自分以外の誰かに微笑みかけるなど許せなかった。──ヨシュとエミリーとふわもふ達でギリだ。
 それ以外の存在に──ましてや男に微笑みかけるのを見てしまったら、殺してしまうかもしれない。相手の男を。

 それほどに自分は彼女に惹かれていた、囚われていた。

 いつかちゃんと言いたい。
 愛してると。結婚して欲しいと。

 けれどまだ時期尚早だ。ちゃんと彼女の気持ちを確かめないと。

 彼女の事が大事だから。
 早く手に入れたい。早まってはいけない。

 葛藤しまくった一ヶ月だった。

 そんなわけで町に行くのも本当は嫌だったのだけれど。

「貴方の妻となる私がすべきことなんです!!!!!」なんて言われて舞い上がってオッケー出した自分を殴りたい。

 まさか、あんな厄介者を連れてくる事になろうとは!

 醜いとしか思えなかった。
 愛しいフィーリアラの妹だとは思えないくらいに醜かった。

 吸血鬼の能力なのか、俺には相手の魂の光が見える。体の周囲に色づいた光が見えるのだが。

 フィーリアラは美しく光り輝いていた。
 ヨシュやエミリーは、ごく一般的な乳白色の光。

 そしてあのウェンティという女。

 あれは何という色なのだろう。
 どす黒いような薄汚い茶色というか灰色というか……とにかく汚い色を混ぜ合わせた色。

 あんな色は初めて見た。不快でしかなかった。

 抱きついてきたときは、本当に殺しそうになってしまった。体を擦り付けて来たときは、惨たらしい殺し方は何があったかと真剣に考えてしまったほどだ。

 屋敷になんて一歩も入れたくなかったのだけれど。

「申し訳ありません、ゼル様。一晩だけ宜しいでしょうか?」

 そう、心底申し訳なさそうにフィーリアラに頼まれて、断れるわけがなかった。

 あの女が今、屋敷内に居る。
 そのことがたまらなく不快だった。

 ベッドに横になり、そっと目を閉じた。集中して警戒する。屋敷内に意識を巡らせる。

 吸血鬼の能力は便利だ。意識すれば屋敷内の動きが手に取るように分かる。

 ふわもふ達……は大丈夫だな。みな気持ち良さそうに眠っている。

 エミリーは……部屋で熟睡か。今日も疲れただろう。彼女は本当によくやってくれている、何か礼をしたいと思ってるのだが。今度フィーリアラに聞いて、喜びそうなものを買ってあげよう。あとお給金も増やそう。

 ヨシュは……せっかく買った肉が今日はお預けになって泣いてるのか。仕方なかろう、あの女が居るのだ。あの女が居なくなってからゆっくり食べた方が味わえると思うぞ。冷気魔法で保存してるのだから肉は大丈夫。泣くなっつーの。

 そしてフィーリアラ……はまだ起きてるのか。妹が何かしないか心配なのだろう。本を読みつつ、扉の向こうに何かしらの気配が無いか気にしてるようだ。だがそれも限界のようで。コックリコックリ船をこぎ始めているのが微笑ましい。愛しさがこみ上げてくる。

 ──ほとんど覗きのようなこの能力は、ヨシュも知らない。知られたら怒られるから内緒な、とは父の言葉。確かにそうだ。だから余程の事がない限り、この力は使わなかった。今夜は特別だ。

 さて、あの女はどうか──気配を探って。

 ピクリと眉が動く。
 何をやってるのだ……。

 気付くのが遅れた自分を殴りたい衝動に駆られながら。

 俺はベッドから体を起こした。






コンコンコン





 予想通り。

 女は俺の部屋の扉をノックした。

 そして。

 返事もしてないのに、扉が開かれる。

「公爵様……」

 女が。フィーリアラの妹とは思えない醜い女が。

 透け透けピンクのベビードールを着て部屋に入ってきたのを見た瞬間。

 殺意を覚えた俺のことを責める者は、居ないのではないだろうか。

 












===作者の呟き=================

ここでD〇Cのクラ〇ザーさんが出てきたら面白いんだけど。「殺〇するぞ!」とか言って(笑(先日久々に見たもんで・・・)
にしても、なんで公爵はベビードールなんてものを知ってんだ
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