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第一部
7、吸血鬼とふわもふ(2)
しおりを挟むそのうち白髪眼鏡のおじーちゃんが出てきて動物解説始めるんじゃなかろうかと思いながら。
腕の中にもふもふワンコを抱き締め。
左肩にふわふわオウムを乗せて。
ふわもふサイコー!とか思ってたら。
なんか寂しそうな顔の吸血鬼公爵が目の前に居るんですけど。
いやこの人が本当に吸血鬼なのか、ちょっと怪しくなってきたわ。
「えっと、何でしょう?」
「……返せ」
「え?」
「私もモフりたい。どっちか返せ」
まさかの!もふりたい宣言!
誰だこの人を吸血鬼とか言ってんの。もう絶対違うだろ、これ。
ふわふわもふもふが好きな吸血鬼っているの?
「え~……もう少し堪能させて下さいな」
ここに来るまでの吸血鬼公爵への恐怖は完全になりを潜めている。
可愛いイケメン公爵を目の前にして、何だかちょっと意地悪してみたくなったり。
ランちゃんをギュッと抱き締め、リン君のお腹に頬をスリスリしてみた。
ふわっもふっ、も、最高!何度でも言いますよ、最高!
思えばお金の無い実家ではペットなんて飼えるわけもなく。
無駄金ばっか使う両親妹に家計は食い潰され。
欲しいと思った物を買えた試しはなかった!
でも、ずっと、ずーっと!欲しかった!ふわもふ~~~!!!
そんなわけで堪能させて貰ってたけど。
怒るかなあ?どうかなあ?
ここでの反応で、公爵の性格の一部でも見ようと思ったのだ。うん、実は戦略なのだ。
けしてフワモフ堪能したかったからではない!悪い方向に転んだら命を脅かしそうな賭けに出たのでは?と若干思わないでも無いが。
全てはフワモフのため!
……違った!
全ては実家の家族にざまぁするため!
賭けてみましょうこの命!
とか心の中で盛り上がってたんだけど。
反応無いなあ。
何してんの?怒りで言葉失ってるとか?
ちょっと怖くなったので閉じていた目をソローッと開けてみたら。
目の前には真っ赤な顔の公爵様。
あらやだ、やっぱり怒っちゃった?
焦ってランちゃんをお返しする。
「ど、どうぞ!」
なのに、公爵は固まったまま、私を見ている。……ランちゃんはしっかと受け取って抱き締めてるけど。
えーなんだ、どうした、なんでー?
「えっと……ゼルストア様?」
「か……」
恐る恐る問いかけてみれば、ようやく何かを口にする。
「か?」
「か、かわ……」
「かわ?」
かわ……かわ…………あ、カワウソも居るのかな?うそー、カワウソも居るなら愛でたいー!触り心地どんなだろー。
とかドキワクして、思ったまま
「カワウソですか!?何処に居るんですか!?」
とか聞いてしまった私を、背後のエイミーとその横に居るヨシュさんが生ぬるい目で見ていることに……私も公爵も気付きませんでしたとさ。
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