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第一部
1、吸血鬼と婚約破棄された令嬢(1)
しおりを挟む家族に食い潰されて、崖っぷちの経済状況に頭を悩ます日々を送っていた私、フィーリアラ・セラス・ファインドです、こんにちは。
忙しい日々を過ごしていた、ある日のある時間。
いきなりハゲ予備軍の父に呼び出された私は、「請求書の処理で忙しいんじゃぁ!」と叫んで部屋に入ったのだが。
私が雷を落とすことなどいつものことすぎて、誰も気にしない。
気にしろ、そして少しは仕事を手伝えよ、そこのハゲ。「予備軍」の文字消える事態になりたいのか。
ジロリと睨みつける私に、ニコニコ笑顔で父は言ってのけたのだ。
「良かったねえ、フィーリアラちゃん!君をお嫁さんに欲しいんだって!」
「は?」
「是非にと所望されたのよ。良かったわねえ、フィーリアラちゃん!母様も嬉しいわ」
「は?」
「良かったですわね、お姉さま!お姉さまをお嫁に、なんて奇特な方はそうおられませんわ。危うく行かず後家になるところでしたのよ!」
「あ゛?」
矢継ぎ早にかけられる言葉に「は?」しか言えなかったけど。
最後の言葉は喧嘩売ってるよね、ウェンティちゃん。
低い声出して睨みつけると、そっぽ向いて口笛を吹いてやがる。お前、本当に許さんからな!
イラッとしてたら、ウェンティの横に立ってる人物が目に入った。
「あれ、レイオン?」
そうだ、なんか訳の分からんことを親は言ってるけれど、冷静になれ。私にはレイオンが居るじゃないか。
「なぜ私がどっかの誰かと結婚を?私には其処に居るレイオンという、れっきとした婚約者が居るのですが?」
そう、レイオン。黒髪茶眼、人の良さそうな……を絵に描いたような。けしてイケメンではないが、優しそう、いや実際とても優しいレイオン。
彼と私は婚約してるのだ。8年前に。
けして愛し合ってではないけれど。親同士が決めたことだし、同じ伯爵家だし、まあいいかと思っていた。
来年、レイオンは20才になるので、その時に籍を入れる予定だったのだけど。
「ごめんなさい、お姉さま!」
そこでなぜかウェンティが乱入してきた。
うおっ、ビックリしたあ!
なんで涙目なの?
なんで私の手を握り締める!?
嫌な予感ビシバシ。こんな顔する妹が、ろくな事を言わないのは経験済みだ。
そして案の定、爆弾が投下される。
「レイオン様は私と愛し合ってるんです!!」
・・・・・・・・・・は?
「は?」
心の声出たわ!
え、でも、は?しか言えないよね。本当に、は?だよね!
え、何、どゆこと?おねーちゃん分かんない!
頭に疑問符をいっぱい浮かべてたら。
「つまりこーゆーことですわ!」
と言ったかと思うと。
「~~~~~~~∈☆△∝!?」
なにこれ!
なんで私は
妹と婚約者のキスシーン見させられてるわけ!?
そう、キス。
ウェンティとレイオンがキスしてるのだ!
しかも長いわ!深いわ!もういいわ!!
ようやく離れた二人は、顔を赤く染めてこちらを見た。
いや、見ないでよ。
何て言うか……気持ち悪いから。
身内と婚約者のラブシーンとか、気持ち悪すぎるから!
つまりこれはあれか。
レイオンは、不貞を働いていた、と。
ウェンティは姉を裏切った、と。
毎日毎日、会計帳簿と睨めっこして、ウンウン唸ってる私を尻目に、二人はキャッキャウフフと乳繰り合っていたと!!!
「嫌ですわお姉さま。そんなストレートに」
ストレートもカーブもフォークもあるか!
ああもうこの怒り、どこにぶつけてくれよう!?
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