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22、そんな簡単に婚約解消ってできるの?
しおりを挟むドリンク吹いた先にはメンテリオス。あ、ごめんごめん(棒読み)
「ななななななな……な!!!」
半端じゃないヘルンドルのどもりに
「なす」
「なっとうじゃない?」
「なにを言ってるんだお前達は」
見事なツッコミが生まれた。けして世界観どうなっとんじゃと突っ込んではいけない。野球やババ抜きがある時点で世界観などとうに崩壊している。
メンテリオス→私→ムサシム
の素晴らしきかな連携ツッコミ。いやムサシムのは違うか。
「どう見てもそう見えるんだが……違うのか?」
否定とも肯定ともとれるヘルンドルの様子に、不思議そうにムサシムは首を傾げる。
そうだよね、変態の行動見てれば嫌でも分かるよね。
ちょっと焦ったけど、分からない方がおかしい。差し出されたタオルで口を拭きながら、冷静にムサシムを見る。
ちなみに差し出されたタオルはメンテリオスから受け取った。先ほどのムサシムの指摘になんか思う所があったのかな。でも自分の顔を先に拭いたのを私は見逃さない!
にしてもムサシムは、硬派でそういう話は無頓着かと思ったんだけどねえ。意外と見てるんだな。騎士は洞察力も大事。
私の事が話題になってるのになぜか冷静なのはもう慣れたからか、達観したからか。
「ま、まあ……そういうことだ」
「そうか、それは良かった!」
「ん?」
最後の一言は私だ。何が良かったのだ良くなかろう。由々しき事態だ、大問題だ。
「この年になっても浮いた話もなく、ましてや婚約者も出来ないので心配してたのだ。もしや男色の気があるのではないかと思ってたぞ!」
「え、そうなんですかヘルンドル様。ちょっと距離とらせていただきます」
「まさかキュリアス様のことをそんな目で……」
「そんなわけあるかぁ!!!」
私とメンテリオスからの白い目で、ヘルンドルは真っ青な顔で叫ぶのだった。
叫ぶついでに「私はアイシュラ一筋だ!」とか叫ぶのやめてください。恥ずかしいわ。
しかし言われてみればそうだよね。普通侯爵家嫡男ともなれば、幼い頃に婚約者を決められててもおかしくないのに。
「そういえば、チェイシーには婚約者居ますよね」
誰だか聞いたことないけど、居るとは聞いている。
「ああ俺のことだ」
「マジか!」
サラッと言ってのけるムサシムに、思わず驚愕の声をあげてしまった。
いやまあ同じ侯爵家なら適任かと思うが。まさかのムサシム!原作アイシュラの攻略対象!
え、じゃなに、もしや原作チェイシーがシュリエッタ様と共にざまぁしてくるのって、婚約者の裏切りに対する制裁でもあるのか?
そりゃ婚約者の自分を差し置いて他の女に現を抜かすとか、ありえないもんな。怒るよ、そりゃ!
あんな可愛いチェイシーから婚約者奪うとかありえない!今の私は絶対しない!
ムサシムも真面目一辺倒って感じだし、今の彼ならチェイシーが居ながら私にフラフラくるなんてことはないだろう。
二人が貴族として割り切ってるのか、はたまた愛情ある関係なのかは分からないけれど。
それでもまた一つ、ざまぁ回避に一歩近づいたような予感に私の心中はお花が舞うのであった。
※ ※ ※
「あ~ムサシム様ねえ。いつ婚約解消しようかと悩んでるとこなのよ」
「マジかぁ!」
グハァッとまさかの展開に手で顔を覆う。
昨日の放課後の件を話したら、まさかのチェイシーからの返答!
舞ったお花を即回収。
「え、なんでなんでなんで!?」
「えーだって、ねえ。暑苦しいんだもん」
暑苦しいんだもんときたもんだ!
そうだね、あの地獄の特訓、熱血漢、飛び散る汗、熱気ムンムンで体から蒸気が立ち上る……暑苦しいわな!
反論できないわ!
ここでまさかの婚約解消か……。ざまぁは無いだろう、無いだろうけど!
「ちなみに……いつ頃に解消のご予定?」
恐る恐る聞いてみると
「私が卒業と同時に結婚の予定だからね。少なくとも卒業する前には……1学年上のムサシム様のことを考えると、もうそろそろ解消した方が先方の為にもいいかしらと思ってるところよ」
既に両家の親には話を通してあるわ、とのこと。
チェイシー行動早っ!
「でもでも、ムサシム様はそんなつもり無さそうだったよ?」
そう、ハッキリとチェイシーの婚約者だと言ってたもの!
「そうでもないわよ?婚約解消しませんかーって言ったら、いいよーって答えてたわよ」
いや「いいよー」じゃないだろう。軽いなキミら。
つまりあれだ、まだ正式に解消したわけじゃないから、一応今は婚約者だぜって事で昨日は答えてたのか。
これは最大級に警戒すべき案件だって事ですね。
追試対策の勉強を教わりながら、私の頭はフル回転するのだった。……追試の勉強、頭に入ってこない!
==========================
ご指摘いただきまして破棄⇒解消に修正しました。
ご指摘ありがとうございます!
そうですね、この話の場合は解消の方がいいですよね。
失礼しましたm(__)m
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