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しおりを挟む愛美(まなみ)……それはかつての私の名前。地球の日本という国で、女子高生してた時の名前だ。まさかまたその名で呼ばれると思ってなかった。
ゆっくりと目を開く。それは随分重たかった。
「愛美!?」
最初に目に飛び込んで来たのは白い天井。
次いで覗き込んで来た人の顔が見えて──不覚にも、泣きそうになった。
「おか、さ……」
喉が焼けるようだった。乾きなのか痛みなのか。分からないが、話すのにかなり苦労した。
かすれて聞き取りにくいだろう私の声を、けれど確かに母は聞き取ったようだ。
見る見るその目に涙が溜まり、そしてこぼれた。
「愛美……!良かった、無事で良かった……!」
そう言って私の胸に顔を埋めるお母さん。
何だかよく分からないのだけど……まあ何となく理解出来るのは、元の世界に戻って来たということなのだろう。でもってひょっとしなくても、これは事故直後の病院か?
死んでなかったのね……。
それではあっちの世界での出来事は、全て夢だったのだろうか?
走馬灯の代わりに、七年もの年月を体験したということなのか。
一瞬のうちに、何という長い夢を見たのか……。
我ながら苦笑してしまう出来事に本気で笑ってしまい、痛みに顔をしかめた瞬間。
ギュッと右手を握りしめる力に、痛ぁっ!と叫ぶのだった。
怪我人に何してくれてんの!?
そう思って手の先に視線をやった瞬間。
「うえ!?」
叫んだせいで全身に走る痛みに涙しそうになったけど、それどころではない!
私はビックリして固まってしまった。
「な、な、な……」
「う~ん……一体何事だ?」
「なんだ君は!一体どこから入ったんだね!?それにその格好は何だ!!」
言葉を失う私に、目を覚まして頭をさする人物。それを見て驚くお医者様。
他にも母や看護師さんの悲鳴を聞きながら、その人はゆっくりと立ち上がるのだった。
金髪碧眼、絵本に出てきそうな服を着た──王子様。
アラン王子がそこに居たのだった。
「なんで貴方が居るんですか!?」
「な!?なんだお前は!?そしてここは何処だ!?ラミ!ラミはどこだ!!」
当然だが私の容姿はすっかり日本人に戻っている。当然ラミだと気付くはずもない。
パニックになる王子。
パニックになる病室。
カオスとはまさにこの事か……!!
***
異世界転生した私は。
元の世界に戻る時に、王子を連れてきてしまった。
夢じゃなかったのねえ。あっちで七年過ごしたのに、こちらの時間経過してないから、異次元?異空間?SFだかファンタジーだか詳しくないのでよく分からん。
考えても分からないことに時間を費やすのは無駄だ。ってな事で、私は全てを受け入れる事にした。王子も異世界に来たという事は、状況を見て嫌でも理解したらしい。順応力の高さよ。
私がラミだと信じさせるのに随分時間はかかったが、どうにかこうにか受け入れた王子。行くとこないからって、なぜかうちで世話することになった。親の許容力よ。
「ラミ、これは何だ!平ぺったい箱の中に人が大勢居るぞ!だが随分と小さいではないか!これは小人族の魔法か!?」
「あ~それはテレビと言いましてですね。なんつ~か、え~っと……魔法です」
「うお、ラミ!これはそのテレビとか言うのより小さいぞ!文字が書けるぞ、何だ、勝手に文字が……!」
「それは携帯と言いまして……って、勝手にSNSに書き込むなや、リツイートがパねえわ。──魔法です」
「うおおお!どうしてこの箱は温かくなるのだ!?」
「コタツはですねえ……魔法です。眠くなる魔法が付属されてます」
もう面倒なので全部魔法にしたった。ラミと呼ぶなと言っても直さないので、もうそれも諦めた。
このままアラン様は元の世界に戻らないのか、それとも突然戻るのか分からない。だがかつての私のように、異世界に来て不安であろう彼のこと。もうしばらくは支えてあげようと思う。
「ラミ、この世界でも結婚はあるのか?」
「当たり前でしょうが」
「では俺たちもしよう」
「全力でお断りさせていただきます」
女心が分からない男は無理なので。
このままアラン様と微妙な関係で終わるのか、くっつくのか離れるのか。
分からないけど、分からないから楽しいんだ。かつてのゲームの世界みたいに、先が分かってるなんてつまらない。
これから何が起こるか分からない世界……やっぱり地球は最高だ!
ちなみに──アラン様のとんちんかんな投稿がSNSでバズるのは、また別のお話……。
~fin.~
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