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しおりを挟む月日が流れるのは早いもので、私は二年生になり、アルバートは三年生になった。当初の予定では卒業したらすぐに結婚だった。それまでに結論を出さなくてはいけないのだが。
保留婚約者のアルバートと言えば……
「ミリア、今日も可愛いな!」
「どうも」
「ミリア、先日の試験は良い結果だったそうじゃないか!流石だな、キミは本当に頭がいい!」
「いや、中の中の成績だったんですけど」
「俺もそうだ!似てるな、俺たち!」
「喜ぶべきポイントなんですかね!?」
「ミリア!昼を共に食べよう!」
「ミリア!今度デートしよう!」
「ミリア!キミの手は小さいな、可愛いな、繋いでいいか!?」
ミリアミリアと煩い!そして最後のような発言はちょっとキモイ!
裏の無い行動をとは言ったけど、ストレートすぎてウザイ!空気読め!!
そんなアルバートだが、予想外なお友達が出来たようだ。
「いやあ、今日も君たちはラブラブだなあ」
「王太子、お医者様に目を見ていただいた方がいいですわ」
「そんな照れてるミリアも大好きだ」
「アルバート様、その口閉じないと怒りますよ?」
「んほほんほほふふほ!」
「何言ってるのか分かりません、口開けてください」
「開けていいのか?怒られても好きだ!と言ったのだ」
「やっぱ閉じてろ」
王太子の前で何言ってんですか貴方は!恥ずかしいわ!
真っ赤になって睨みつけたら、王太子に大笑いされてしまった。
「あっはっは!本当にキミらはお似合いだ!!」
「──不本意です」
友達が居ないアルバート。だが、少しずつ口の悪さが直って来たせいか、ほんの少し友達が出来た。それ自体はいいのだけど。
なぜ留学から戻って編入してきた王太子とまで仲良くなってるのか。理解出来んよ。王太子って変わり者なのかしら?
そして伯爵令嬢程度の私には、王太子と一緒に居るなんて緊張しすぎで胃に穴開く案件ですよ!
「そうなの?ミリアはアルバートが婚約者なのは不服なの?」
「現在進行形で思案中なのです」
「そうかあ~不満があるんじゃ仕方ないな~」
思案中って言ったんですけど?王太子も大概マイペースな人だな。
と思ってたら。
「──王太子?」
「うん。何?」
「どうして私の手を握っておられるのでしょうか?」
なぜか手を握られた。ギュッと。両手で包まれる。なんだこれ。
「ねえミリア。アルバートが不満なら、僕のお嫁さんにならない?」
「────はい?」
思わず間を置いて返事してしまいましたよ。
え、何の冗談なんでしょうかこれは。
「王太子、冗談は──」
「僕は冗談が好きじゃない」
いや、今まさに冗談おっしゃってますよね。
王太子が?
伯爵令嬢と?
結婚?
いやいやいやいや!
有り得ないでしょう!
実は私がとんでもない能力の持ち主とかだったら分かりますけどね!?
でも無いでしょ、それは!
それに、そもそもですねえ!
「王太子、婚約者いらっしゃいますよね?」
「うん。だから側室ね」
サラッと言われたわ。
何それ!なんかムカつくんですけど!?
王家たるもの、貴族たるもの、側室や愛人が居るのは普通なのかもしれませんが!
私はそういうの絶対イヤなんですよ!
両親も当然居ませんし、アルバートの両親も勿論のこと……アルバート自身も、愛人なんて有り得ないって考えで。あれ、そういう点ではアルバートは私と気が合うのかな。
「ねえミリア、考えてくれない?」
えええええ……全力で断りたいけど、立場が!伯爵家程度の私がどうやって断ったらいいの!?
と、頭の中がグルグルなっていたら。
不意に、ガシッと王太子の頭を掴む手が。
「あだ!?」
「王太子、ちょっといいでしょうか?」
「え、アルバート!?な、何々!?頭痛い!ちょっと力緩めて!?」
「俺……私の聞き間違いでしょうか。今、ミリアを側室とか言いませんでした?」
「え、うん、そう言った──あだだだだ!痛い痛い!頭痛い!嘘だよ、冗談!ミリアはキミの婚約者だからね!取らない、取らないから!」
これ、まずくないのかな。いやでも、人の婚約者をとろうとか言ってる王太子の方が問題であるからして……。
未だ王太子の頭をギリギリと掴みながら、アルバートはコチラをクルッと見た。
「ミリア、いいか、キミと結婚するのは俺だ」
「え、う、うん?」
「俺はキミだけを見て、キミだけを愛して、絶対に幸せにする」
「へ……」
「絶対、誰にもキミを渡さない。分かったか?」
「あ~……ええっと……うん……」
見た事無いような真剣で真摯な様子に、なぜかドキドキしてしまった。いやまだ結論出すな私!これが本当に続くかどうかはこれからよ!?
そう思いながらもドキドキは止まらなかった。
「というわけで、キミを誰の目にも触れないような場所に監禁したいのだが。いいだろうか?」
「よくねえし!別の意味でドキドキするわ!!」
安定の変態ぶりに目が覚めたわ!
この病気なアルバートの愛情表現、本当に治るのかしら!?
私の結論が出るのは……まだまだ先になりそうだ。
「ねえ二人とも、僕のこと忘れてない?そろそろアイアンクロー外してもらわないと頭の形が変わっちゃいそうなんだけど?ねえ、聞いてる?いやホント見つめ合ってないで。もう帰るから、僕の婚約者のとこ帰るから。僕も彼女とイチャイチャしたいから……ねえ、僕の存在思い出してええ!」
~fin.~
===あとがき===
これにて完結です。ショートショートで収まりませんでしたね、短編でした(汗
「ヒロインに散々酷いことしてたくせに『実はキミの事が好きだったんだ!でも素直になれなくて!』」というキャラの話を何作か読みまして。ことごとく不幸になってく彼ら。たまにはこの面倒な捻くれ者にも幸せを…と思って書いたお話です。
とはいえ、ヒロインの結論はまだ出てません。どうなるのかは…?
思った以上の下衆行為にどう回収しようかと悩みました。まあ色々思う所はあるかと思いますが、こういう話も有るって事で(;・∀・)
お読みいただきありがとうございました。
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ありがとうございます!
王太子はある意味最後美味しいとこを持って行ったかと(^◇^)
そうですね、きっと幸せになることでしょう(≧ω≦)b
面白かったです(≧∇≦)b
多分、十年後にはミリアは憮然としつつも子どもたちと遊ぶアルバートを見て、ニンマリするけどアルバートと目があったら憮然とした顔をしそうです(≧∇≦)b
ありがとうございます!
将来的にはミリアはツンデレってことですね。ありえそう( *´艸`)
笑える!と言うか笑えた!(_≧Д≦)ノ彡☆ばんばん!のでアリなお話しだと思います。
本人無自覚なツンデヤンデレって💧
漫才なやり取りにしか見えないから、まわりは生温い目で見守ってきたのだなと。
後はお若い2人で・・・(((๑´ლ`๑)フ°フ°♡
ありがとうございます!
若いからこそ暴走するんでしょうね。大人になったらただのバカップルになってるかも?(^^;)