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しおりを挟む「あらあ?ミリアったら知らなかったの?おかしいわねえ、話したと思うんだけど」
とは母の言葉。
アルバートが言葉下手というか馬鹿だったことが判明した本日。
やや放心状態で帰宅した私は、早々に親を問い詰めていた。
「どうしてアルバートの骨折のこと黙ってたんですか?」
そう聞けば、冒頭の言葉が返されたわけだ。おっとりポヤン系な母では有るが、時々やらかすこういうポカが腹立つ。
「そうか~、それでやたらとアルバートと婚約解消したいって言ってたんだね。てっきり照れ隠しだと思ってたよ」
「照れ隠しで婚約解消したいと言うような、ハジケタ人間ではありませんよ」
同じくちょっと抜けてる父をギロリと睨んだら、アハハ~と困ったような苦笑が返された。
「アルバートの口下手も、今に始まった事じゃないからねえ。大人からしたら微笑ましいものだったよ」
どこが。どの辺が。私には全くもって理解できませんでしたけど。
「大人の前では私に対するモラハラ暴言行動を控えるとか、悪賢いとしか思えませんでしたが」
「初対面の時にミリアをブスと言ったことに、彼の両親も僕らも激怒してね。女の子には優しくしなさい!と強く言ったんだけど……それが逆効果になるとは……」
全くもってアルバートにも困ったものだ。
流石にその点については、気付けなくて申し訳ないと謝ってくれた。
「でもね、逆に貴女が居ない時、アルバートの惚気凄かったのよ?」
「は?」
頬に手を当て、色々思い出すかのように遠い目をしながら言う母。その言葉に首を傾げてしまった。
ノロケ?惚気?のろけとは一体?
「お庭で遊んでたらミリアの服がシャボン液で汚れてしまって。お着換えでミリアが居ない時に、『今日のミリアは格別可愛いです。シャボン玉を吹く姿に目を奪われました。ストローになりたくて持ってるストローを奪おうとして体が強く当たってしまいました』……とか言って来た時には、彼のお母様が泣いておられたわ」
その涙は絶対感動の涙じゃないですよね。
「息子が変態になりそうだって」
「でしょうね」
納得の涙の理由!
父も思い出したように、そう言えばと続ける。
「そう言えばミリアと一緒にプールで泳いだ時。キミが泣いて、もうプールで遊ばない!と部屋に戻った後。アルバートがやってきて、キミから浮き輪を奪ったとか言ったときには大人総出で怒ったものだが」
「……アルバート、なんて言い訳してました?」
「『浮き輪なんて要らない、僕に抱きつけばいいのに泣かれてしまいました。理解できません』とドヤ顔で言われたよ」
「アルバートのご両親は?」
「恋の病にしても重症すぎる。良い医者は居ないだろうかと本気で悩んでおられた」
「でしょうね!」
そこまで知ってて、なぜ婚約解消受け入れてくれなかったんですか?ちょっと酷いよね、うちの親。
ジトっと睨みつけたら困った顔を向けられてしまった。
「それでも、アルバートのキミへの愛は本物だったからねえ……大事にしてくれると思ったんだけど……駄目だったかあ」
「そうねえ……ミリアちゃん、本当に婚約解消したいの?だったら母様たちも本気で動くけれど」
そう言われて、今更……と思わなくもない。
でも考える。
私も私で両親にちゃんと話せてなかったのではないだろうか?
本気だと思ってもらえない程度の言い方しかしてなかったのかもしれない。
アルバート程ではないにしても、私も話し方が悪かったのかもしれない。
──まあそれでも、私が悪かったです、とは思わないけどね!!
「とりあえず保留となりました」
「あらそうなの?」
「はい。今後はアルバート様の努力次第かと」
「というと?」
「これから悪いところを直さないなら、どんどん嫌いになって婚約解消すると伝えておきました」
「なるほど。それで、アルバートは?」
どうでもいいけど、両親二人ともアルバートのことを平然と呼び捨てにしてるな。一応格上貴族の子息なんだけど。──実は結構怒ってる……のかしら?
「気を付けると言ってました」
彼なりの譲歩。
結果、裏のないストレートな言葉遣いになってたけど……まあそれは置いておこう。
両親とようやく腹を割って出来た話し合い。
結果、私の好きにしても良いと両親の許可は得た。侯爵夫妻にも話をつけておくとのこと。
何だろう、これまで全然進展なかったってのに……進むときはこうもトントン拍子にいくもんなんだなあと呆気に取られてしまった。
なんか色々あって疲労困憊な私。今後のことを考えると問題は多々ありそうな気がするが。
とりあえず夕飯まで少し寝よう。そう思い、寝台に倒れ込むのだった。
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