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しおりを挟む「なぜだもくそもありますか!乙女に鼻水付きのハンカチ出しますか、普通!?」
「乙女って誰だ!」
「突っ込むとこソコ!?」
なんか一度決壊してしまったら、何でも言えるようになるから不思議なものだ。
言ってやる、言ってやるぞ私!
「とりあえず!」
「とりあえず!?」
「──鼻かむのでちょっと待ってください!」
「よし待とう!」
お前もの分かりいいな!あ、お前とか言っちゃった、いけないいけない。私は令嬢、伯爵令嬢。猫はいくらかぶっても足りないのですよ。
私はポッケからティッシュを出して色々グチャグチャの、ヒロインにあるまじき状態を正した。
これで良し!
私はスッとアルバートに向き直った。
「改めて言いますが、アルバート様。私との婚約解消してください」
「嫌だ」
「だから何でなんだよ!?」
「あ゛?」
「いや、だからどうしてなんですか!?体裁が悪いとか言っても、結婚生活は長いんですよ!体裁気にして一生を棒に振るとかありえないでしょう!?」
本来つかないはずの文字に濁点つけるのホントやめて!私泣いちゃうから!また鼻水出ちゃうから!
「まあそれはそうなんだが」
「そうでしょそうでしょ!?だったらほら!今夜にでもご両親に婚約解消の話を──」
「だが断る」
「なんでなんですかあぁぁぁっ!!」
もうぜんっぜん!話が噛み合わない!地面に手をついて項垂れもするわ!○| ̄|_こうなるわ!orz
意味不明で混乱しながら地面を睨みつけてたら。
フッと視界が陰った。
なんだ?と顔を上げたら。
「──!!」
思った以上にアルバートの顔が近くてビックリした!
「あ、アルバート様?」
キョドリながら名前を呼ぶも、彼は黙ってジッと私を見つめるのだった。
よく考えたら、アルバートの顔なんてジックリみたのいつ以来だろう?会うたびに嫌な事を言われ続けてたので、すぐに顔を背けるのが当然となってたから。
眩しい銀髪に飛びぬけて青い瞳。筋の通った鼻に、形の良い唇。全体のバランスが絶妙で……うん、イケメンだなこれ。
黙ってればカッコイイのに、という代表的な容姿をしている。そう思って見惚れていたら。
いきなり顎を掴まれた。おう、アゴクイ!!
「あああアルバート様!?」
「まあ確かにそうなんだがな」
「?」
「お前は馬鹿で醜い女だが」
「──手、放してください」
この状況でも喧嘩売るとはいい度胸だ。買ってあげるから手を放せ下衆野郎。
「だが不思議なのだ」
「は?」
いいから手を放せ。
「俺はお前の事が確かに嫌いなはずなのに……どうしてか、目が離せないのだ」
「──何ですかそれは」
「頭の悪いお前を見ると、もっと頑張れと思う。だからいつも励ましてしまう」
ちょっと待て。
「ちょっと待て」
心の声出ましたよ。思わず出しちゃいましたよ。
「あれ、励ましなんですか?」
(こんな事も分からないのか?お前は本当に頭が悪い。幼子の方がもっと回転が早いんじゃないか?)
↑これのどこが?
「本当に頭が悪いが、幼子でもやれば出来るのだから、お前も頑張れば出来るという励ましじゃないか」
「分かるか!」
私魔法使いじゃないんでね!?そんな裏の裏の裏まで読めるか!
(なんだ、その無い頭で何を読むつもりなんだ。どうせ理解出来ないだろう)
↑じゃあこれはどうなんですか。
「俺が読み聞かせて教えてやるから、それで理解しろという意味だ」
「分かるかあああぁっっっ!!!!」
そんな思惑を読み取れる人がいたら尊敬するわ!むしろ神だわ!それこそどうやって理解しろっちゅーねん!!
「入学早々、『お前と関わりたくないから。絶対話しかけて来るなよ』って言ったのは!?」
「だがお前が関わりたいと言うなら仕方ない、相手してやるという意味だ!」
「お前もう会話の仕方講座受けてこい!!」
「そんなものどこでやってるんだ!」
「知るかっ!!」
誰か!
このクソ馬鹿口下手をどうにかしてください!!
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