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しおりを挟む「アルバート様!婚約解消しましょう!」
「嫌だ」
「そうですか嫌ですか、それは良かった!──え、うん、何だって!?」
その日のお昼。学食で、今日もなぜか同じテーブルについたアルバートに、開口一番言ってみたら。
即拒否されました!思わず淑女の仮面がどっか行ってしまいましたよ!
「あ゛?」
「うえっほん!えと、どうしてですか?」
濁点ついてない?こっわ!
ギロリと睨まれて思わず肩を竦める私。う~ん、強く出られるとやはり弱い。情けないなあ私。
「どうしても何も。婚約を取りやめるなど体裁の悪い事できるわけないだろう」
「でもアルバート様は私の事が嫌いなんですよね?」
「大嫌いだ」
「──醜い私は見苦しいんですよね?」
「目も当てられんな」
「馬鹿な私と一緒では会話が退屈なんですよね?」
「そうだな、眠くなる」
顔が引きつりそうになるが耐えろ私!十年以上耐えたのだ、あと少し堪えるくらい出来る!
「お互いに好意が無いのなら、流石にこの婚約は成り立たないと思います。結婚となればなおさら……」
そこまで言ったところで。
ピクリとアルバートの眉が動くのが分かった。え、怒ったのかな。
恐る恐るその顔を覗き込む。不意に。
ガタンッ!!
大きな音を立ててアルバートが立ち上がった。
「ひえ!?」
流石に大人になってから暴力は振るわれてない。更に言えばこんな人の多いところで、そんな行為に出るわけないと分かってはいる。
だがしかし!
刷り込まれた恐怖というものは。トラウマというものはそう簡単に消えるわけないのだ。
私はビクッとなって、頭を手で覆うのだったが。
しばしの沈黙。
しかしアルバートは何もしてこなかった。そして何も言わない。
「──?」
そうっと顔を上げて、その顔を仰ぎ見て……。
「!?」
私はギョッとなるのだった。
なぜって、なぜって──!!
「あ、アルバート様!?なんで泣いてるんですか!?」
そう、泣いてるのだ!
立ち上がって突っ立ってるアルバートの頬には、とめどなく涙が……!
私同様にケイティとセフィーもオロオロしている。そりゃそうだ、大の男が無言で大号泣してるんだから!
そうこうしてるうちに、周囲も異変に気付いたのか、奇異な目でジロジロ見られ始めた。
これはまずい、何だかまずい。
私は立ち上がって、ハンカチをアルバートの涙流れる頬に当てるのだった。
「アルバート様、一体……ひえ!?」
その瞬間!
グルンッと顔がこちらを向いたのだ!怖っ!すんごい怖いんですけど!?
ビビってたら、ガッと手を掴まれた。ハンカチを持ってる手を握られたのだ。
そして。
「あ、アルバート様!?」
グイとその腕を引かれ、足をもつれさせながら、私はその場から連れ去られるのだった。
振り返れば、困ったような顔の親友二人。
助けて!と目でヘルプを送れば。
頑張ってね~!
と口パクで見送られるのだった。
は、薄情者~!!
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