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しおりを挟む「もうほんっと限界!」
バンッと机を叩いたのは私。叩いた手がジンジン痛むけど、気にしてられない。それくらいに私は怒っていた。
教室中の注目を浴びたけど、そんなの構ってられなかった。
私はとにかく怒って怒って……怒りまくってるのである!!
その対象は、勿論アルバート。現婚約者だ。
「まあまあミリア、落ち着いて。気持ちは分かるけど」
「そうでしょそうでしょ、分かるでしょ!?これでどうやったら落ち着いてられるかっての!」
「うん、まあそうなんだけどね~」
涙目になって訴えたら、親友のケイティは困ったように苦笑する。困らせたいわけじゃない、これは八つ当たりだ。器の小さい私の情けない行動だ。
怒鳴った事を申し訳なく思って、小さく「ごめん」と言ったら頭をナデナデしてくれた。ケイティは優しいなあ。
入学してから半年間。
最初に近付くな、関わるなと言って来たアルバート。それに小躍りした私。
だというのに!
「毎日毎日毎日毎日……!!何の嫌がらせだっつーの!!」
毎日毎日、アルバートと会うのだ!
学年違うのに!教室、ものっそ離れてるのに!そもそも校舎違うのに!
なんの接点もないはずのアルバートと毎日会っては、嫌味三昧だ。さすがに昔のように暴力振るわれる事は無いけれど、私の胃はそろそろ限界を迎えていた。
「ううう……胃が痛い~」
「胃薬飲みます?」
「ありがとう、セフィー」
もう一人の親友、セフィーが薬と水を差し出してくれた。出会って半年だが友人二人ももう慣れたもの。手慣れた様子で常備してる薬をそっと差し出してくれるとか……どんだけアルバートに苦しめられてるんだ私。
今日も今日とて、図書室で出会った。図書室は万人が使用する部屋だから会う可能性もあるだろう。
──と言いたいところだが。無い。可能性、無いんですよ。普通なら。
マンモス校な我が学園は、学年ごとに校舎がある。図書室もそれぞれある。
つまり、アルバートが在籍する一学年上の校舎にも、当然のように図書室はあるのだ。
なのに!
どうして!!
「こちらにしか無い貴重な本があるのだ」
とか言って来るかな!?
私なんて月に一度行くかどうかの図書室に!!
そして案の定。
「なんだ、その無い頭で何を読むつもりなんだ。どうせ理解出来ないだろう」
ときたもんだ。
「うっさいわあああぁっっ!!」
思い出してムカムカしたらまた叫んでしまった。
「ミリア、ミリア!言葉遣い!猫が逃げてってるよ!」
は!いけない!
アルバートと関わり続けた結果、私はすっかり荒んでしまっていた。本性は荒れまくっているのだ。だがここは学園。貴族が集いし場所。私はいそいそと猫をかぶりなおすのだった。
「あら嫌だ、おほほほほ」
ケイティに「嘘くさ~」と言われてしまった。ほっとけ!
「もうこうなったらあれしかないんじゃない?」
私がまたも机に突っ伏したところで、セフィーが言った。
「婚約、解消すれば?」
「それ何度も言った。親にも毎日のように言ってる」
「ご両親はなんて?」
「またまた~、ミリアったら照れちゃって!大人になって結婚に怖気づいてきたんでしょ?でも大丈夫よ、結婚してしまえばそんな不安も嘘のように消えるわ!──だ、そうです」
「取り付く島もないと」
「取り付ける島探しの旅に出たいわ」
「どんな島よ」
涙にくれる私に親友の容赦ないツッコミが入ったところで。授業開始のチャイムが鳴るのだった。
授業を聞き流しながら考える。
両親に普通に言っても婚約は解消できない。そこでふと思う。
──別の人間に婚約解消を提案したら良いのではないか?
そうだよ!どうして気付かなかったんだろう!
あれだけ私が嫌いだと豪語してるのだ、アルバートだってこの婚約には納得してないのだろう!
とくればだ、彼自身に提案して、解消に向けて動いてもらうのが一番だ。
私だけでは説得力無いが、彼からも解消したいと言ってもらえれば。
さすがの両親も断ることは出来ないだろう。
どうして今までそれを考えなかったんだろう!そういう意味では確かに私は馬鹿なのかもしれない!
何だかようやく明るい光が見えてきた気がして、直後教師に当てられた私は、スラスラと回答を言うのだった。
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