婚約者は私が大嫌いなんだそうです。じゃあ婚約解消しましょうって言ったら拒否されました。なぜだ!

リオール

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 貴族が通う王立学園。

 私より一つ年上のアルバートは当然一年早く学園へと入った。おかげで会う頻度はめっきり減ったのだが、そんな快適な一年はあっという間に終わりを告げる。そう、私も入学する年齢となったから。

 とはいえ、学年が違えば会う機会など滅多にないと思っていたのだけれど。

「相変わらず陰気臭い顔をしているな」

 はい、会いました。なんでか会いました。学園広いです。規模、大きいです。貴族の子供の大半は此処に通ってますからね、当然っちゃー当然ですが。ちなみに例外は異国へ留学ってパターンです。ですが私の親はそんなの許してくれるわけないですからね。ここ入学一択でしたよ。

 で、どうしてこんな広い学園で、アルバートに会うんでしょうか。自分の運の悪さにうんざりする。

「一応婚約者だから仕方なく挨拶しに来たが。これでもういいな。俺はお前と関わりたくないから。絶対話しかけて来るなよ」

 ────はい?

 言ってる内容を理解するのに、たっぷり間がかかりましたよ。
 うん、何言ってるんでしょうね、この人は。

 でも安心してください。
 貴方は私に関わりたくない。
 私も貴方に関わりたくない。

 これはひょっとしてお互いにとって最高の状態なんじゃないでしょうか?Win-Winな関係って言うんですか、こういうの?

 ひゃっほう!と小躍りしながら、私は満面の笑みを浮かべて教室に入ったのでした。
 おかげでちょっと変な子と思われつつも、良い友人に恵まれましたよ。結果オーライ。

「へ~骨折までしたの?その婚約者ヤバイよね」
「そうでしょ?本当に早く婚約解消したいのだけど……」
「ご両親が納得してくれないと?」
「私がいくら言っても彼は良い人だ、の一点張りなの」

 今日も今日とて、楽しいランチ。学食で、私は友人二人と楽しくランチをしていた。
 ああいいなあ、こういうの。平和だわあ~……と、現状の幸せを噛みしめていたら。

「なんだ、貧相な食事だな。伯爵家はひょっとして財政難か?金目当ての結婚じゃないだろうなあ?」

 一気に苦虫嚙み潰しました。

 なぜ居るんですかアルバート!そうですね、学食ですからね!居てもおかしくないですよ、そりゃおかしくないですよ!

 でもここ、すんごい広いですよね。知り合い探すの無理レベルに!何これ、私どれだけ運が悪いんですか。

「アルバート様……どうしてここに?」
「何を言ってるのだお前は。ここは学食だぞ、俺が居て当然だろうが。お前の頭はどれだけポンコツなんだ?」

 いやそういう意味じゃないんですけど。

「私と関わりたくないのでは無かったのですか?」

 なのになぜ話しかけてくる!言ってることとやってる事が矛盾してるんですけど。

「関わりたくないさ。全くもって関わりたくない」

 冷めた目で言ったら冷めた目で返された。つめった!その氷の目、つめった!一気に季節は冬ですよ!

「じゃあ話しかけないでください」
「一人寂しく食べてるお前が憐れだったからな。俺の優しさに感謝しろ」
「──目、大丈夫ですか?」

 今私、友人と同じテーブルでランチしてます。
 見えますか?友人居ますよ、二人も。

「なんだ、空いてる席が無くて相席してただけじゃないのか?」
「いや空いてる席いっぱいありますからね!?」

 お前馬鹿だろ!

 ──などと言ってしまっては淑女失格ですからね。耐えますよ、ええ、ええ、私はあくまで貴方より下位の伯爵家が娘ですからね。
 言いたいことあっても、ここはグッと堪えます。アルバートと出会って唯一良かった事、それは根気強くなったこと。辛抱強くなったことですかね。

「仕方ない、嫌だが俺も同席してやろう。嫌だけどな!」

 嫌ならどっか行ってください!なぜ私の横に椅子を持ってきて座るんですか!

 いやちょっと待ってよ。
 そこで私はハタと気付きました。アルバートが一人な事に。

「アルバート様……ひょっとして、一緒に食べる方が居ないのですか?」
「そ、そそそそそそそんなわけないだろう!」

 そ、多いですね!

「そそそそそうですか」
「そ、が多いな」
「そそそそそんなことありませんよ」
「あるわ!」
「無いわ!」

 鬱陶しいなあもう!
 そんな私達の様子を見ていた友人二人。

「──仲、いいように見えるんだけど」

 目、腐ってんじゃない?



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