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しおりを挟む「どうして出しっぱなしにしてるんだ!ちゃんと片付けろ!」
「──はい、申し訳ありません」
地獄の文句言われっぱなしの日は続く。もうね、心の中は荒びまくりですよ!
不幸中の幸いというか救いなのが、学園での王太子とのクラスが違うこと。なのにですよ、この王太子、なぜか休み時間のたびに私のとこへとやって来るんです!
貴重な10分休憩なのに!馬鹿じゃないの?馬鹿だよね?うん、馬鹿だ。
と言ってやりたいのに、今日も今日とて文句に対して謝るしかないわけだ。
なぜって立場というものがあるから。
これがねえ、私が公爵令嬢でなかったら。身内も何もない、ただの小娘だったら。
即座にスリッパ持って来て、その頭をブッ叩くんですけどね!──ちなみにスリッパによるツッコミは、庶民派な友人から聞いた話。そんな大衆娯楽演劇見てみたい。マジ切望。
まあそもそも、公爵令嬢だから王太子と婚約してるんだけど。ただの小娘が婚約するはずもない。
そうして今日も貴重な10分にやって来た王太子の文句を受けるのだ。ちなみに今回は机の上に出したままのペンケースへの文句。いや次も授業あるんですけど?なに、ペンケースって毎回片付けなくちゃいけないの?なんとなくペンをクルクル回すとか駄目なの?え、もうそんなことしない?時代遅れ?ざけんな、それくらい好きにさせろ。
どんどん心の声の言葉遣いが悪くなる。そうでもしないと私の心のバランスが崩れるのよ。
ストレスが半端ない!!
ため息が出そうなのを呑み込んでいたら「なんだその不満そうな顔は。言いたいことがあるなら言え」とか言われたので「貴方の頭を思い切り殴りたいです!!」と叫びそうになったわ。叫ばないけど。
グッとこらえて黙ってると鼻で笑われた。その見下した態度、腹立つわあ!
「まったく、お前はいつまで経っても女らしさが身に着かないな」
『へ~へ~そりゃすみませんね』
「お前のような女が婚約者では、俺の恥となる。それを理解してるのか?」
『私にとっては、お前が婚約者なのが恥ですわ』
……『』に囲まれた言葉。これは言いたいけど言えない、私の心の声です。どうよ、ストレス溜まるでしょ?私はそろそろ禿げるのかもしれません。禿げたら禿げたで言われるんだろうなあ……「禿げるな!!」って。知らんがな!お前が禿げろ!
「そんなお前に言っておくことがある」
『はいはい、次はどんな文句ですかあ?』
「俺はもうすぐこの学園を卒業する」
『俺は、というか私も卒業するんですけどね』
「そこでだ、これを機にお前とは婚約解消しようと思うのだ」
『は~そーですかそーですか、どうぞお好きに……って』
「……はい?」
これは私の実際に出た声です。思わず出ました。いや出るよね、普通に出るよね。
思わず怪訝な顔で聞き返してしまったよ。それに対して、またも鼻で笑う王太子。
「どうだ、悲しいだろう?」
なぜそんなにドヤ顔なのか分かりませんが。
「本気ですか?」
「本気だ」
私の問いに即答。レスが早いね、素晴らしい。
「まあ嫌だと言うなら、仕方がない。俺の言う事を聞けば──」
「い……」
「?い?」
私の呟きに、今度はデニス様が怪訝な顔をする。
顔を俯かせ、体を震わせる私。
その様子が気になったのか、屈みこんで顔を覗き込んで来ようとした瞬間。
「いやったああぁぁ──!!!!」
思い切り天に拳を突き上げました!
私史上最高のガッツポーズは。
私史上最高のアッパーとなり。
見事に王太子の顎をとらえたのであった。
===筆者の呟き===
ペン回しって今の学生もやってるんでしょうか。ちなみに私は下手くそで、よくペンを吹っ飛ばしておりました(超不器用)。
応援ありがとうございます!
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