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しおりを挟むレオルドはまたも言葉遣いを注意するも、意味無いと思うな。
そもそも王太子は育ちが悪い。
たった一人の王子──後継ぎだからって散々甘やかされた王太子は、在学中とんでもなく好き勝手なことをしていた。
こっそり城を抜け出して、悪い遊びをやりまくったり。
いけないことを、たんまりと……。
まあそれはいい。卒業してしまえば堅苦しい王家の業務に締め付けられる日々なのだ。多少のおいたは目を瞑ろう。
だが楽しい卒業パーティでなんだこれは。
私は脱線しかけた話を戻すことにした。
「王太子、話が進みません。強引に戻しますが私との婚約破棄の理由は何でしょうか?」
「お前が脱線させたんだろうがあ!!!!」
「王太子ー!!」
そんなに叫んで喉痛くならないの?まあ私の知った事ではないけれど。
シレッと冷めた目で王太子を見れば、ようやく冷静になってきたのか、顔色が戻った王太子がハ~と大きな溜め息をついた。
「ミシェラ、お前色々な男と関係を持ってるそうだな?」
「は?」
突然何を言い出すのだこのたわけは。
キョトンとして問い返せば、「とぼけるな!」と叫んでビッと指を差された。
「俺は知ってるんだぞ、お前がそこのアンドリューと出来てることは!!」
「へ?あ、俺?」
「そうだ、お前だ!それだけじゃない、お前は学園中の男をたぶらかし、関係をもってるそうじゃないか!不埒極まりない行為!反吐が出る!」
わ~、それお前が言うか~。
とんでもない発言に思わず苦笑してしまった。
「しかも、しかもだな……!お前は俺の愛するリアリアを虐げたそうではないか!」
「……誰ですか、そのふざけた名前は」
何ですのん、そのリアリアって。親は何を考えてそんな名前つけたんだ。リアでいいじゃないか。繰り返す意味あるの?
「失礼ね!世の中にはアイアイとかカラカラとかあるのよ!?」
その時だった。
王太子の背後から突如として現れた女性がそう叫んだのだった。
どうでもいいけど、アイアイもカラカラも動物だよ。いいのかそれで。
突如現れたのは毒々しいフワフワピンクの頭を揺らす幼い子供。
いや違う、童顔ではあるが彼女は紛れもなく学園の生徒だ。
「あ~、お名前は知りませんでしたが、貴女があの有名な……」
「え、私有名なの!?」
「ええ、ピンク頭がきっついとか言われてるので有名ですね」
「何よそれ!!」
私に怒られても知りませんよ。
とりあえず帽子か無ければほっかむりでもしてくれませんかねえ。気分悪くなるはその頭。
「ほっかむりて!」
似合うと思うよ、ほっかむり。
そう言ってヘラヘラ笑ってたら、王太子がズイっと彼女の前に出た。
「ミシェラ、そうやって今までもずっとリアリアを虐めてきたのだな!なんという腐った根性!お前のような奴が俺の婚約者であるなどこれ以上我慢できぬ!よってこの場をもって婚約破棄だ!」
「つまり彼女が婚約解消の原因と?」
「そうだ!俺は真実の愛を見つけたのだ!!」
叫んで王太子はグッと握りこぶしを空に突き上げた。酔ってる酔ってる。この人、今自分の台詞に酔ってるよ!
「ほ~……真実の愛、ですか……」
「そうだ!」
「それ、何個目の愛ですか?」
「分からん!……て、え?何個目?何個目だと?何を言っている?」
私の言葉にギョッとする王太子。
まさか私が何も知らないとでも思ってるのだろうか。てか今、分からんとか言わなかった?どんだけよ。
「ですからね、王太子。貴方はあちこちで愛を見つけておいでのようですので。そのリアリアさんで何個目なんでしょうかとお聞きしてるのです」
「ななな何個目って!何個目もクソもあるか!俺はリアリア以外に愛は無い!初めて見つけた、最初で最後の愛だ!」
「ですって、アンドリュー」
王太子の言葉を受けて、私はクルッとアンドリューを見た。彼は先ほどまでの大笑いも既になく、冷め切った目で王太子を見ていた。
「随分ふざけたこと言ってるなあ……」
「なんだとアンドリュー!貴様、何を言って……」
「仕方ない、こんなところでとは思ったのですが、認めないならお見せするしか無いですね」
そう言ってアンドリューはゴソゴソと何かを取り出した。
スッと手の平に乗せられたのは、手の平大の水晶。
こんなところでとか言いながら、ちゃっかり用意してるんだから。性格悪いわアンドリュー。素敵だわアンドリュー。
「ミシェラ、それは声に出して言ってもいいんだよ」
「人の心を読まないで」
どうやって私の心を読んだ。
いや怖いから言わないで欲しい。知らない方が幸せな事ってあるんだよ。
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