婚約破棄だと言われたので、王太子の浮気を暴露したいと思います

リオール

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 貴族が通う学園で、本日は盛大なパーティが開かれている。それも例年にない規模の催しだ。

 それもそのはず、今年の卒業生の中には王太子を始めとした有力貴族が多数揃っているから。

 卒業生は勿論のこと、在校生も全員参加、家族も勿論のこと、諸外国から高位貴族までも招待した一大イベントなのである。

 宴も最高潮に達したと思われたところで。

 なぜか私は王太子に。

「ミシェラ=アリウズ公爵令嬢!俺は今ここにお前との婚約破棄を宣言する!性根の腐ったきみとの結婚など反吐が出る!」

 婚約破棄を突き付けられていた。

「そうですか、気が合いますね!」
「そうか、気が合うか!って何だそれは!」

 いやだって、私も貴方との結婚なんて反吐が出るわ!と思ってましたから。

 思っても言わないけど。

「ミシェラ、声に出てる」
「あらやだほんと?気を付けるわアンドリュー」
「気を付けるわではない!失礼極まりないな、お前は!」

 心の声が思わず漏れるってよくあることですよ王太子。気にしない気にしない。
 私は幼馴染で同じ公爵家のアンドリューとアハハ~と仲良く笑う。そしたら「笑うな!」と怒られた。ひどい。

「婚約をやめにするのはこちらとしても願ったり叶ったりなのですが、一応理由をお伺いしても?」
「ねが……強がりを言うな!お前は俺のことが好きで好きでたまらないのだろうが!」
「あんなこと言ってるよ、ミシェラ」
「王太子も冗談がお好きね~。笑えないけど」

 またアンドリューとそう言ってアハハ~と笑えば。

「笑っとるがな!」

 と真っ赤な顔の王太子に怒られた。なんですか、別に王太子のくだらない冗談で笑ってるんじゃないですよ。アンドリューが私と同じ事考えてることが嬉しくて笑ってるだけですよ。

「王太子、言葉、言葉……」

 怒りのあまり言葉遣いが乱れまくりな王太子を、背後から小声で注意をするのは同じく卒業生の宰相子息、レオルドだ。その眼鏡がキランと光って私を見る。

「ミシェラ様にアンドリュー様、言葉が過ぎますよ。まあミシェラ様はその性格の悪さが前面に出てるだけのことでしょうが」
「何の事やら?」

 性格の悪さなら貴方の方が上でしょうが。王太子のためと言っては何か色々陰でコソコソ陰湿なことしてるの知ってるのよ。泣いてる子、いっぱい居るよ。

 まあここでは言わないけど。

「だからミシェラ、声出て……ぶふっ!!」

 また声出てたか。指摘してくるアンドリューは、耐え切れず最後まで言わずに噴き出してしまった。

 あ、レオルドがこめかみに青筋立ててプルプル震えてる。なんですか、寒いんですか。

「レオルド様、寒いなら上着でもお召しになった方がいいんじゃないですか?」
「寒いのではありまっせん!!貴女の態度にイライラしてるんです!」

 空気読め!

 そう怒鳴られたけど、私はもうそれどころではない。

「聞いたアンドリュー?今、ありまっせん!て……ぶふっふ!!」
「ミシェラ笑うな、レオルドは真剣に……ぐ、く……ぷ……」

 堪えてない堪えてない、アンドリューもこらえきれてないよ!

「あはっは!だって『ありまっせん!』て……!何でそこに小さい『つ』が入るの?ありまっせん!駄目だ、ツボった!!」

 耐えきれずにアンドリューも体をくの字にして笑いだした。

 いやもう駄目だよそれ!箸が落ちるだけで笑っちゃうお年頃に、そういうの駄目!

「ええい、黙れ黙れ黙れー!!」

 ダンッと床を蹴りつける音に、さすがに私もアンドリューも笑うのをやめた。

 シンと静まりかえるパーティ会場。
 いいのかなこれ。各国からいろんな要人招待してるんでしょ?こんな醜態見せていいの?王様、パーティに参加してないけど、呼んで来た方が良くない?

 などと余計なお世話なことを考えていたら、レオルドと共に真っ赤な顔でプルプル震えている王太子。

「王太子、寒いならお召し物を……」
「寒くないっちゅーに!」
「王太子、言葉言葉……!!」

 心配してあげたってのに、王太子ひどいな!



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