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しおりを挟む男ってのはチョロい生き物だ。
ちょっと体を擦り寄せて甘ったるい声音で「助けて欲しいんですぅ」と言っておけば。
「俺に任せておけ!」
ときたもんだ、ハイきたもんだ♪
そうして引っかけた男は、騎士団長子息に宰相子息、どこぞの高位貴族令息たち。
まったく男なんて単純よねえ。
いや違う、全ては私が美しいからだ。皆が私の美貌を讃える。ああ、美しいって罪……!そういや誰かがそんな歌を歌ってたわね、何だったかしら?
まあ歌なんてどうでもいいわ。
大事なのは証拠。
姉が私を虐げてたという証拠、証言!
そして引っかけた男共は見事にそれらを捏造してくれたのだ!権力って恐いわね。
とにかく証拠は集まった。これで姉を追い落とし、私が王太子の婚約者になれるだろう。
解せないのは、最後まで王太子が私になびかなかった事だ。
あの男、私がどれだけ言い寄っても、泣き落としをかけても、けして手を出してこなかったのだ。
私が姉に虐げられてるって話を姉にしてる様子は無いが、それにしたって半信半疑といった感じだ。頑張って物ぶつけて青痣まで作ったってのに。私の玉のお肌を傷つけてまでの渾身の演技になびかないのよ。頭おかしいんじゃない?
正直頭がおかしい男との結婚は遠慮したいとこだが、そこは腐っても王太子。
見返り求めて言い寄って来る男共は鬱陶しいが、まあそれは適当に相手してやれば満足するので大した問題ではない。
さあ捏造とはいえ証拠は整った。
あとは王太子にこれを見せて……そしてもうすぐ行われる卒業パーティで大発表といこうじゃないか。
私はルンルンスキップで、書類を持って王太子の教室へと向かうのだった。
※ ※ ※
「イリア公爵令嬢!君には失望した!私はここに君との婚約破棄を宣言する!」
「なぜ!?なぜですかノルドス様!!」
三年生の卒業パーティには全学年が参加する。
そのめでたい場に響き渡る王太子の声を聞いて。
私は満足な気持ちでいっぱいだった。
姉の悪行をしたためた書類に目を通した瞬間の、王太子のあの顔!是非ともお姉様に見せたかったわあ!
『これは……捨ておけんな』
そう呟いて、私の手を握りこの会場へと共に来たのだ。
王太子と共に入場したのが私と知った時の、皆の顔!最高だった!
何より滑稽だったのは、姉だ。
きっと彼女は、どうして王太子が自分を迎えに来ないのかと不思議に思ったに違いない。
どうして私と一緒に入場したのか理解出来ないに違いない!
馬鹿ね、大馬鹿ね。
私が裏で何を画策していたかも知らずに、王太子の婚約者であるという立場に胡坐をかいてた罰よ!
さあお姉様。
お別れの時は近いですわよ──!!
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