姉にざまぁされた愚妹ですが何か?

リオール

文字の大きさ
上 下
5 / 10

5、

しおりを挟む
 
 
 今日は昨日約束した通りに王太子とお昼を共にする日よ!
 腰の痛みが何だ!玉の輿ゲットの為ならそんな痛みなぞ……

「エルシー、腰がどうかしたの?何だか姿勢が変だけど」
「ひえっふふ!!さ、触らないでくださいお姉様!!」
「ええっ?……本当に大丈夫?」

 ええい、寄るな触るな女の子は腰を大事に!

 座ってるのも辛い状態だけど、必死で私は笑顔を浮かべて心配そうに手を伸ばしてくる姉の手を払いのけるのだった。
 てか執拗に手を伸ばしてくるわね、分かっててやってる?腹黒?恐っ!

「本当に大丈夫かい、エルシー。顔色が悪いよ」
「だ、大丈夫ですわ。それよりこれ、美味しいですわね!」

 同じく心配そうに私を見て来る王太子に精一杯の笑顔を返し。

 私は話題を変えるべく、食事に意識を向けるのだった。

「そうね、今日のは格別美味しいですわ」
「イリアの妹君と昼食を共にすると伝えたら、コックが随分と張り切ってくれたんだよ」
「流石王室の料理人は腕が良いですわねえ」

 そんな二人の会話を聞いて、私の顔は痛み以外の理由で引きつった。

 そう、今日は確かに王太子と共に昼食をとっている。王室お抱えの料理人が気合い入れて作ってくれたと言うお弁当を囲んで、学園の中庭で楽しくランチタイムなのだ。

 だが待って。ちょっと待って。聞いてないよこんな状況。こんなはずじゃなかったよ。

 今私の目の前には、王太子と……その横に姉が居たりする。

 まあそうだよね、姉は王太子の婚約者だものね、毎日お昼一緒にしててもおかしくないよね、アハハ~可笑しいわ~。
 ──いやホントおかしいわ!!

 今日は私とランチの約束だったんじゃないの!?こんな可愛いエルシーちゃんと一緒出来るってのに、どうして姉というお邪魔虫まで一緒なんだ!!

 思わず肉にフォークブッ刺して千切り食ってやったわ!!

「まあエルシーったら、豪快ねえ」
「本当だね、エルシーは面白い子だねえ」

 あははのはー。
 ……ほのぼの笑ってんじゃないわあ!!!!

 おのれ、こうなったら仕方ない。奥の手を出すべし!

 虫は排除だ。
 私は側にあったお茶のカップを手に取って……そして

「あーっと、手が滑りましたわあ!!」
「え……きゃあ!?」

 女優級の名演技炸裂ぅ!!
 うまく手を滑らせて、私は姉にお茶を引っかけたのだった。

「やだ、ごめんなさいお姉様!」
「い、いいのよ気にしないで……」

 ここで大事なのは申し訳なさそうにすることよ!
 私はちょっと涙を浮かべて必死に姉に謝罪するのだった。

「本当にごめんなさい」
「大丈夫よ、お茶も冷めてたから。それよりこのままでは困るから、私は着替えて来るわね」

 イエス!
 見事に計画通り!
 濡れた姉は着替えるべく、この場を退室するのだった。

 我ながら恐ろしいくらいに完璧だわ。恐い、完璧って恐いわあ。

 立ち上がりこの場を去る姉の姿を見送って。
 さあ、これからが本番よ!!

 と満面の笑みを浮かべて王太子を見るのだった。

「仕方ありませんわね、ノルドス様ぁ、二人で食べましょっか♪」

 ノルドスってのは王太子の名前ね。気にせず呼べって言われてるから呼ぶよ、いっぱい呼ぶよ。

「いや、着替えがあるのか心配だから私も様子を見に行ってくるよ」
「──へ?」
「ごめんねエルシー。好きなだけ食べてくれていいから」
「え、いや、ちょっと……」
「じゃあね~」

 じゃあね~じゃねえわ!!

 ジーザス!なんてこったい!
 いやいや、貴方が行ったところでどうにかなると思えないんですけど!?

 そんな私の制止の言葉を聞くことなく、王太子はサッサと姉を追いかけて行ってしまうのだった。

 え、何これ、無駄に豪華な弁当目の前に私一人でどうしろと?
 え、まさかのボッチ飯?
 え、で、これ食べ終わったとして、後始末どーすんの?

 え?

 ……え?





しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

お姉様、本当に悪いのは私ですか?

ぴぴみ
恋愛
仲が良かったローズベルグ姉妹の関係が変わってしまった。 本当に『ざまぁ』すべき相手は私ですか? *11/26*分かりにくかった部分を変更しました。

私を選ばなかったせいで破滅とかざまぁ、おかげで悪役令嬢だった私は改心して、素敵な恋人できちゃった

高岩唯丑
恋愛
ナナは同級生のエリィをいびり倒していた。自分は貴族、エリィは平民。なのに魔法学園の成績はエリィの方が上。こんなの許せない。だからイジメてたら、婚約者のマージルに見つかって、ついでにマージルまで叩いたら、婚約破棄されて、国外追放されてしまう。 ナナは追放されたのち、自分の行いを改心したら、素敵な人と出会っちゃった?! 地獄の追放サバイバルかと思いきや毎日、甘々の生活?! 改心してよかった!

縁の鎖

T T
恋愛
姉と妹 切れる事のない鎖 縁と言うには悲しく残酷な、姉妹の物語 公爵家の敷地内に佇む小さな離れの屋敷で母と私は捨て置かれるように、公爵家の母屋には義妹と義母が優雅に暮らす。 正妻の母は寂しそうに毎夜、父の肖像画を見つめ 「私の罪は私まで。」 と私が眠りに着くと語りかける。 妾の義母も義妹も気にする事なく暮らしていたが、母の死で一変。 父は義母に心酔し、義母は義妹を溺愛し、義妹は私の婚約者を懸想している家に私の居場所など無い。 全てを奪われる。 宝石もドレスもお人形も婚約者も地位も母の命も、何もかも・・・。 全てをあげるから、私の心だけは奪わないで!!

やっと婚約破棄してくださいますのね!

ねここ
恋愛
この国の王族・貴族は、生まれてすぐ「仮婚約」が決まってしまうことが多い。 ソフィアが生まれてすぐ仮婚約を結ばされたのは第一王子だったが、これがありえないくらいの頭お花畑のお馬鹿さんに育った。 一方、私にくっついて王城に通っていた妹ミリアが仲良くなった第五王子は、賢王になること間違いなしと噂されていた。 1貴族から王家に嫁げるのは1人だけ。 妹ミリアを賢王に嫁がせるため、将来性皆無の第一王子から「仮婚約」破棄を言い渡させるため、関係者の気持ちが一つになった。

婚約破棄されるまで結婚を待つ必要がありますか?

碧桜 汐香
恋愛
ある日異世界転生したことに気づいた悪役令嬢ルリア。 大好きな王太子サタリン様との婚約が破棄されるなんて、我慢できません。だって、わたくしの方がサタリン様のことを、ヒロインよりも幸せにして差し上げられますもの!と、息巻く。 結婚を遅める原因となっていた父を脅し……おねだりし、ヒロイン出現前に結婚を終えて仕舞えばいい。 そう思い、実行に移すことに。

ざまぁの後~妹への復讐と私の幸せ~

ぴぴみ
恋愛
“妹への復讐と私の幸せ”のその後の話。

いつもわたくしから奪うお姉様。仕方ないので差し上げます。……え、後悔している? 泣いてももう遅いですよ

夜桜
恋愛
 幼少の頃からローザは、恋した男性をケレスお姉様に奪われていた。年頃になって婚約しても奪われた。何度も何度も奪われ、うんざりしていたローザはある計画を立てた。姉への復讐を誓い、そして……ケレスは意外な事実を知る――。

処理中です...