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しおりを挟む今日は昨日約束した通りに王太子とお昼を共にする日よ!
腰の痛みが何だ!玉の輿ゲットの為ならそんな痛みなぞ……
「エルシー、腰がどうかしたの?何だか姿勢が変だけど」
「ひえっふふ!!さ、触らないでくださいお姉様!!」
「ええっ?……本当に大丈夫?」
ええい、寄るな触るな女の子は腰を大事に!
座ってるのも辛い状態だけど、必死で私は笑顔を浮かべて心配そうに手を伸ばしてくる姉の手を払いのけるのだった。
てか執拗に手を伸ばしてくるわね、分かっててやってる?腹黒?恐っ!
「本当に大丈夫かい、エルシー。顔色が悪いよ」
「だ、大丈夫ですわ。それよりこれ、美味しいですわね!」
同じく心配そうに私を見て来る王太子に精一杯の笑顔を返し。
私は話題を変えるべく、食事に意識を向けるのだった。
「そうね、今日のは格別美味しいですわ」
「イリアの妹君と昼食を共にすると伝えたら、コックが随分と張り切ってくれたんだよ」
「流石王室の料理人は腕が良いですわねえ」
そんな二人の会話を聞いて、私の顔は痛み以外の理由で引きつった。
そう、今日は確かに王太子と共に昼食をとっている。王室お抱えの料理人が気合い入れて作ってくれたと言うお弁当を囲んで、学園の中庭で楽しくランチタイムなのだ。
だが待って。ちょっと待って。聞いてないよこんな状況。こんなはずじゃなかったよ。
今私の目の前には、王太子と……その横に姉が居たりする。
まあそうだよね、姉は王太子の婚約者だものね、毎日お昼一緒にしててもおかしくないよね、アハハ~可笑しいわ~。
──いやホントおかしいわ!!
今日は私とランチの約束だったんじゃないの!?こんな可愛いエルシーちゃんと一緒出来るってのに、どうして姉というお邪魔虫まで一緒なんだ!!
思わず肉にフォークブッ刺して千切り食ってやったわ!!
「まあエルシーったら、豪快ねえ」
「本当だね、エルシーは面白い子だねえ」
あははのはー。
……ほのぼの笑ってんじゃないわあ!!!!
おのれ、こうなったら仕方ない。奥の手を出すべし!
虫は排除だ。
私は側にあったお茶のカップを手に取って……そして
「あーっと、手が滑りましたわあ!!」
「え……きゃあ!?」
女優級の名演技炸裂ぅ!!
うまく手を滑らせて、私は姉にお茶を引っかけたのだった。
「やだ、ごめんなさいお姉様!」
「い、いいのよ気にしないで……」
ここで大事なのは申し訳なさそうにすることよ!
私はちょっと涙を浮かべて必死に姉に謝罪するのだった。
「本当にごめんなさい」
「大丈夫よ、お茶も冷めてたから。それよりこのままでは困るから、私は着替えて来るわね」
イエス!
見事に計画通り!
濡れた姉は着替えるべく、この場を退室するのだった。
我ながら恐ろしいくらいに完璧だわ。恐い、完璧って恐いわあ。
立ち上がりこの場を去る姉の姿を見送って。
さあ、これからが本番よ!!
と満面の笑みを浮かべて王太子を見るのだった。
「仕方ありませんわね、ノルドス様ぁ、二人で食べましょっか♪」
ノルドスってのは王太子の名前ね。気にせず呼べって言われてるから呼ぶよ、いっぱい呼ぶよ。
「いや、着替えがあるのか心配だから私も様子を見に行ってくるよ」
「──へ?」
「ごめんねエルシー。好きなだけ食べてくれていいから」
「え、いや、ちょっと……」
「じゃあね~」
じゃあね~じゃねえわ!!
ジーザス!なんてこったい!
いやいや、貴方が行ったところでどうにかなると思えないんですけど!?
そんな私の制止の言葉を聞くことなく、王太子はサッサと姉を追いかけて行ってしまうのだった。
え、何これ、無駄に豪華な弁当目の前に私一人でどうしろと?
え、まさかのボッチ飯?
え、で、これ食べ終わったとして、後始末どーすんの?
え?
……え?
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