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しおりを挟む「なんだって!リメリア、それは本当なのか!」
それを聞いて大声を上げたのは──ようやく頭がハッキリしてきたのか、目を見開いたカルシスだった。
「そうなのか、リメリア!」
「──証拠撮られてるんなら仕方ないわね。え~え~そうですよ。ふん、男なんてどいつもこいつも……ちょっと誘惑したら簡単に誘いに乗るんだから。まあでも仕方ないわよね、私が美しすぎるのが罪なのだから」
問い詰められてると言うのに、清々しい程の開き直り。ある意味凄い子。
「カルシス、言っておくけど貴方とのエッチ、あんまり気持ちよくなかったのよね。そんなんじゃお子様ミーシャすら満足させられなかったと思うわよ」
「な、な、な……!あんなに気持ちいいとよがっていたくせに!」
「あんなの演技よ、え~ん~ぎ!そんな事も分からないわけ?」
なんだかカルシスが気の毒になるくらいの言われようなのだが。その中で軽く私の事をディスるのはやめていただきたい。
「くそ!お前がそんな女だったとは!リメリア、お前との関係は終わりだ!もう二度と俺に関わるな!」
「言われなくても」
「というわけだ、ミーシャ!これでもう問題は無いだろう!?婚約は続行でいいね!」
いや良いわけないでしょ。どこをどうしたらそんな考えに至るのでしょうか。開いた口がふさがりません。
「厚顔無恥とはお前の事を言うのだな」
私が何か言う前に、口を開いたのはテルート様だった。
物凄く低い声音に、細められた目。ピクピク青筋立ってるこめかみ。うん、かなり怒っていらっしゃる。
「ミーシャがお前と結婚するわけがないだろう?」
「なんだと!?お前に何が分かる!」
お前って……その方、第二王子なんだってば。さっきの話聞いてなかったのかしら?気絶してる時だったかしら?
王子に食って掛かるとかとんでもない事してるカルシスだが、私は当然止める事はしなかった。
「ミーシャ!以前言ってたよね!?俺の事を子供の頃から好きだったって!」
「え……あ~まあそんな事も言ってたかもしれませんね」
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だから。
何が「な!」なの。
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「え、俺そんなこと言ったっけ?覚えてないや……まあいいか、そう言ったんならそうなんだろ。愛してるよミーシャ、幸せにするよ!」
「な、ふざけないで!どの口がそんなこと……!」
「そうだ、覚えてないくせに、よくそんな事が言えるものだ。黄色い花が一面咲き誇る場所で、言っただろうが」
「そうですねテルート様。タンポポにヒマワリにデイジーに菜の花……」
「そうそう。魔道具を使って、季節関係なしにあらゆる黄色い花を集めた庭を作ったのだ」
「そうでしたか。だからあんなにたくさんの……」
「キミが黄色の花を好きだと言ってたからな。用意させたのだ」
「そうそう。そうで……」
………うん。
ちょおっと待って。
え~っと……
最初の台詞はカルシスだが。
それ以降はテルート様と会話してます。
そう、テルート様と。
「テルート様」
「なんだいミーシャ」
「…………どうして知ってるんですか?」
言われて思い出した。
そう、あの言葉を言われた時。
『ミーシャ、愛してるよ。僕は絶対キミを幸せにしてみせる。だから……僕のお嫁さんになってくれる?』
黄色い花に囲まれた庭。そんなシチュエーションだった。
頭に花冠を乗せた私と……黒髪、青目の少年。
「え!?」
思い出された記憶にギョッとなる。
そうだ、あれは確かに黒髪青目の少年。
茶髪茶眼のカルシスじゃあない!!
「え、え、えええええ……!?」
「思い出した?ミーシャ」
ニッコリと微笑むテルート様の、その笑み。
それは間違いない。
記憶の中の少年の笑顔、そのものだったのだから……。
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