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17、
しおりを挟む「──なんて言うわけないでしょ!!」
「ぐおぁっ!?」
叫ぶや否や、私は渾身の力で蹴り上げた!──カルシスの胯間を!!
効果音付けるなら『キーンッ!』てところか。
潰れた声を出すカルシスを、思い切り突き飛ばした。抵抗する余裕も無くベッドの下に転げ落ちたカルシスは……そのまま股間を押さえて床にうずくまるのだった。ざまあみろ、この変態!!
不貞の証拠集めも出来ず、簡単に拉致される……私は確かに間抜けかもしれないけど。
それでも!
自分でどうにかしないで、誰かに助けてもらうのが当然だなんて思ってないのよ!!
「あなた何をしてるか分かってるの!?私は公爵令嬢よ!公爵家の人間にこんなことして、ただで済むと……」
「ぐ……こ、の……」
まだ痛いのか、蒼白な顔に涙を浮かべて目で私を睨むカルシス。そこにはもう余裕などどこにもない……醜い男が一人居るだけ。
「ちょっと……キミを甘く見ていた、よう、だね……世間知らずの、箱入りお嬢さんが……こんな、こと、してくる、なんて……」
「馬鹿にしないでよ。公爵令嬢だからこそ、身を守る術くらい一通り学んでいるわ」
そんな事も知らなかったの?呆れた……。
間抜けにもまだ股間を押さえたままで立ち上がるカルシス。強がっていても、男性にしか分からないその痛み……かなりのようだ。
「私は帰るわ。帰って全てをお父様に話します。覚悟しておくことね」
「無事に帰れるとでも?」
「帰るわ。その術を私は持ってる」
ホントは持ってないけど。こういう時はハッタリでも自信満々に言えば……本当のように聞こえるものだ。案の定、カルシスは警戒して近づいては来なかった。
私はジリ……と足をゆっくり動かす。目はカルシスから離さない。まずいことに扉はカルシスの背後なのだが……どうにかうまく移動して、扉まで……。
そう思っていた私に、とあるものが目に入る。
それに一瞬気を取られたのは、油断と言われてしまえばそれまでなのだが。
「帰すものか!!」
カルシスにとって、その一瞬は襲い掛かるのに十分だったのだろう。
いつの間に何処から出したのか、短刀を手に私に斬りかかって来たのだ!!
「な……!」
「ミーシャ!キミは俺のものだ!!」
誰がお前の物になるか!!股間がまだ痛いのか、内股で斬りかかって来るお前なんぞのものになど!!
私は咄嗟にベッドサイドにあった、テーブルランプを引っ掴んで──振りかぶった!!
「誰が誰のものだって?」
その時だった。
室内に低い男の声が響いたのは。
驚愕を顔中に広げて動きを止め、背後を振り返ったカルシスは──
「ぐあ!?──ご!?」
ぐあ、と言ったのは、短刀を持った手を切られたから。
でもって、ご、と言ったのは──私がぶん投げたランプが後頭部に当たった音、だった。
カランと音を立てて落ちる短刀。
腕を押さえて床に倒れ込むカルシス。
それを悠然と見下ろすのは。
「やあ。数時間ぶりだね、ミーシャ」
「……どうしてここに?」
「やだなあ、親友のピンチに駆けつけるのは当然だろう?」
「いつから親友になったんですか?」
「いや最初から」
友達=親友が成り立つほど人間関係は単純ではありませんよ。
そう教えた方がいいのだろうか。
私は悩みながら、目の前の人物を見つめるのだった。
右手に剣を持ったまま、余裕の笑みを浮かべたその人を。
本日お友達となった、第二王子テルート様。その人を……。
===筆者一人言===
たくさんの感想ありがとうございます。厳しいご意見含め全てありがたく読ませていただいてます。
土日は家族サービスで時間なく返信が遅くなってしまいます、申し訳ありません。
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