5 / 10
5、
しおりを挟むそれはスローモーションのようで。
けれど実際は一瞬。
勢いよく振り下ろされる剣に私は切られ、哀れ私は骸となる……
「わけあるかーーーーい!!」
叫ぶや否や、私はバシッと剣を払いのけた!
そう。
剣、払いのけたのですよ!
大事な事なので二回言っておきます。
「ふおへあ!?」
あまりの事に王太子が意味不明なこと言ってますね。ふ、おまいには理解出来まい。お前じゃない、お前はもうおまいでいい。何言ってるのか自分でも分からない。
「ふははは!おまいの剣なぞ止まって見えるわい!!」
いやあほんと、どうなってんだろうねコレ。自分でも分からないのだけど。
骨折も治って。体の傷の痛みも無くなり。
でもって簡単に王太子の剣を払いのけちゃった。
何これ、私いきなり能力に目覚めた?無双状態入っちゃう?
なんかもう、これはあれだ。
今まで大人しく虐げられてた人間が、ブチ切れた時に起きちゃうあれ。
豹変しちゃうあれだよね、それだよね、どれだよね、なんだろね。
「何を言ってるのだ貴様は」
マルセイに突っ込まれた。
私もそう思う。多分テンション上げ上げなんだと思います。
「か、カーラ……貴様ぁ……」
剣を払いのけられた王太子が怒りMAXでこちらを睨んできた。いたくプライドを傷つけられたご様子。やだ、快感!
「いい面構えになったではありませんか、王太子」
「うるさい!」
今更ながらの敬語がお気に召さなかったようだ。
「うるさいうるさい、うるさーい!もうお前は死ね、死んでしまえ!!」
「うわ、語彙が陳腐すぎてウケる、ププ~」
「──!!こんのおおおお!!」
完全に切れた王太子は冷静さに欠けていた。
しっちゃかめっちゃか剣を振り回して突進してきたのだ!
「次期王たる者、これくらいで冷静さを欠いてちゃ駄目ですよ~。ほら、こうやって私のように……」
ひょいひょいとその剣をかわし、フッと私は腰を落とした。
その頭上を剣が横ぎった直後……一気に飛び上がる!!
「んんんん冷静にパーンチ!!!!」
別名アホは飛んでけパーンチ!略してアんパー……ゲホゲホ!むせた!
飛び上がりながら、叫びながら、むせながら!
繰り出したパンチが王太子の顎にクリーンヒット!!
ドッゴオオオン!!!!
いい音したわあ!
「ふごへぐあぁぁぁぁぁ……!!」
そうして。
馬鹿な王太子は馬鹿な叫びを残して。
遠くのお空へと飛んで行ってしまいました。
キランて光ったよキランて!!
「王太子いぃぃぃ!!!!」
叫んでるのは誰だろう、どっかの貴族か民衆か。まあどうでもいいわ。
私はパンパンと手の埃を払いながら、満足げな笑みを浮かべるのだった。
とりあえず馬鹿一匹駆除完了!──やだ、漢字だらけだとカッコ良くなるわね!
パンパンと埃を払い終えた私は。
クルッと後ろを振り返った。
「ひぎゃ!」
あら、ひどい声。いや顔か。
面白い程に青ざめた顔のレイシア──妹がそこに居た。
「あら、レイシア。どうしたの?姉をそんな目で見ないでよ」
「だ、誰が……」
「誰が姉だって?そうね、私も貴女を妹とは思ってないわ。手当たり次第に男と寝るような女、妹だなんて思いたくないもの」
「な……!!で、出鱈目言わないでよ!」
「目が泳いでるわよ」
「泳いでないわよ!私の目はいつだってスックと立ち泳ぎよ!!」
立ち泳ぎって!いやそれ泳いでるし!立ち泳ぎって泳いでるからね!?
キョドリすぎて何言ってんのか自分でも分かってないんだろうなあ。
「婚約破壊女王の異名を持ってるくせに、何を今更」
「なななななな!何言ってんの!?ばっかじゃないの!?ばっかじゃないのおお!?」
「二度言うな、失礼なやつだな」
「失礼なのはあんたよ!あたしは清い女なんだから!悪女のあんたと一緒にするんじゃないわよ!」
「ひど!貴女の初体験である一昨年の夏、男とアハンウフンしてるの丸聞こえだったのを黙って放置してやったってのに!そういうこと言うか!?」
「一昨年の夏ちゃうわ!三年前よ!」
「なお悪いわ!お前いくつやねん!」
「どこの方言よそれはああああ!!!!」
なんかもう焦りまくりすぎて爆弾発言したの気付いてないようですが。
いいんですかレイシアさんや。
貴女の取り巻きがいつの間にか微妙に距離とってますよ。
「れ、レイシア……?俺意外の男とも寝たのか?」
「マルセイ!?何言って……」
「え、マジかよ!マルセイ殿、レイシア嬢とそういう関係もってるのですか?じゃあ私だけじゃないのか!?」
「嘘だろ!俺だけだと思ってたのに!」
「何だって、お前もか!?」
う~わ~私が知ってる以上の数いるなあ。凄いな、我が妹ながら。ドン引くわ。
驚いたのは、貴族令息だけじゃなく一般人からも「俺も……」なんて言葉が出てる事だ。レイシア……お前凄いわ。感心したくない方向で感心しちゃうわ!
「おま……そんなにアハンウフンが好きなのか?」
「アハンウフン言うなああ!男なんて抱かせてやればチョロいのよ!簡単に言う事きくんだから!ツルペタのあんたには出来ない芸当でしょうけどね!」
「ツルペタ言うなあ!!」
貴様あ!妹でも言っていい事と悪い事があるんだぞ!ちくしょう、胸をえぐるな!これ以上胸をえぐるなああああ!
===作者の一人言===
筆者の居住地がバレバレ。
私の他作品を読んでる方には分かるでしょうが、だんだんギャグがワンパターンになってますね。難しい…
168
お気に入りに追加
2,540
あなたにおすすめの小説
妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~
紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの?
その答えは私の10歳の誕生日に判明した。
誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。
『魅了の力』
無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。
お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。
魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。
新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。
―――妹のことを忘れて。
私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。
魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。
しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。
なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。
それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。
どうかあの子が救われますようにと。
婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。
久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」
煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。
その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。
だったら良いでしょう。
私が綺麗に断罪して魅せますわ!
令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?
番(つがい)はいりません
にいるず
恋愛
私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。
本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。
【完結】数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた
月白ヤトヒコ
ファンタジー
「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」
高らかに宣言する声が、辺りに響き渡った。
この婚約破棄は数十分前に知ったこと。
きっと、『衆人環視の前で婚約破棄する俺、かっこいい!』とでも思っているんでしょうね。キモっ!
「婚約破棄、了承致しました。つきましては、理由をお伺いしても?」
だからわたくしは、すぐそこで知り合った野次馬と手を組むことにした。
「ふっ、知れたこと! 貴様は、わたしの愛するこの可憐な」
「よっ、まさかの自分からの不貞の告白!」
「憎いねこの色男!」
ドヤ顔して、なんぞ花畑なことを言い掛けた言葉が、飛んで来た核心的な野次に遮られる。
「婚約者を蔑ろにして育てた不誠実な真実の愛!」
「女泣かせたぁこのことだね!」
「そして、婚約者がいる男に擦り寄るか弱い女!」
「か弱いだぁ? 図太ぇ神経した厚顔女の間違いじゃぁねぇのかい!」
さあ、存分に野次ってもらうから覚悟して頂きますわ。
設定はふわっと。
『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』と、ちょっと繋りあり。『腐ったお姉様~』を読んでなくても大丈夫です。
「最初から期待してないからいいんです」家族から見放された少女、後に家族から助けを求められるも戦勝国の王弟殿下へ嫁入りしているので拒否る。
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられた少女が幸せなるお話。
主人公は聖女に嵌められた。結果、家族からも見捨てられた。独りぼっちになった彼女は、敵国の王弟に拾われて妻となった。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】何でも奪っていく妹が、どこまで奪っていくのか実験してみた
東堂大稀(旧:To-do)
恋愛
「リシェンヌとの婚約は破棄だ!」
その言葉が響いた瞬間、公爵令嬢リシェンヌと第三王子ヴィクトルとの十年続いた婚約が終わりを告げた。
「新たな婚約者は貴様の妹のロレッタだ!良いな!」
リシェンヌがめまいを覚える中、第三王子はさらに宣言する。
宣言する彼の横には、リシェンヌの二歳下の妹であるロレッタの嬉しそうな姿があった。
「お姉さま。私、ヴィクトル様のことが好きになってしまったの。ごめんなさいね」
まったく悪びれもしないロレッタの声がリシェンヌには呪いのように聞こえた。実の姉の婚約者を奪ったにもかかわらず、歪んだ喜びの表情を隠そうとしない。
その醜い笑みを、リシェンヌは呆然と見つめていた。
まただ……。
リシェンヌは絶望の中で思う。
彼女は妹が生まれた瞬間から、妹に奪われ続けてきたのだった……。
※全八話 一週間ほどで完結します。
【完結】初恋の彼が忘れられないまま王太子妃の最有力候補になっていた私は、今日もその彼に憎まれ嫌われています
Rohdea
恋愛
───私はかつてとっても大切で一生分とも思える恋をした。
その恋は、あの日……私のせいでボロボロに砕け壊れてしまったけれど。
だけど、あなたが私を憎みどんなに嫌っていても、それでも私はあなたの事が忘れられなかった──
公爵令嬢のエリーシャは、
この国の王太子、アラン殿下の婚約者となる未来の王太子妃の最有力候補と呼ばれていた。
エリーシャが婚約者候補の1人に選ばれてから、3年。
ようやく、ようやく殿下の婚約者……つまり未来の王太子妃が決定する時がやって来た。
(やっと、この日が……!)
待ちに待った発表の時!
あの日から長かった。でも、これで私は……やっと解放される。
憎まれ嫌われてしまったけれど、
これからは“彼”への想いを胸に秘めてひっそりと生きて行こう。
…………そう思っていたのに。
とある“冤罪”を着せられたせいで、
ひっそりどころか再び“彼”との関わりが増えていく事に──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる