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しおりを挟む「す!?な、何を聞くんだ!す……す……え、うおえっ!?」
ストレートに聞き過ぎたのだろうか、予想外な反応にこちらが困る。なぜ挙動がおかしいんですか、そんなに顔が真っ赤になってるんですか。
「好きですか?嫌いですか?」
「嫌いなわけないだろう!!」
好きか嫌いかを聞いただけなのに、大きな声で否定されて驚いてしまった。目を丸くして固まっていたら「あ……す、すまない……」と謝られてしまった。大声出し過ぎた、失態だとばかりにしょんぼりするメッサル様。心なしか垂れた犬耳が見えるような……。
「嫌いではない、ですか。では好きですか?」
別に他意があるわけではない。ラブの返事を求めてるわけではない。ライクぐらいの感情があるかどうかを聞いてるわけなのだけど。
メッサル様は明らかにきょどっていて、目を上に下にと動かして焦点が定まらない。目の検査か。
「メッサル様?」
「嫌いではない……」
「では無関心とか?」
首を傾げて問えば、思い切り首を横に振られてしまった。うーん、ハッキリしないなあ。
煮え切らない態度にイライラしてたら、そんな私の気持ちが伝わったのだろう。
耳まで真っ赤になったメッサル様が、私の視線に困ったような顔をして……そして頭を搔きながらボソボソっと小声で何かを言った。
「……だ」
「はい?何ですか?」
いつもは大きな声なのに、ハキハキした話し方をするのに。こんなメッサル様は初めてだなと新鮮さを感じつつ、ちょっと鬱陶しいなとイラッときて聞き返したら。
俯いていた顔をガバッと上げて真っ直ぐ私の顔を見てきた。
そして
「大好きだっっっ!!!!」
と叫んだのだった。
「……」
「……」
大声の後の沈黙。
私は驚きで言葉が出ない。
メッサル様は(多分)恥ずかしくて何も言えない。
驚いた、実に驚いた。まさかの『大』が付くとは。それはひょっとしなくてもライク程度ではないのかもしれない。真っ赤になりながらも私の目をジッと見つめるメッサル様を見て、私はそう思った。
……少しは期待していいのだろうか。
私の事が嫌になったから、いろんな女性とデートしていたわけではないと。
私の事が好きだから、婚約を継続したいと思ってるのだと。
そう、思っていいのだろうか。
「好き、ですか……?」
確認の為にもう一度問うて顔を覗き込んだら、顔を背けることなく今度は真剣な顔つきのメッサル様と目が合った。ドキッとしてまうがな。
「好きだ、大好きだ、というか愛してる。こんな感情ラリーラにしか持った事ないし、これからも無い。結婚はきみとしか考えられない」
「愛!?」
まさかの愛きた!
茶化してるつもりはないんだよ!?ただね、ただね……聞いときながらなんだけど!私も超絶恥ずかしくなってきたんだよ!
「あ、愛……愛……あはは……そう、ですか……」
いつも馬鹿ばっか言ってる私だけど、流石にこれは何も言えない。照れ笑いを浮かべるしかない。
「おい俺もう帰っていいか、何見させられてんだよコレ」
あ、ドルン居たねごめん、でもまだ帰らないで。今のこの空気で二人きりにしないで。
そして確認したい事があるからそれ終わるまで待って欲しい。
私は顔が熱くなるのをどうにか押さえ込んで、肝心の質問をすることにした。
「ではどうして私を放って色々な女性とデートしてたんですか?そしてどうして突然婚約破棄だなんて言いだして、嘘だったとか言って撤回したんですか?」
「デートはしてない。婚約破棄の件は……すまなかった」
「すまなかったで済まさないでください。ちゃんと説明」
言い逃れは許さない。嘘も冗談も今は要らない。
そう目で訴えたら、珍しく真面目な顔をしてる私に押されたようにたじろぐメッサル様が目に入った。
ポリポリと頭を掻いて、何かを考えるようにメッサル様は目を閉じて。
そしてその目が開いた時、真っ直ぐに私を見つめてきた彼はそっと私の手を取った。ふおう!?
「何か勘違いしてるようだから全て説明しよう。そしてしかと聞け、俺の思いを」
……一体これから私は何を聞かされるんだ。
「なあ俺帰っていいか」
そしてドルンの声は聞こえない。
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