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しおりを挟む「おーい、こっちA定食三つにC定食二つな!」
「少々お待ちを!」
注文メモって控えをテーブルに置くトワロ。
「おいあんちゃん、水くれよ!」
「お冷やはセルフでお願いします!」
忙しく動き回りながら水差しを指差すトワロ。
「ちょっとお~こっちの注文まだあ?」
「もうすぐお持ちしますのでしばしお待ちを!」
「あらお兄さんいい男ねえ、こんな田舎に置いとくの勿体ないわあ~。一緒に来ない?」
「ありがとうございます!でも俺はこの家の息子なんで!」
「誰が息子だあああぁっ!!!!」
ナンパを華麗にかわすトワロ。
最後の叫びはパパさんです。
トワロの眼前すれすれで飛んで柱に刺さったそれは、包丁。ちょっとお父さん、料理に使う物をそんな風にしちゃ駄目でしょうが!!
なんか当然のように給仕してるトワロ。
注文バンバン受けてこなすトワロ。
綺麗なお姉さんのナンパをサラッとかわすトワロ。
うん、ホントちょっと待て。
なんでお前、うちでバイトしてるわけ!?
話は遡る事……大して遡らない三日前のこと。変態トワログルグル巻き事件の直後。
私が婚約者の生まれ変わりだと譲らないトワロと。
うっさい黙れ帰れよこの野郎な両親と私。
話は完全に平行線だったわけだ。
肝心の私が前世なんて覚えてませ~んとか言ったからね。そりゃそうだ、前世が聖女でしたなんて言えるか!
前世の私の能力はそりゃもう凄まじいものだった。かつての聖女の力を余裕で凌いじゃうくらいに。
広大な砂漠も緑がふっさふさになったりとかしたもんね!
まあその反動で、今や砂漠はかつての倍広がってたりするが。
大都市はともかくとして、こんな辺鄙な田舎だ。大して影響はない。王都はどうなってるのか知らん。知りたくもない。
かつての両親や兄達がどうなったかなんて聞きたくもない。
それを分かってるのかどうか分からないが、トワロは私の前世がどんな人物だったかを、皆には言わないでくれた。──まあ思いっきり名前呼んだけどね。
でも聖女の名前を知ってる人なんてごく一部、近しい人達だけだから問題無いだろう。
それよりも。
聖女の転生者だってことが知られる事が大問題だ。絶対聖女検査させられる。
──実は転生してもまた聖女だって……バレてしまうから。
それだけは、絶対に嫌だった。
なので、トワロにはとっととお帰りいただきたいのに!
なんで!
帰らないって居座った挙げ句バイトするかね!?人手不足なウチで超役に立ってんのかね!?
無精ヒゲ剃ったら超イケメン出てきて、女性客倍増してんですけど!?
両手に大量の料理を器用に持って運んでんなよ!
「へい、A定食三つお待ちい!」
「おっしゃ来た来た来たー!今日もうまそうだな!」
「うちの大将の料理は最高っすよ!ね、大将!」
「お、おだてても何も出ねえからな!」
──うちの親父デレさせてんじゃないわ!!
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