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第四章〜戦士の村

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 金髪に白髪交じりの、白馬にまたがるナイスミドル。
 赤髪に白髪交じりの、普通の馬にまたがる巨漢のオッサン戦士。
 白馬にまたがるナイスミドルの股には、ちょこねんと座る黒犬が一匹。

 パカランパカランと蹄の音を響かせて、道中を行く。
 俺の腰には長剣、ガジマルドの背には大剣。

「──いやなんなのこれ」

 見た目があまりに悪すぎる。どこからどう見ても賊じゃない、俺ら?

「ガジマルド、お前もう少し冒険者らしくできないの?」
「そんなことより誰がナイスミドルだコラ」

 さっきから実になる会話が一つもないときてる。
 俺達はササラに尻を叩かれながら、急ぎ旅の支度を済ませて村を出た。

「なにがなんでも、アリーとシャティアちゃんを無傷で連れ帰るんだよ!」とか言われて。

 そのつもりではあるが、どうにも士気が高まらない。ガジマルドと二人旅か~、むさくるしいな~、会話がはずまなさそうだな~とか思っているのは内緒である。
 内緒だが、隠すつもりもない。

「はあ……むさくるしいオッサンと黒犬との旅かよ。気分が盛り上がらね~」
「うっせえ。どの口がナイスミドルとか言ってんだ。俺だってお前と二人なんて楽しくねえよ」
「せめてエリンが魔族の姿をしてくれていたら……」

 念願叶って俺はエリンにまたがっている。俺が乗ってた馬は、今ガジマルドが乗っている。
 え、俺が乗ってもいいの? って聞いたんだけど、エリンは「さすがにその巨漢はちょっと……」と顔を引きつらせていた。気持ちわかる。俺が馬でも、あいつだけは乗せたくない。だから今ガジマルドを乗せてる俺の愛馬、本当にゴメン。でも俺はエリンにまたがれてハッピー。

「どうせなら、エリンが魔族姿の時にまたがりたいなあ~」
「お前、シャティアの前でもそういうこと言ってんのか?」
「言うわけないだろ」
「ホントかよ」

 信用が無いと書いてレオンと読む。だそうですよ皆さん。
 ガジマルドとの会話は楽しくねえやと、俺の前でエリンにちょこねんと乗っている黒犬──ビータンの背を撫でた。噛むな痛い。
 仕方ないなと、俺はエリンに「だいぶ遠いのか?」と聞いた。だから噛むのやめてビータン。

「そうねえ、丸一日はかかるかな。以前、魔王統治時代に一度あの女に掴まったことがあるのよ。その時連れられた城なら、間違いないはず」
「大変な目に遭ったんだな」
「まあうまく逃げれたからいいのよ」

 思わず同情の声をかけると、苦笑が返って来た。

「飛んで行けないのか?」
「うーん、あの女も言ってたけど、結界があるのよね。昔逃げた時は、偶然その結界が壊れたからだったんだけど、あの結界が復活してるとなると、おいそれと不用意に近付けないわ」

 それなら地上から行く方が安全。そう言って、エリンは心なしか歩みのスピードを速めた。シャティアが心配なのは俺だけでは無いってことか。
 ……いやちょっと待て。今の俺の考えは訂正しておこう。俺は断じてシャティアが心配なわけではない! アリーと共に連れて帰らないとどうなるか、考えたら恐いだけだ。
 ササラにエタルシアにハリミ……どれもみんな恐いんだもんよお。

「母は強し、だな」
「なんだ急に」
「いや、しみじみ思ってさ」
「そうだな」

 同意とばかりに頷くガジマルド。
 こういうとこは不思議と気の合う俺達なんだよな。

 そうしてむさくるしい旅を続けること丸一日。
 特に妨害もなく、無事に城に到着するのであった。
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