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第二章〜娘との旅路
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しおりを挟む「さて、質問です。本日何回魔物にさらわれたでしょう?」
質問するのは俺。目の前には困った顔してるシャティアが座っている。夜ということで焚き火を挟んでの食事中のことだ。
ちなみに夕飯は、村のオバチャンが「持っていきな!」と言って持たせてくれた料理。腐らないのかって? 便利屋勇者の収納魔法は、時を止めた世界に物を保管してくれるので大丈夫! 自分で便利屋と言ってたら世話ないが。オバチャンの飯うめえ。
それを頬張りながら質問したら、シャティアもモグモグゴックンしてから答えた。
「ええっと、七回?」
「八回です」
「あ、そっか」
「そっかじゃなーい!」
なに、『間違えちゃった、テヘペロ』みたいな可愛い顔してんだよ! そうじゃないでしょ、これはクイズ大会じゃないんだから!
「サラッと聞き流してた俺も悪いんだけどさあ、俺に会いに来る道中も、たっくさんの魔物にさらわれたようなこと言ってたよな?」
「うん」
「即答かい。で、そいつらに食われそうになったとか、危害を加えられそうになったとかはないのか?」
「無いよ」
その返答に、俺は思わず考え込んだ。
そうだよなあ、俺が助けた時も魔物はシャティアを担いではいたが、危害を加える様子はなかった。つまり魔物は、シャティア自身に執着しているが、害するつもりはないと。
導き出される答えは一つ。
「お前、モンスターテイマーか」
「なにそれ?」
「魔物使いってことだよ」
「だったらそう言ってよ。似合わない言い方しないで」
「言い方に似合う似合わないってある!?」
女の子って口が達者だよなあ。それも九歳ともなれば、結構キツイ。子供だから思ったことズバッと言ってくるので、結構胸えぐられる。俺が女だったら確実にAカップな胸になってるぞ。
「Aカップってなあに?」
「子供は知らなくていい」
思わず声に出ていたし。
「にしても、無自覚テイマーかあ……お前のママ達は気づいてなかったのか?」
「うん。だって旅に出る前は、こんなこと無かったもん」
「ま、僧侶エタルシアがいたら、魔物は寄ってこないもんな」
彼女の魔物避け魔法は凄かった。低レベル魔物が寄ってこないはずが、ドラゴンとか上位魔物すら寄ってこなかったんだから。つまりエタルシアがそれだけ規格外に強かったと。
その僧侶エタルシアと一緒にいたのだ。いくらテイマーでも魔物がいないんじゃ、その能力に気づかなくてもおかしくはない。
「勇者と、僧侶か魔法使いの子供……がモンスターテイマーねえ。遺伝子っておもしれえな」
「面白いの?」
「いやまあ、単純に凄いと思うぞ」
「そうなの? やったあ!」
凄いと思うと言えば、素直に喜び嬉しそうに笑う少女。いやホント可愛いな! 父親なんて嫌だと思っていたけど、なかなか悪くないんじゃないか?
「ねえパパ」
「レオンだ」
悪くないけど、それはそれ、これはこれ。パパと呼ばないで。
「パ……レオン」
「うん、なんだ」
「どうやったら魔物と仲良くできるかなあ」
「仲良くなりたいのか?」
「見た目が恐くないやつなら……」
「スケルトンとか連れて歩いていると、悪者が寄ってこないんじゃないか?」
「それ以外の人も逃げるから嫌だ」
「贅沢な。本当は恐いから嫌なんだろ?」
ニヤニヤして言ったら、水筒が飛んできて俺の顎にヒットした。痛い。女の子って難しい。
翌日もひたすら歩き、寄ってくる魔物を撃退しての旅路。ゴールは遠い。
ようやく街が見えてきたのは、昼過ぎだった。
「あーやっと着いた! 馬はいるかな……」
あえて大きな街を選んだのは、移動用の馬をゲットするため。金ははるだろうが、なに心配ない。俺は金持ちだから!(どやさあ!)
「私、馬乗れないよ」
「おーう」
それは困った。俺と一緒の馬に乗るかって? それはさすがに御免こうむる。そんな親子みたいなこと……
「パパと一緒に馬乗るの? 嬉しいな」
そんな親子みたいなこと、嬉しいに決まっとるやないかい! 思わず涙流して拳握るわ!
なんなのこの子、小悪魔なの? 俺、娘に誘惑されているの?
なんて阿呆なこと考えている間に、目の前には街の入口が迫ってきた。
「あー疲れた、とりあえず宿で休みてえ」
馬はとりあえず後だと、疲れ切った足を引きずるようにして宿屋の受付へと向かった。
「これは勇者様、光栄です! どうぞこちらにサインを!」
「あ、サインは断っているので……」
「いえ、これは宿泊契約書の書類です」
「ですよねえ!」
いかん、魔王を倒して10年、もう勇者だからってちやほやされる時代は終わったんだ。恥ずかしい! と顔を赤くしてサインする。
それから部屋に荷物を置いて、ひとっ風呂浴びたところで食堂ナウ。
酒でも飲もうかなとメニューを見てたら、フッと影が落ちた。なんだと見上げれば、テーブルの横に暑苦しい巨体を持ったヒゲモジャのおっさんが立っていた。
「ええっと、何か?」
「おお勇者様! どうかこの街をお助けください!」
食事の邪魔はしないでくれと目で訴えたのに、残念ながらその意図は伝わらず、おっさんはいきなり頭を下げてきた。その勢い、テーブルに額ぶつけそうなくらい。
思わず俺とシャティアは、それぞれの食事を死守すべく、皿を持ち上げた。
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