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6、
しおりを挟む「な、な、な、な……」
「なにぬねの」
「何するんですか!」
「違いましたか、ビスタさんは面白くない方ですね」
「いきなり殴るなんて!酷い!」
私の話を一切聞かず、ビスタさんは我が道を行かれる方だと分かりました。まあ私も貴女の話など聞くつもりはありませんが。
「ビスタさん」
「はい!」
まだ何か言ってるのを遮って名前を呼べば、ピシッと背筋を伸ばして返事されました。そんなに圧をかけたつもりはないんですけどね、威圧感というものに免疫ないのでしょうか。
「もう一度言います、嘘はいけません。私は嘘つきは嫌いです」
「嘘じゃありません!実際に今殴られて……」
「うん。黙って聞きなさい?」
私はまだ話してる最中なのです。話を遮るな……遮らないでください。
ムギュウと両頬をつぶせば、見事な『3』の口の出来上がりです。あら可愛い。
「貴女はカルシュ様と良い仲なんですよね?」
問えば話せない代わりにコクコクと頷くビスタさん。その返答に満足して私も頷き、そして言った。
「では未来の王となるカルシュ様……の側室となるのですから、嘘つきは駄目です。そんな心構えでは、たとえ側室であっても認められないでしょう」
「ひゃひゃわひゃひゃひゃ……」
「何言ってるのか分かりません。ほら頬を離してあげましたよ、ちゃんと話してください」
「じゃあ私が正室になれば問題ないでしょ!?」
「どうしてそうなるんですか」
本当に話が通じませんね。もう一度両頬をムギュっと潰してさしあげましょう。
「正室だろうと側室だろうと、嘘つきがなれると思わないでくださいね。確かに政治的には騙し合い化かし合い、嘘のつき合いもあるでしょう。ですがそれは正室側室には……特に側室には求められてません。騙し合い化かし合いはともかくとして、嘘つきが王のお心を癒せるとお思いで?」
国母たる王妃は嘘をつく必要性も出て来るでしょう。ですが基本は正直でなければいけません。不誠実で国民が慕ってくれるような存在になれるでしょうか?そして側室は王妃よりも王の心に添う必要のある存在。私とカルシュ様のように、愛のない夫婦となるのが目に見えてる場合は特に。側室の存在は王の安らぎ・癒しとならねばならないのです。
ですから。
「私は貴女が嘘つきとならぬよう、貴女が言ったこと全てを真実にしましょう」
「ふえ!?」
「という理由から、先ほどのビンタへとつながるわけです」
貴女先ほど私に頬をぶたれたと言ってましたものね。
「まず一つの嘘が真実となりました」
「え、え、あの……」
両頬を解放してあげたビスタさんの顔は真っ青だ。あらあら、そんなに喜ばなくても。
「次はええっと、教科書を破った、でしたっけ?早速貴女の教室へ行きましょう」
「いやいやいやいや!ちょい待ち!教科書はもう破ったでしょ!?」
「私はまだ破ってません」
「嘘よ、破ったわよ!破られた箇所を友達に見せたもの!」
「ではその教科書とやらを見せてください。そして鑑定に出しましょう。本当に私が破ったなら私が触った痕跡が出て来るはずです。そしたら貴女は嘘つきではなくなりますね」
「え、いや、そこまでしなくても……」
「ほらほら早く!まさか1ページ破けてるだけで騒いだわけではありませんよね?」
「ちょ、押さないでよ!てかあんた、何ページ破く気!?」
「私が本気になれば全ページ引き裂きますわ!」
「それ満面の笑みで言う事か!?」
結局。
破られたと騒いでいた教科書は1ページの半分程度と、ちっとも大したことありませんでした。私はその教科書を触らずに、側にいたビスタさんのお友達に鑑定に出すように言っておきました。王宮の鑑定士は優秀ですからねえ、誰が教科書を触ったか、直ぐに分かることでしょう。
とりあえず1ページなんて物足りな……ゴホン、1ページなんて破いたとは言えませんので。
数冊の教科書を思い切り「ふんぬう!!」という気合いと共に破り捨てておきました。
ビスタさんは喜びのあまり床につっぷして涙に濡れておりましたよ。あらあら。
「これで真実が二つになりましたね、ビスタさん!!」
「笑顔で言うなああ!!!!」
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