私に虐められたと嘘を広めたのは貴女ですか?折角なので真実にしてあげましょう

リオール

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「え?なんですって?」

 先日同様に私は図書室へと向かっておりました。と、そこへまた、先日同様に呼び止められてしまったのです。こんなこと学園に通うようになって初めての事ですね。

 どちらかと言えば私は人付き合いが苦手のほうでして、友人も少ないのです。学園内を歩いてる時に声をかけられる事なんて、ついぞありませんでした。それがこの数日で二回もそんな事があるのですから。ちょっと感動すら覚えてしまいましたよ。

 ですがそんな感動を味わってる暇はありません。

 私を呼び留めたご令嬢達は、先日とはまた異なる方々で、先日とは異なり何だか随分とお怒りのご様子です。

 そしていきなり早口でまくし立てられたので、よく聞き取れませんでした。なので聞き返しますと、ビシッと指を突きつけられてしまいました。──ええっと……私、一応……でもなく、れっきとした公爵家が令嬢なのですが。あまり五月蠅く言うのは好きでは無いので言いませんが、それってとても失礼な行為じゃないのかしら?

 と、首を傾げて彼女らを見ていると、「調子に乗らないでください!!」とか言われてしまいました。

 調子に乗る?はて、何の事でしょう?
 考えるのは一瞬。
 すぐに、ああ、あれの事かとピンときました。なので困ったようにまた首を傾げました。

「ええっと……先日の試験で一位になった事でしょうか?確かにあれは相当嬉しかったですし、ちょっと調子に乗ってたかもしれませんね。今後はそのような態度は表に出さないよう重々注意して……」
「いやそうじゃないでしょ!違うわよ!」

 え、違うんですか?てっきりそうだと思ったので、自分では分からないまま調子に乗った態度をしてたのだろうと謝ろうとしましたのに。まさか成績に関する事ではないと言われるなんて。

 では一体なんのことなんでしょう?
 もう首を傾げすぎてグキッとなってしまいそう。サッパリ分からない私はひたすら首を傾げながら彼女らを見た。

 するとまたビシッと指を突きつけられてしまいました。いい加減、それやめません?

「とぼけないで!ビスタ男爵令嬢を虐めてること、私達知ってるんですよ!」
「ごめんなさい、それ誰ですか?」
「ビスタはビスタよ!!!!」
「ミーさんとかエクスピーさんなら存じてますが……」
「いやむしろ誰よそれ!!」

 知らないのですか?ミーさんはなかなか面倒な方ではありますが、エクスピーさんはとても評判の良い方で……って、男爵令嬢で存じてますのはその二人くらいなのですが。

 う~ん、困りましたねえ……と頭を捻っていると、「カルシュ様との関係を邪魔しないでって言ってるの!!」と言われてようやく合点がいきました。

 ああビスタさん!そう言えば先日のご令嬢達もそんな名前を言ってましたね!

 すっかり忘れていた私は手をポンと打ち、「ああ、あの若草色の髪の女性!」と言えば「そうよ!」と返ってきました。大正解のようです。

「ビスタさんと言えば、カルシュ様と良いご関係だとか……」
「そうよ、二人は愛し合ってるんだから!政略で婚約した貴女の付け入る隙なんて微塵も無いの!どれだけビスタを虐げたところで、二人の気持ちは固いわ!あなたの虐めなんかに屈するようなビスタじゃないんですからね!」
「と言いますと?」
「みんな知ってるのよ!あなたがビスタを虐めてるってこと!性格最悪な貴女は王太子妃に相応しくないと専らの噂なんだから!分かったら二度とビスタに手を出さないで!!」

 言いたい事だけ言って、ご令嬢達はさっさと何処かへ行ってしまいました。

「う~ん、困りましたねえ」と頭を捻ること二度目。

 私はカルシュ様を愛してないのですが。
 貴族同士の政略結婚に愛が無いなんてよくある話ですし。

 先日のご令嬢達に側室がいても気にしないとお伝えしたのですが、どうもその話は広がってないようですね。むしろ悪い噂だけが一人歩きしてるような?

 人の噂も七十五日。気にしなければいずれ立ち消えることでしょう。

 そう思って、私はあまり気にしない事にしたのです。

 ですが、実際には七十五日も待ってられないものだな、と痛感しました。




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