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36、面白い顔の悪役令嬢ってどうなの
しおりを挟むそもそもですね!
なんでか妙な三つ巴になってますけど、なぜに三人は私に固執するんですか!私、ヒロインじゃないですよ!?そりゃあのぶりっ子相手なら、普通にしてりゃ勝てるでしょうけど!でもテリスみたく理由もなくヒロインに惚れるケースもあるってのに!
ケアミスは原作にいない攻略対象外の登場人物だけど。それにしたって何で私に興味もつかな。
「一目見たその瞬間にだな」
「説明してくれるんですか」
親切だな。
「こいつは面白いと直感が働いた」
「ふざけんな!」
親切に感謝した時間を返せ!
「醜い人間などには毛ほどの興味もなかったのだが」
「はあ」
まだ説明続くのか。
「お前くらいの醜さなら受け入れられると思ったのだ」
「ほっとけや!」
魔族にとって美の基準はそっち系(どっちだ)
つまり人間が美形と感じるのは魔族にとっては醜悪と。
「とどのつまり、私は人間の中では醜悪な方なんですね」
「人間の美的感覚など知らん」
そうケアミスが言った瞬間。
ブオンッという音と共に、また火の玉がかすめていった。あっつ!熱いわ畜生!
「女性に対して何とも失礼なやつだな」
おお、ゾルゼンスがなんでか怒ってる。怒った顔も素敵ですね、見た目だけはいいですよね。
「そもそも人間を醜悪というのなら、その人間に似た容姿の自分はどうなのさ。それ変身した姿なんだろう?なら元の魔物の姿に戻れば?そして魔族の嫁をもらいなよ」
同じくお怒りのベルシュ様がもっともな事をおっしゃる。
いやでもそうだよね。何もわざわざ醜い人間の中でマシ(?)なの選ばんでもいいかと。
元に戻ったらどうですか?兄上である魔王から察するに、結構怖いとは思うけど。見たくないので出来れば魔の国に戻ってからにしていただきたいですけど。
「これは別に変身した姿ではない」
が、予想外の答えに、私やベルシュ様にゾルゼンスは「「「は?」」」と仲良くハモってしまった。
え、変身した姿じゃない?どゆこと?さっき魔王が『かなり高位の魔族でなければ不可能だが、われら魔族は変身できるのだぞ!』とか言ってたような。
「確かに変身は出来るがこのような醜い姿ではない」
「へ?じゃあその姿は?」
え、まさかそれは本来の姿とか?実は人間と魔族のハーフとか?やだロマンス!
「これは呪いをかけられた結果だ」
ロマンス終了。殺伐とした理由だったわ。
「兄上が封印される前、人間との戦いでかけられた呪いなのだ。別に力が落ちるとかではなく、本当に外見だけが変わる呪いなのだが──この姿をしてると同胞に嫌がられるのだ」
「わ~地味に嫌な魔法ですねえ」
魔族の感覚では醜い人間の姿にして、同族から嫌がられる……結構きつい嫌がらせだな、それ。
「まあ元々魔族は群れるものでもなく、魔王のみに従う存在だ。同胞になんと思われようと気にしないが、水に映ったり何かと自分の姿を見てしまう時に自分に嫌悪感を覚える」
あ、それも嫌だな。
その呪いかけた人、性格悪いんだなあ、きっと。
「あ~なんか聞いたことあるなあ。俺のご先祖だな、それ」
「お前かい!」
ゾルゼンスのご先祖だけど、頭の中ではゾルゼンスが呪いかけてる絵が浮かぶ。この人ならやりかねない。呪う方法知ってたらベルシュ様もやりそうだけど。
「だがアンナを見た時に直感したのだ。これと一緒に居れば退屈な日々と別離できると。自分への嫌悪感を忘れられると。幸い私の今の容姿は人間には好感を覚えるようだからな。お前にとっても悪い話ではあるまい?」
「まあイケメンですね」
「そうであろう?よしお前は私の嫁だ」
なるか!嫁になるか!あなたの人生にほんの少しのスパイスを……って、私は香辛料になるつもりは御座いませんよ!
相手の性格は二の次でとりあえずイケメンなら何でもありって、それはぶりっ子の持論です。私にそんな持論はありません!
あれ、そういえばぶりっ子どこ行った。もう姿見えないや。今頃魔王と愛の巣へ、か。
「あれ」
「どうした、面白い顔をして」
「顔は関係ないし!無表情ですが笑えますかそうですか良かったですね余計なお世話だ!」
「忙しいやつだな。やはりお前は面白い」
もう何も言わん。何を言ってもケアミスを面白がらせる気がする。
思うに魔の国で私のようなキャラって居ないと思うんですよ。だからちょっと新鮮に感じるだけなんじゃないかな。
「何か気になるのかい、アンナ?」
ベルシュ様に問われたので仕方なく口を開く。ケアミス笑うなよ、笑ったらその頬を思っきしつねってやるわ。その気配を感じたかケアミスは黙ってる、よしそのままお口チャック!
「いえね。てっきりケアミスは変身した姿なんだと思ってたんですが、そうじゃないってことで」
「そうだ。高位魔族は変身できるが、こんな醜い姿ではない」
「そこですよ!この人間のような姿は呪いで、魔族にとっては醜い姿。てことは、本当の変身後はどんな姿なんですか?」
「とても美しい……特に兄上の美しさといったら……あれはもはや芸術の域に達する美しさだ」
ウットリした顔で言われてしまった。
いやそれ分からないんですけど。説明宜しく。いやまて説明いらない気がする。
「魔族にとって人間の容姿は醜い、魔族の姿こそが美しい。となると導き出される答えは大体分かるよねえ」
呟くように言ったゾルゼンスの言葉の後。
その場には沈黙しか残らなかった。
私は彼女が去った方に目をやる。
魔王がイケメンになると信じて疑わなかった、ぶりっ子が去った方向を。
あわれ、ぶりっ子──
「達者で暮らせよ……」
私に言えるのはそれだけであった。
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