【完結】ドクロ伯爵の優雅な夜の過ごし方

リオール

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第一章 【殺人鬼】

12、

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「犯人はザカエルで決定だろう」

 屋敷に帰るや否や、開口一番伯爵が言う。それを呆れた顔で見るのは、モンドーだ。

「また唐突ですね。何を根拠に?」
「町の連続殺人が始まったのは半年ほど前からって、モンドーも知っているだろう?」
「ええ」
「そしてザカエルもまた、半年前から町に戻って親元で同居している」
「そう言ってましたね。で?」

 熱弁する伯爵に、とりあえず話を聞いてあげますな態度のモンドーが先を促した。
 だが伯爵は「で? とはなんだ?」と聞き返してくる。

「ザカエルを犯人だと決めつける理由は他にもあるんでしょ?」
「ない」
「ないんかい!」

 それだけで犯人と決めつけるとは、なんというお粗末な推理か。さすが結末を先に見ちゃう伯爵。結論が極端すぎる。

「そもそも動機は?」
「そりゃ親からの抑圧による、ストレス……の発散だろう」
「あの町長から受けるストレスが原因と?」
「そういうこと。きっとザカエルは画家一本で生きていきたいはずだ。だが町長はそれを認めていない、あくまで町長後継として働けと言っている。画業は遊びと判じている」
「だからって、人殺ししますかあ?」

 至極もっともな意見に、伯爵は分かってないなと首を振る。

「ああいう人のよさそうな人間は、色々溜め込んでいるんだよ。そして何かをキッカケに爆発させるんだ」
「はあ……」
「推理小説では、まさかと思う人間が犯人なんだよ」
「でも、俺らの知らない人間の可能性だって……」
「犯人が最後の最後に突然出てくるなんて、三流以下の小説だよ!」

 知らんがな! とはさすがに言えないモンドー狼少年。ヤレヤレと大きく溜め息をついて、精神は大人な彼は大人な対応をする。

「それにですね、半年前からあの町に住み始めた人間なんて他にもいるでしょ」
「まあ確かに」
「更に言えば、あの町の住人じゃない可能性だってあります」
「まあ確かに」
「更に更に言えば……」
「よし、あとはドラ男、頼んだ」
「え、俺?」

 急にふられて、自分の顔を指すドラ男に伯爵はニコリと微笑みかける。

「色々な矛盾点や疑問点も、見回りとあわせて調べてくれたまえ」
「マジかよ。お前、面倒になっただろう」
「なんのことやら」

 それを図星という、とばかりに肩をすくめる。

「別にいいけど、報酬あるんだろうな」

 ジトリと睨んでくるドラ男に、伯爵はニヤリと微笑んだ。

「僕にかけた呪い、解いてくれるならね」
「……」

 それ以上ドラ男の発言がないことを確認して、伯爵はそそくさと自室へと戻るのだった。

「ドンマイ」

 肩を落とすドラ男をポンと叩いて、かけられるモンドーの励まし。それがドラ男に届いたかどうかは、本人以外に分からない。
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