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「あの、発言いいでしょうか?」
「良くない。そこで寝ててください」
「リフィの俺への対応が酷い!」

 挙手して発言許可を願い出るラディを一刀両断。こいつに話をさせてはいけないと思うのです。あれ絶対泣き真似だ。

「まあまあリフィ。ちょっとお兄様にも発言させてあげて?」

 だがナディアに頼まれては別だ。私はとことん女友達に甘いのよね。
 仕方ないなと「どうぞ」と言えば、パッと顔を輝かせるラディ。こういう単純なとこは可愛いとはおも……ゲホンゲホン、なんでもありません。

「セブール」
「は、はい!」

 一応相手は年上で公爵令息。名前を呼ばれ、さすがのセブールも背筋を伸ばしてラディの目を真っ直ぐ見て返事するのだった。

「きみはリフィを愛してるんだね?」
「はい!」
「そうか」

 即答のセブールに満足げに頷くラディ。
 直後。
 左手を腰に当て、右手親指をクイッと自分に向けて、自信満々に

「だが俺はもっとリフィを愛してる!!」

 とか宣言したのだ!あほか!

「競ってどうするんですか!?」
「だがここはハッキリさせておくべきだと思うんだ!俺の方がリフィを愛してる!これは絶対だ!」
「昔からそれ言ってますけど、ラディ様のそれは嘘くさいんですよ!」
「何を言うか!俺の愛はこの世界より広くて大きいぞ!」
「それが嘘くさいと言ってるんです!」

 愛の大きさを簡単に言える人間ほど胡散臭い事はない。
 これ絶対初恋こじらせてるやつ!

「リフィ、落ち着いて。お兄様は初恋をこじらせてるのよ」

 ほらあ!妹にまで言われてるじゃないですか!

「ずっとリフィの事が好きだって気持ちを抑えてきたからねえ。溢れすぎて爆発しすぎちゃったのよね?」

 ね、じゃないわ。
 爆発してそのまま藻屑となってください。

「重すぎる愛はゴメンです」
「でもじゃあリフィ、どうするの?」
「どうって?」

 ナディアの問いの意図が分からず、首をコテンと傾げて問い返した。それにナディアは軽く肩をすくめる。

「お兄様も駄目なら、もう新しい婚約者なんて見つからないわよ?どうする?セブールとこのまま結婚する?」
「いやそれは……」
「じゃあお兄様と?」
「いやそれも……」
「どうするのよー?」

 いやホントに。

 重すぎる愛のラディ。
 捻くれた愛情表現のセブール。

 一体どうしたらいいの!?




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