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「ねえんセブール様あん、これなんて言うお酒ですのん?」
「ん?それは隣国から取り寄せたなかなか希少な酒で……」
「ああんセブール様ぁ、私の相手もしてくださいませえん」
「なんだ酔ったのか?はっはっは、仕方のないやつだなあ」
「はふう、胸が苦しくなってきましたわ」
「そうかそうか、ではドレスの胸元をもう少し開けたらどうだ?」
「やだあん、セブール様のえっちいん!」

 …………これはなんの地獄だ?

 いつもの中庭、いつものお茶会用テーブルセッティング。いつものように見知らぬ女性。

 だがここに1つだけ、いつもと異なる点がある。それは!

 ──女が二人に増えたという点だ!

 セブールの右に女、左にも女、正面に私。え、何これ、どういう状況なの?

「セブール、あの……」
「おっとリフィちょっと待て!今は彼女の胸が先……ではない、話が先だ」

 おいお前今、胸とか言ったろ。この下衆が!──クソは令嬢は言わないって父の偏見に従って、下衆にしてみた。あと私が呼び捨てしたこと気付いてないなコイツ。

 なにが悲しゅうて、婚約者そっちのけで、露出の激しいドレス着た女性に鼻の下伸ばしてるやつを待たねばならんのだ。

「あらやだあん、リフィ様ったらお顔がこわいいん!」

 あとその話し方どうにかならんか!?語尾に『ん』付けるの流行ってんの!?

「リフィ、そんな恐い顔をしなくても、後で君の相手もしてあげるよ。だから少し待っててね♪」

 待っててね、の後に♪がきたか。ついでにウインクも付いたか。目に見えない何かが飛んできそうだったので、思わず避けたわ。体ずらしたせいで椅子から落ちそうになったわ。

「ね、セブール様ん。この後はどうするんですかあ?」
「ん~?眠くなったら寝るかな」
「一緒に?」
「ああ、一緒に」

 そう言ってセブールが頷いた瞬間、「きゃ~!」と黄色い悲鳴が上がった。

 あ、もう駄目だ、耐えられない。泥吐きそう。いよいよ限界突破ですよ。

 そして限界を超えた私は、無言で静かに立ち上がるのだった。

「リフィ?」

 訝しげな顔で私を見るセブール。
 の、視線が、私の右手に注がれる。

 その瞬間──

「せーーーーい!!!!」

 叫んだ私は、セブールの顔面目掛けて──右手に持ったホールケーキを投げつけるのだったぁ!!


 
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