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「そうか~それは大変だね」
「そうでしょうそうでしょう、お父様もそう思うでしょう?じゃ、婚約は無かった事で……」
「いやだから無理だって」
「んなんでやねん!」
「その最初の『ん』は要るの?」
「巷で流行ってますので要ります」
「どこの巷なの」

 全くもって身にならない父との会話にちょっと疲れて来た。若干カマっぽい父だが、これでも母は父にベタ惚れだ。父も母ラブだ。そんな仲良し夫婦な両親は、当然のように愛人居ないんだから……貴族に愛人側室がいて当然とか言われても説得力無いんですけど。無いんですけど。二度言っておく。

「どうして駄目なんですか?セブールとの婚約、そんなに大事ですか?」
「呼び捨てとか」
「様いりますか?」
「まあいいけど」

 いいんだ。じゃあこれからは呼び捨てだな。セブールの糞でいいかな。

「令嬢はクソとか言わないと思う」
「言う令嬢も居ると思います。今お父様の目の前に居るでしょうが」
「うん、そんなリフィも素敵だと思うの」

 娘溺愛父は私のやる事は大抵許してくれる。が、一度駄目と言われた事が許された事は無い。頑固親父だ。カマっぽいくせに。

「あのね、今リフィは18歳だよね」
「認めたくありませんがそうですね」

 もう一度戻りたい、あの青春の頃に。

「青春て。まだ十分若いでしょ」
「それが何か?」
「でもってセブールは20歳」
「そうですね」
「婚約したの何歳の時だっけ?」
「確か私が10歳でセブールが0歳でしたっけ」
「セブールの年齢おかしくない!?」
「それくらいセブールはガキだってことですよ」

 あの女遊びの激しさ。どう考えても年上に思えない。現在の精神年齢は小3じゃね?小3って何だ。

「まあいいや。それでだね、貴族の婚約ってのは大体がそれくらいの年齢で決まる事が多いのよ」
「そうですね。たまに例外はありますが、大抵は10歳前後で決まりますね」
「そこよ」
「どこよ」

 天井見て床見て父見て。そこってどこよ。

「だからね、大抵はその年齢で婚約者決まっちゃうから、いい物件は今の年齢だとほぼ居ない、完売、ソールドアウトになってるわけだ」
「ああ、まあ……そうですね」
「我が公爵家は僕とママの夫婦仲は最高ラブラブだけど、ママの体があまり丈夫じゃないから子供はリフィちゃん一人なのね」
「知ってます。ママとか言うな」
「となると、リフィちゃんが後継となるわけで、誰かに婿に来てもらわないと駄目なわけ」
「ええ。だから侯爵家次男のセブールクソが相手になったんですよね」
「クソ要らないから。でね、ちょっと都合の悪い事に、今彼と破談になったとして丁度いい相手が居ないのよ」
「あ~~~~……」

 なるほど。理解。
 つまりあれだ。
 我が公爵家に釣り合うレベルの高位貴族で、うちに婿に来れる次男以下の……つまりは長男以外の男性。
 で、私の年齢に丁度いい人。
 その空きが居ないってわけですね。みんな婚約してるってか。

「リフィちゃんの年代、なぜかご子息が一人って家が多いのよねえ」
「探せば居るんじゃないですか?」
「それが居ないから困ってるのよ。10歳くらい下の年齢の子ならウジャウジャいるけどさあ」
「ウジャウジャとか!私の10歳下って今8歳くらいってことですか?そりゃ婚約決まってない子の方が多いでしょうが」

 でも10歳差はなあ……。大体貴族の結婚年齢は、女性が20歳になるまでだ。が、10歳なんてなると、結婚出来る頃には私は何歳だって話ですよ。

「今8歳の子と婚約して、その子が18歳で結婚するとしたら……リフィちゃん28歳。あ、いけなくもないか?」
「いけなくもないですね」

 私はそれでも無問題ですよ!


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