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しおりを挟む一体どうしてそんな変な言葉を発するのかと怪しみながら、私は降ろされたポリアナを見た。
見て。
「ぶっふぉ!!」
オネエに負けない変な声を出してしまった。──正確には噴き出してしまったのだ!
「な、な、な……」
なにこれ!!
叫びそうになるのをどうにか抑えた私の目の前に横たわるのは。
見事に頭がアフロになったポリアナ!
ええそうですよ、あの実験に失敗したらなる頭!
それが目の前に!
あ~そうか~さっきの爆発でこうなったかあ。
そうか~本当にこんな頭になるんだなあ。
起きたら怒るだろうなあこれ。
「いっそ鳥でも住まわせるか」
「いや無理があるでしょ」
「そうですか?鳥の巣に最適な気がするんですが」
「ポリアナが良くても鳥が嫌がるわよ」
「確かに~!」
オネエとなぜか意気投合してアッハッハと笑っていたら!
「確かにじゃないわよ!」
ガバチョとポリアナが起き上がるのだった!あら、お元気そうで何より。
「あら、意外と大した怪我してないじゃない」
「ベルヒトがちゃんと手加減しましたから」
「さっすがイケメン、やることもイケメン!」
「確かに!」
アッハッハ~!
「ふっざけんな!」
またオネエと笑ってたらポリアナに切れられた。ノリ悪いなあ。
「大した怪我じゃなくて良かったですね、ポリアナ。流石にこりましたか?」
「こり?なんもこってないわよ、若い私は肩なんてこらないわよ!!」
そういう意味じゃないんですが。誰かポリアナに言葉の意味を教えてあげてください。授業さぼりまくってたとか以前の問題だと思うんですけど。
「ポリアナは脳みそがこりこりよねえ。こりすぎてちょっとおかしくなってるんじゃない?」
「さすがオネエ様。いいこと言う!」
「んっふっふ~ポリアナよりも可愛いわねえ貴女、お姉さん気に入っちゃった!」
こうして私はオネエと仲良くなり。
平和が戻りました。めでたしめでたし。
「めでたくないわ!ふざけんな!もう許さないからね!」
だがめでたく終わらせてくれない存在が一人。
精霊王という切り札が登場し。
仲間だったはずのオネエにも見限られ。
もう何の手札も無いはずの彼女は、けれど諦めることも反省する事もなかったようだ。
「起きなさいよボルドラン!このままじゃ僻地行くどころか処刑されちゃうわよ!?」
あ、そこ理解できてるのね。引き返すには厳しいとこまで来てること、理解してるんだ。
「何する気か分かりませんが、もうやめといた方がいいよ。今なら大人しくお縄につけば悪いようにはしないんだけど」
大人しくしてれば庶民降格で踏みとどまれたものを。
残念ながら彼女は引き返したくはないようだ。
ああ、救いようがない人ってのはこういう人なんだろうなあ。
でもボルドランを巻き込んじゃだめだよ。
彼のためっていうより、なけなしの肉親の情があるワリアスとハリーのために。
「道を外れるなら、一人でやってくださいな」
丁寧に。
静かに。
私はそう言って。
何だかよく分からない玉を懐から出してきたポリアナを睨むのだった。
「何をするつもりか分からないけど、何かした時点で貴女の人生は終わるわよ」
それでいいの?
庶民の生活ならどうにか生きてはいける。
けれど死んでしまえば全てが終わる。
アフロで終わるとか悲しすぎると思うんだけど。
だがそう警告する私をポリアナは黙って睨むのみだ。……アフロで睨まれると笑い堪えるの大変なんだよな。
「ぶっふ!」
堪えられなかったオネエが噴き出した。耐えろよ、ここシリアスよ?
「ぽ、ポリアナ……」
その時だった。
ようやく目覚めたボルドランが体を起こして。
そばに立つポリアナの服を掴むのだった。
「もう……もうやめよう。精霊王が相手で勝てるわけが……」
「うるさい!」
だがもう引き返せなくなったポリアナにボルドランの言葉は届かなかった。
「大体あんたのせいでこうなったのよ!?あんたがしっかりしてないから……ちゃんと話聞いてないから!精霊王なんて超重要な話を聞いてないから!!」
「鳥獣用?相手は精霊だが……」
「──!!もういい!お前も一緒に私の前から消えて!」
私の邪魔をする者は全部消えて!
叫んでポリアナは玉を頭上に掲げた。
その瞬間。
さきほどベルヒトが起こした爆発などの比ではない圧力を感る──
その後に起こるであろう大爆発を予感して……私は走り出すのだった。
「ミライッサ!?」
焦るベルヒトの声を背後に受けながら。
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