15 / 18
15、
しおりを挟む「私はミライッサ一筋だ」
無口なくせに口を開けばこういうこと言ってますが精霊王です。
「昔からずっと愛してる」
「うん、もう何世代前の前世か分からないので、私にはもう恋慕の情ないけどね?」
親愛の情ならありますがね。
「どういうこと?」
私達の会話の意味が理解出来ないポリアナが、ドスンと壁にもたれて額を押さえる。考えても理解できまい。ところでそのもたれた壁が呻いたよ。めり込んでる二人、出してあげなくていいの?あ、無視でいく?さいで。
「伯爵家では滅多に女性が生まれないんだけどね。生まれたら、それ即ち初代女王の生まれ変わりなのですよ」
「はあ!?何それ!意味わかんない!」
「いや~私も最初聞いた時は分かんなかったねえ。だって初代女王とか言われても記憶ないしね」
でも何とな~く懐かしいような感じはあった。
そして何よりベルヒトの執着が凄い。
「ミライッサ……」
ほらきた。
またピトッとくっ付いてくるんだもんよ。姿見せるといっつもこうだ。だから嫌なんだ、ベルヒト出すの。
開いた口が塞がらず、ただただ食い入るように見入っていたポリアナ。
ベルヒトはそんな彼女をギロッと睨みつけた。ポリアナは思わず後ずさりかけたが、残念ながら背後は壁。壁と言うか壁に埋もれたボルドラン。逃げ場は無かった。
「お前、ミライッサ泣かした。許さない」
精霊ってのはあまり人語を話さないんだろうね。話し方が微妙に変だが、明確な怒りだけは分かった。
それはポリアナも感じたのだろう。
「ひ……!」
小さな悲鳴が喉をついた。
泣かした……そう、ベルヒトは私が泣いたら現れるのだ。そのせいで子供の頃はやたらと出没して面倒だったけど。
精霊王なんてホイホイ呼び出していいもんじゃないからね。純粋な王家にしろ我が伯爵家現当主の父や次期当主の変態兄ですら、呼び出すことは叶わない。
だってのに、私が泣くとヒョコっと現れるわけだから。
精霊王も随分ややこしい性格をしてると言えるだろう。
だが、それでも現在唯一精霊王を呼び出せる存在である私。王家がそれを重宝しないわけはない。
とはいえ王家と伯爵家はけして婚姻関係は結ばない。血縁だからじゃあない。もう遥か昔すぎてどれだけ同じ血があるのか怪しいものだから、それは問題ないのだけど。
もし病などで王家が滅んだとしても、伯爵家が居れば精霊王は守護し続けてくれる。絶対に王家とは別の家でなければならないのだ。ちなみに王家に女性が生まれても、それは初代女王の生まれ変わりではない。なので精霊王はむしろ王家より我が伯爵家を大事にしてる……ようだ。
だから我が家は伯爵という、程々の目立たない地位に有り続けたのだ。ただ、久々に生まれた初代女王の生まれ変わりの私を、下手な家に嫁がせるわけにはいかないと思われてしまったのが運のつき。
年齢近くてまだ婚約者が居なかったのが……結局侯爵家三男のボルドランとなってしまったわけだ。年齢差など気にせず最初からハリーにしてくれてたら良かったのになあ。
まあボルドランは色々と可哀そうな事になってしまったなと同情はする。
だがポリアナにはしない。
自分のためにボルドランを利用した様子がうかがえて気に食わない。ボルドランに愛情は皆無だが、それなりに情はあったから。ちょっとだけど。ほんのちょぴっとだけどね。ちょぴ~~~っとだけどね!
「まあそういうわけです。潔く精霊王からのお仕置き受けてください」
「は!?へ!?お、お仕置きって!?」
蒼白な顔で私と精霊王の顔を交互に見るポリアナ。
そんな彼女に向けて、ベルヒトが手をかざす。
「お仕置きはお仕置きだよ。ごしゅ~しょ~さま~」
私の言葉と同時に力が発動するのを感じ。
爆音が周囲に響き渡るのだった……。
47
お気に入りに追加
1,485
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
私は公爵令嬢のサリア・ハーマン、私は今日も幸せです!
村上かおり
恋愛
公爵令嬢のサリア・ハーマンの何気ない日常です。ただし、時に毒舌、時に無邪気なお嬢様に振り回される人々がおります。
婚約者から見たサリアの話も追加しました。
単発1話形式が基本です。
綿菓子令嬢は、この度婚約破棄された模様です
星宮歌
恋愛
とあるパーティー会場にて、綿菓子令嬢と呼ばれる私、フリア・フワーライトは、婚約者である第二王子殿下に婚約破棄されてしまいました。
「あらあら、そうですか。うふふ」
これは、普段からほわわんとした様子の令嬢が、とんでもない裏の顔をさらすお話(わりとホラー風味?)
全二話で、二日連続で、23時の更新です。
【完結】婚約破棄中に思い出した三人~恐らく私のお父様が最強~
かのん
恋愛
どこにでもある婚約破棄。
だが、その中心にいる王子、その婚約者、そして男爵令嬢の三人は婚約破棄の瞬間に雷に打たれたかのように思い出す。
だめだ。
このまま婚約破棄したらこの国が亡びる。
これは、婚約破棄直後に、白昼夢によって未来を見てしまった三人の婚約破棄騒動物語。
【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~
山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。
この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。
父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。
顔が良いから、女性にモテる。
わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!?
自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。
*沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m
まさか、今更婚約破棄……ですか?
灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
チャールストン伯爵家はエンバー伯爵家との家業の繋がりから、お互いの子供を結婚させる約束をしていた。
エンバー家の長男ロバートは、許嫁であるチャールストン家の長女オリビアのことがとにかく気に入らなかった。
なので、卒業パーティーの夜、他の女性と一緒にいるところを見せつけ、派手に恥を掻かせて婚約破棄しようと画策したが……!?
色々こじらせた男の結末。
数話で終わる予定です。
※タイトル変更しました。
やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。
あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。
そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。
貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。
設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる