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しおりを挟む「お前という奴は……女性になんてことを!」
さすが騎士。紳士ですね!
床にうつ伏せに倒されたボルドランは仲良く床にキッス。ファーストキッスは床の味。レアだね、良かったね!
「ふざけるな!私はとっくにポリアナと済ましてる!昼食の味だったぞ、チューだけに!」
「うわあ……キモ」
「お前キモイな」
「キモイ」
「キモイとか言うなああ!」
私と兄二人にキモイと言われ、ゴミを見るような目で見られたボルドラン。キモイ以外の言葉が見つからんわ。
「お前、本当に何も知らないのか?」
ボルドランの上に圧し掛かったままで、ハリー様が不思議そうに問うと。
同じく不思議そうな顔で……ちょっと苦しそうになりながらボルドランが見上げるのだった。
「な、何をですか?」
似て非なる兄弟。平凡なボルドランに対して、ハリー様は整い美しい顔立ちをされている。それぞれのパーツが微妙に違うだけで随分違うんだなあ。
そんな二人にワリアス様は近付き、しゃがみ込んでボルドランの顔を見た。
ギュムっとその頬を掴む。
「いひゃいです」
「そりゃ痛くしてるからな」
容赦ないその様子から、お怒りなのが伝わってきます。兄恐い。うちの兄は別の意味で恐いが。
「ミライッサ嬢との婚約が決まった時に、父上から我ら三人に話があっただろう。覚えてないのか?ん?」
ん?ん?
と黒い笑みを浮かべながら頬をつねり続けるワリアス様。わりい顔してるなあ、ワリアスだけに。……ちょっと苦しいか。
ボルドランの目が涙目になってる事から、かなり痛いと思われます。
「ち、父上が……?何か言ってましたっけ?」
頬を解放されると同時に疑問を口にするボルドラン。
「う~わ~……お前、本当に聞いてなかったのな。ミライッサ嬢の家……あの伯爵家と王家の関係」
「マジか……」
呆れた顔のハリー様に。
情けないといった顔で天を仰ぐワリアス様。
「なになに何の話~?」
「ピンクはお黙り」
「え~ミライッサ様ひど~い」
「お・だ!」
「まりですね、分かりましたよう」
流石に本気で怒ってるのが分かったか。
ポリアナを睨んだら黙った。茶々をいれるな茶々を!
「ミライッサと王家との関係?そんなもの私は何も……は!そうか、そういう事か!」
「お、なんか思い出したか?」
期待薄な顔でハリー様がボルドランの顔を覗き込んだら。
キラキラした顔でボルドランが叫んだ。
「ミライッサは実は王家の敵だった!」
「──は?」
「でもってそんなミライッサと婚約してた私を可哀そうだと思った王家が、私に労いの言葉をかけてくださるんですね!もしかして領地増やしてくださるとかも!?」
「うん、もうお前黙ってろ」
ハリー様が更に体重かけてボルドランを潰しにかかった。
「ぐえ、あ、兄上……?え、どこが?どこが間違ってるのだ!?」
困惑するボルドランの頬を、ワリアス様が再び思い切りつねって。
顔を近づけて低~い声で囁くように言うのだった。
「だ・ま・つ・て・ろ?」
「ワリアス兄上、『つ』が大きいです、小さくしないと……」
「だ・ま!」
「つてろですね、分かりました」
ボルドランが黙ったところで本日の話し合いはお開きとなりました。これ以上は無理っぽいと思ったからね。それに重要な事はもう済んだから。
さあ、明日はいよいよ王城だ。
全てを終わらせて始めよう!
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