9 / 18
9、
しおりを挟むプルプルと震えてる王様の怒りは多分頂点に達してると思います。噴火五秒前かしら。
「あい分かった……」
だがそこはさすが王様。必死に冷静を保った!伊達に頭が光ってない!──これは心の声ですから。さすがの私も声に出して言うほど命知らずではありません。
王様は顔を赤くしながらも、努めて冷静にバカップルを見た。
「ボルドラン、お前には失望した。兄二人ほどではなくとも、お前もそれなりに頑張ってくれると思ったのだがな」
頑張って学年底辺の学力を維持してましたね。
「いや……兄二人が優秀でも、その弟が優秀になるとは限らない事はワシも分かっている。過度な期待はしなかった。普通で良かったのだ。普通にミライッサ嬢と結婚してくれていたなら、何も問題無かったというのに……」
「いやあポリアナの方が魅力的だったもんで……こう、胸とか」
王様の怒りをまだ理解してない馬鹿が、照れ照れと頭掻いてますよ。そしてそれは私への挑戦状か?あ゛?
「……ミライッサ」
「え、あ、はい!」
いきなり呼ばれて、慌てて姿勢を正して返事をした。
「そなたは改めてハリーと婚約という事で良いのだな」
「はい、何の不満もございません。お優しいハリー様でしたら、私は安心です」
「ハリーもそれで良いのだな?」
「はい。俺は……ずっと彼女が好きで誰とも婚約しませんでしたし。同い年の方が良いだろうとボルドランが婚約者に決まった時には、弟の顔を往復ビンタしようかと思ったくらいです」
「安心してください。先日私が往復ビンタしました」
「流石ミライッサ!ますます惚れる!」
いやあそんな、照れるわあ……。
私達がとんでもない事実をサラッと言ってるからだろうか。
ボルドランはしばしポカンとした顔で黙って聞いていたが。
不意にハッとなって、割り込んで来た。
「ちょちょちょちょちょっと待って、ちょっと待ってください!」
「なんだボルドラン、邪魔をするな」
「いや兄上、今の話は何ですか!?兄上とミライッサが婚約!?聞いてませんよ!」
「そりゃ聞いてないだろう。話してないからな」
「聞いてないよ~!」
「話してないよ~!」
やっぱ兄弟。ノリが似てるな。
でもハリー様は幼い頃から知ってるけれど、優しくて大好きだったから、正直嬉しい。今はまだ兄のような存在だけど……きっと『好き』の種類が変わる日も遠くない。
そう、むしろ実の兄より好きだ。
「難点を無理に上げるとしたら、お兄様と仲いいってことくらいですね」
「なんだそれ。ミラ、ハリーが俺と仲良くて何が問題なんだ?」
「だって変態お兄様と仲いいなんて、大丈夫かなと思ったり思わないようで思ったり」
「妹の兄への不信感泣ける!」
よよよと泣き真似する兄は放置しておこう。
「ミライッサ、それは心配するな。俺は仲が良いと言うより見張り役だ。ケインの変態を止める役目だ」
ケインってお兄様の名前ね。念のため。
「なるほど、では安心ですね!」
「妹と親友が酷い!そしてそんな親友が義理の弟になるとか!」
「よろしく頼むぞ、あ・に・う・え」
「やめて、俺を兄と呼ばないで!」
確かに仲いいなこの二人。
そうか~こんど兄の婚約者に報告しておこう。兄の変態を止めれるのは婚約者様だけではなく、もう一人居ますよ~って。ちなみに兄の変態っぷりがどんなものなのかは、本人の名誉のために伏せておきます。
「み、ミライッサ……」
やいのやいのと賑やかに話していたら、すっかり存在忘れてた人物が小さな声で名を呼んで来た。返事はしないで顔だけ向けると、なんか泣きそうなボルドランが目の前に。
「ボルドラン?」
「で、では本当に私との婚約は破棄でいいのだな?」
「いいも何も、今正式に書類を交わして婚約は解消されましたでしょ?何を言ってるんですか」
まだ現実が理解出来ないのだろうか。
「嘘だ!」
だが理解出来てなかった様だ。
いきなり血相変えて私の腕を掴んで来た。
「嘘だ嘘だ嘘だ!お前は俺のこと好きだったはずだろ!?婚約破棄は嫌だって泣いて縋るはずだろうが!」
まだ言うか~まだそれ言うか~。
もう白い目で見るしか私には出来なかった。
「いい加減にしてくださいよ、ボルドラン」
「だってだってだって、私は優秀でイケメンでモテモテ男なんだぞ!優良物件なんだぞ!それを簡単に手放すとか……お前、頭おかしいんじゃね!?」
「お前がおかしいんじゃね!?」
何言ってんのこの人!もう恐いわ!
「いい加減にせぬか!」
収拾つかなくなってきたなと思っていたところで。
王様の鶴の一声でボルドランは沈黙を余儀なくされた。
「もう良い!其方たちは百害あって一利なしの存在だ!ボルドランは僻地で修行し直せ!」
「えええええ!?」
僻地で修行。まあ左遷みたいなものやね。良かったねえ、学園やめれるよ!
「そしてそこのピンク!」
「え!?あ、ポリアナちゃんでっすよ」
完全に傍観者してたポリアナは、いきなり呼ばれてビックリしていた。うん、チョコ床に落ちたよ。
「お前は男爵家から追放だ!庶民として生きていけ!あとチョコ落とすなああ!!」
「はい~~~~~!?」
ビックリしすぎてチョコ全落ちしてるし。王様王冠落として頭光らせてるし。
こうして。
騒々しい婚約解消の手続きは終了したのだった。
ボルドランとポリアナは、仲良く消える事が決定した。バンザイ!
45
お気に入りに追加
1,485
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
〖完結〗旦那様には本命がいるようですので、復讐してからお別れします。
藍川みいな
恋愛
憧れのセイバン・スコフィールド侯爵に嫁いだ伯爵令嬢のレイチェルは、良い妻になろうと努力していた。
だがセイバンには結婚前から付き合っていた女性がいて、レイチェルとの結婚はお金の為だった。
レイチェルには指一本触れることもなく、愛人の家に入り浸るセイバンと離縁を決意したレイチェルだったが、愛人からお金が必要だから離縁はしないでと言われる。
レイチェルは身勝手な愛人とセイバンに、反撃を開始するのだった。
設定はゆるゆるです。
本編10話で完結になります。
旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる