お嬢様と少年執事は死を招く

リオール

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第六話 少女と狼犬

13、※グロ注意

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※グロ注意
 
 
 それはただの使用人だった。
 我が家に仕え、父や姉の命に従うだけの存在。
 ──私をぞんざいに扱った存在。

 彼らが父の暴力に加担したことはない。だが見て見ぬ振りをした。食事抜きや外に出せといった命に従った。
 己の身を守るため、子供の私を見捨てた存在。

 ──なら、私も自分自身のために、何をしてもいいわよね?

 痛みでうずくまる男の顔に、私はそっと手を添えた。まるで労わるように。優しく、そっと……。
 そのまま手を滑らせて、頭へと。

 そして、力を入れた。軽く。

グチャリ

 まるでトマトのように、男の頭はつぶれ、血が飛び頭部の中身が飛び散った。声を上げる間もなく男は倒れた。もう、二度と起き上がる事もなければ言葉を発する事はない。

 私は床に転がる男の頭から飛び出した物を、ウットリと眺める。
 ああ、綺麗だわ、なんて綺麗なの……赤い血がとても美しいわ。とても素敵だわ!

「ひいいいい!この──化け物!」

グチャッ!!

 飛び掛かって来た男の頭も潰した。またも様々な物が飛び散る世界。なんて素敵……素敵なの!

「こ──このやろおおお!!!」

 またも懲りずに殴りかかる男が一人。……ワンパターンは面白くないわ。

 私は今度はその腹に手を伸ばした。

グジュッ!!

 何とも小気味よい音と共に、私の腕が男の腹を貫通した!

「ああ……いいわ、この感触!気持ちいいわ、楽しいわ!」

 ねえ遊びましょう、遊びましょうよ!これは何とも素敵で楽しい遊びだわ!これ以上ない楽しみだわ!

 ズルリと男の腹から手を引き抜いた。何だか良く分からない臓物まで引っ張り出されてきたのは、少し不快だけど。ベチャリとそこらに放り投げた。

 放り投げた時にドレスが視界に入った。

 ああ、ドレスが……
 汚れてしまったドレス。少し悲しくなる。

 だがそこで不思議なことが起きた。見る見るうちに血で汚れたドレスが、手が、元通りになったのだ。血などどこにも無い……一滴の穢れもない、美しいドレスへと戻り、手もまた綺麗な子供の手となった。

 私は満足げな笑みを浮かべる。それがどれほど壮絶な笑みであるかを想像することもなく。

 顔を上げれば蒼白な顔の面々が視界に入った。

 私はニッコリと──さぞや残酷で冷酷で……美しい笑みであることだろう──微笑むのだった。

 さあ……

「遊びましょ?」



※ ※ ※



 すべきことを終え友人達と別れた後、俺は竜人(りゅうと)の所へと来ていた。大人しく横に寝そべる竜人の頭を撫でながら、思い出されるのは先ほどのこと。

 友人との会話で言ってしまった言葉を、まさか里亜奈様に聞かれるなんて……間の悪さに苛立っていた。
 その時だった。

 不意に、お屋敷の方で叫び声が聞こえたのだ。
 それは一度ならず二度、三度と……。

 何かに驚いて、といった風では無い。
 恐怖の叫び……その場に居なくても分かるくらいに、悲痛で恐ろしい響きをはらんだ叫びだった。

「なんだ……?」

 驚いて立ち上がる俺につられて、竜人も立ち上がった。不意に、彼が唸る。

 なんだ?竜人が警戒してる?

 もしや賊でも入ったのだろうか?まだ夕刻だというのに……有り得ないと思いつつも尋常ではない叫びが続く中で、俺は動けずにいた。

 不意にパタリと叫び声が止む。撃退した、のか……?

 シンと静まりかえる屋敷。

 これは……どうすればいいのだろうか。
 屋敷にはそれなりの人数の大人が居る。屈強な男も多い。そんな中に自分が行っても邪魔になるだけかもしれない。

 ──警察に行くべきか?

 思い悩むも、足は動いてくれなかった。

 その時だった。

 一瞬やんだ叫びが、ややあってまた聞こえ始めたのだ!賊はまだ居るのだろうか!?

「りゅ、竜人……」

 グルルと唸り続ける竜人の首にかじりつくこと。
 所詮まだ子供の俺に出来るのは、それだけだった──。





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