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第五話 浮気男
7、※グロ注意
しおりを挟む※引き続きグロ注意
そんな俺の視界に入るのは……一人の女の指だった。
おいよせ、何をする気だ!?
俺は逃げようとするも、拘束がそれを許してくれなかった。腕を切り落とされたが、拘束された部分はまだ残っているのだ。
指がどんどんと近付いてきた。もう、目の前だ。
「やめ……」
「じゃあ私は克彦さんの左目を……」
言うが早いか、指が俺の目に滑り込んだ。
「ぎいいいあああああああ!!!!」
確かに感じる指の感触!!
暗転する、俺の右の視界──
「あ、あああ……」
「嬉しい!克彦さんの目……ずっと私だけを見てくれる目だわ!」
ぼんやりとした視界で。
残された左目が、俺の右目の行方を見守る。
俺から奪った右の眼球に、女が口づけをした。
狂ってる。
どいつもこいつも……狂ってる!!
助けてくれ、誰か、誰か……!
助けが来ないなら、どうかもう……どうか……
「いいわね、じゃあ私も眼球を……」
「やめてくれえええ!!」
叫んだ直後、耐えがたい痛みと共に、視界は完全に暗転した。
ああ……目が……俺の目があああ……
「ずるいわ、じゃあ私は足を……」
「私は心臓が欲しいわ」
「私は骨を……」
次から次へと聞こえてくる声に。
俺はこれから何が起こるのか、否応なしに理解した。
理解して。
もう望むのは、早く終わることだけ。死を望むだけとなる。
だがその狂った饗宴は、最後の最後に俺の首が切断されるまで終わる事は無かったのだ。俺が意識を手放すことは、最後の最後まで、無かった……。
※ ※ ※
けたたましい目覚ましの音で私は目を覚ました。
素早く目覚ましを止めて、時間を確認する。
「朝か……」
いつもの朝。憂鬱な月曜の朝。
私はボケた頭をもたげて、寝室を何気なくグルリと見回した。
何の変哲も無い……いつも通りの私の部屋。
だと言うのに、妙な感じがするのはどうしてだろうか。
ふと、何か夢を見た気がして私は首をひねった。
何の夢だっけ?
思い出そうとしても思い出せない。
ただ一つだけ分かることがある。
その夢のおかげで、今朝の私は妙に気分がいいのだ。
徐々に覚醒する頭。それと同時に妙な達成感を感じるのだった。
何かは分からない。だがとてもスッキリしている。
はて、何の夢だったんだろう?
私はボサボサの頭をポリポリかきながら、寝室を後にした。
と、リビングに置いたままの携帯に気付く。
「あれ、充電し忘れてる……」
いつも寝る前に、ベッドサイドの充電器に設置するのに。
そんなことも忘れるくらい眠かったのだろうか?
どうにも昨夜のことを思い出せず、何度となく首を傾げながら、私は携帯をチェックした。
そして気付く。
「克彦……?」
昨夜、克彦から着信があったようだ。だが覚えてない。眠った後だろうか?
そう思ったが、着信時間は平均的な夕食の時間くらい。寝るには早すぎる。だが確かに昨夜の記憶が無いので、定かでは無いのだけれど……。
「私、昨夜何してたっけ?」
奇妙な体験の後、いつの間にか部屋に戻っていた私は。
一体どうしたっけ?
記憶が無い事に少しの気味悪さを覚えた時だった。
「わ!!」
突然携帯が鳴ったのだ!
克彦かな?
そう思って画面を見れば、それは……
私は通話ボタンを押して出た。
「もしもし。佳奈?」
『あ、早苗!出勤前の忙しい時間にごめんね!ニュース見れる!?すぐ見て!!』
おはようの挨拶も無くいきなりの要件だが、佳奈はかなり慌ててる様子だ。
早くテレビをつけろと急くので、何事かと思いながら私はテレビをつけた。
子供向け番組からニュースへとチャンネルを変える。
変えて……私は思わずリモコンを落としてしまった。
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男性のバラバラ遺体発見される!!
そんな見出しが上にあり、リポーターがどこぞの公園の前で何かをまくしたてていた。
だが私が目を瞠ったのはそこではない。
下部のテロップ……早々に判明した遺体の身元。そこにある名前に驚愕したのだ。
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それは、紛れもなく克彦、だった……。同姓同名であって欲しいと思っても、名前の横に生前の写真が添付されていては……もう現実逃避は出来ない。
「嘘……」
テレビのアナウンサー。そして佳奈。どちらも煩く何かを言ってるけれど、私の耳には何も聞こえては来なかった。
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