お嬢様と少年執事は死を招く

リオール

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第五話 浮気男

6、※グロ注意

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※グロ注意

 
 
「くそ、なんだよこれ!ちっとも外れねえ……!」

 女が適当に縛っただけだろうと引っ張ってみるも、一向に緩まない拘束に段々と苛立ちが強くなる。
 そんな俺を見て、あろうことか二人はクスクスと笑ってるのだ。その様にカッとなる。

「おい聞いてんのかよ!?とっととこれはずせって言って……!!」
「嫌よ」

 だが俺の怒りはあっさりとかわされる事となる。

 嫌だと言い放った早苗の顔は、もう笑っていなかった。
 冷たい目が、俺を見下ろす──。ようやく俺は自分の立場を理解し始めていた。

「さ、早苗……?頼むから拘束を……」
「駄目よ、これからみんなで楽しむんだから」

 怒鳴るのをやめて優しく言う俺に、早苗は奇妙な事を言った。

 みんな?
 みんなで楽しむ?

「何を言って……」
「そうよ~みんなで楽しむのよ~」

 何を言ってるのかと、問いただそうとした俺の耳に届いたのは、聞き覚えのある声だった。

「愛理!?」

 それは俺にとって都合のいい女のうちの一人。

「あたしもあたしも~!克彦、一緒に遊ぼ―!」
「ま、真子!?」

 驚愕する俺の目の前に、どんどん女が現れては一様に冷たい笑みを浮かべていた。

 何十人居る事だろう。
 全員、俺が過去に……そして今現在、もてあそんで利用してる女ばかり。

「ど、どうして……」

 頭が状況についていけない俺の顔を、早苗が覗き込んで来た。

「私達みんな、克彦が大好きなんだよ」

 そう言ってニッコリ笑う。

「克彦の全てが……髪も爪も全て……愛してるんだよ」
「な……」

 愛してる?本気で言ってるのか?

 俺が大勢の女を騙していた事に気付いたんだろ?だからこんな仕打ちをするんだろ?なのに愛してるって……そんなの……

「でも克彦は一人だから」

 早苗は沈んだ顔になり、寂しげに言う。

「克彦は一人しか居ないから。独り占めできないの」

 寂しそうに。悲しそうに。
 思わず、ごめんな、と言ってしまいそうになりそうな顔で。

 スーッと早苗の手が俺の頬を撫でた。その冷たさにゾッとする。

「さ、早苗……?」
「でもね、いいこと思いついたんだ」

 パッと表情が笑顔に変わる。心底嬉しそうな笑顔に。

「いいこと?」
「克彦をみんなで分けようって」
「わけ、る……?」
「そう、分けるの」

 それは一体どういう……

 早苗の言葉を引き継いで、今度は佳奈が口を開いた。

「克彦の体をバラバラにしてね、それぞれ好きな箇所を持っておこうって」
「はあ?!ば、バラバラ!?」

 何を言ってるのか理解できない。俺をバラバラ……!?それでは俺は死んでしまうではないか!

「お、俺を殺すのか!?」
「何言ってるの、克彦は死なないよ」

 キョトンとした顔で早苗は言った。本気で『何を言ってるのだ』という顔で。

「だってね、たとえばほら……」

 そう言って、早苗は大きな……チョッパーナイフを取り出した。

 それを思い切り振り上げたかと思うと、一気に──振り下ろした。俺の手首めがけて!!

「ぎゃあああああああああ!!」
「あはあ、いい声!」

 俺の叫びと共に、手が切り落とされた。
 何だこれ何だこれ!一体何が起こってるんだ!

 あまりの痛みに俺は失禁する。だが誰も気にせずニヤニヤと笑い続けているのだ!

「ああ、克彦の右手……大好きよ」

 切り落とした俺の手を、血が付くのも気にせず早苗は頬ずりするのだった。

「ずるいわ早苗。じゃあ私は左手を貰うわね」
「やめ──!!」

 佳奈の声がして。
 俺はやばい予感に静止の言葉をかけようとしたが。
 それは意味を成さなかった。

ダンッ!!

 嫌な音がして、チョッパーナイフは俺の左手を……

「ひぎいああああああ!!」
「ああ、素敵、克彦の左手……素敵だわ」

 そう言って、佳奈もまた俺の手に頬ずりするのだ。血まみれになりながら!

 狂ってる狂ってる、こんなのは狂ってる──!!

「だ、だずげで……誰が、だずげで……!」

 俺はどうにか目を動かして、他の女に救いを求めるのだった。


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