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第三話 女子高生とクラスメート
11、
しおりを挟む「とんだ下衆が居たものだわ」
「な……」
下衆ですって!?
ふざけんなと少女を殴ろうとしたところで、また少年が前に出た。今度は私の手を掴む。
「は、放しなさいよ!」
「リュート、そのまま」
手を放せと力を入れるものの、なぜか少年の手はビクともしなかった。むしろ、より一層力が込められて……
「い、痛い!放して、放してよ!」
ギリギリと締め付けられるような痛みに悲鳴を上げるも、けれど力が緩められる事はなかった。次第に指先が紫に変色してくる。
「あなたには同情の余地はない」
コツコツと足音が響く。
「あなたのような下衆は生きる価値はない」
足音が止まり、少女は私の横に立つ。
「この……!」
掴まれてるのと反対の手を向けるも、それもまた少年にいとも容易く掴まれてしまった。
両手が完全に封じられて、私に出来るのは睨む事だけ。
「あなたには」
ゾッとするような冷たい響きの声が、聞こえた。
バッと目を向ければ。
空のように青い瞳は──今や氷のような冷たさをたたえている。
「あなたには……死こそが相応しい」
それが始まりだった。
いや、終わりなのかもしれない。
ボッと音がした。
「な、なに……!?」
音のした方を見ようとしたが、両手を封じられたままで思うように視線を向けられない。
必死に目を動かす……すると、視界の片隅で赤い色が見えた。
血ではない。
これは、この色は……
「あなたは火遊びもお好きなようだから。私がお手伝いしてあげるわね」
そう言って、クスクスと少女は笑う。
不意に両手が解放されて、勢いでつんのめり、床に転がった。直後、私の目に映ったのは。
ゴオオオオ……
もの凄い勢いで燃え広がる炎、だった。
カーテンから始まったその炎は、一気に周囲を食い尽くす!
「きゃあああ!?熱い、あっつい……何よこれ、どうして火が……」
飛んでくる火の粉から守るように手を顔の前に持って来るも、あまりの勢いに何ら意味を成さなかった。
「あっははは!綺麗ね、リュート、とても綺麗だわ!!」
「ええお嬢様、炎はお嬢様の金髪によく映えます」
「あらリュート、それを言うならあなたの金の瞳に映る炎もまた美しいわ」
「恐縮です」
「ふふふ」
熱い熱い熱い!炎がどんどん迫って来る!
なのにどうして二人は平気なの!?どうして炎はまるで二人を避けるかのように燃えてるの!
どうして私にだけ炎が向かってくるの!?
「いやあ!」
いよいよ炎が私の全身に襲い掛かろうとしたその瞬間!
私はたまらず廊下へと飛び出した!
のだが。
ドンッと何かにぶつかり、私はまたも床に倒れ込んだ。
何!?なんなのよ!
ぶつかった物に苛立ちを感じて睨んだ瞬間。
私は全てを後悔した。
「あはあ!出てきたあ!!」
それは明美だった。
乾いてこびりついた血をそのままに、嬉しそうに大鎌を握る明美。
「ひい!」
倒れた私は結局炎が舞い上がる教室に戻った状態。
廊下に逃げるには大鎌持った明美を退かさなければいけない。
前に明美。後ろに炎。
どうすればどうすればどうすれば……!?
「た、助け……」
最後の頼みと振り返った先。視線の先には、まるでそこだけ別世界のような二人が、炎の中で悠然と立っていた。
炎はやはり二人を避けている。
「助けて……」
「どうして?」
助けを請う私の言葉を、けれど少女は首を傾げて拒絶する。
「遊びなのでしょう?全て、遊び。明美さんは遊んでるのよ。あなたが彼女にした事も遊びだったのだから。助ける必要がどこにあるの?」
「そ、そんな……!」
「自分の犯した罪を後悔しなさい」
後悔して。
そして。
「「死ね」」
言葉がハモった。
誰と誰が?
考えずとも分かる。
視線の先の少女と。
そして背後の──
後ろに視線を戻した私が目にしたもの。
それは至福の笑みを浮かべる明美が、大鎌を振り下ろす様だった──
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