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第三話 女子高生とクラスメート
7、
しおりを挟む「あらあら、随分楽しそうな事をしてるのね」
「お嬢様ご自身は全然楽しそうに見えませんが」
「当然よ、楽しくないもの」
少し右後方で恭しく頭を垂れるリュートをギロリと睨みつけて、リアナは吐き捨てるように言った。
反吐が出る。そんな汚い言葉が出そうになるのをグッとこらえ、眉間に皺が寄る。
突如空間が裂け、廊下に現れた二人。
その目には、泣きながら走り去る明美がうつっていた。
二人はその背中を黙って見送る。声をかける必要は無い。これからする事に、彼女は必要ない。寧ろ居ない方が良い。
「さてと」
明美の姿が完全に見えなくなったところで、リアナは呟く。
バサッと無造作に、肩にかかった金の髪を払いのけ。リアナは目の前の教室に目を向けるのだった。
スッと右手を上げて教室を指さす。
「始めましょうか」
それが合図。
全てが始まる合図。
その直後、どこからともなく黒い靄が現れて。
教室を包み込むのだった。
※ ※ ※
私──袴田結衣は、明美が教室を飛び出すのを見て、クスクスと漏れる笑いをこらえる事が出来なかった。
あの馬鹿女、性懲りもなく学校に来るんだもの。まあおかげで、椅子に施した仕掛けが無駄にならなかったのだけど。
あれは何とも虐めがいがあると思う。どれだけやっても、懲りずに学校に来る。
いい、オモチャだわ……。
虐めるのに理由なんて無かった。何となく、気に入らない。それだけ。
明美が完全に学校に来なくなれば、また他の獲物を見つけるだけ。全ては私の退屈しのぎだった。
でもみんなだって楽しそうに笑いながらやってるからいいじゃない。みんなを楽しませてる私って、なんて素敵なのかしら?
ウットリという形容が合うような笑みを浮かべながら、私は次の計画を練るのだった。
さあ、次は何をしてやろう?
あいつはこのまま学校に言わないだろうから──それは確信──もっと過激にしても良いかもしれない。
そろそろ自殺でもするんじゃないかと思ってたけど、どうやらまだ粘るようだし……。
まだ遊べそうだ。
(そうだ、スカートに火でもつけてやろうかしら?)
少しくらい火傷させてもいいかもしれない。
顔は流石に目立つので発覚の危険があるけれど、足くらい構わないだろう。もし学校や親に話したとしても──クラス全員であいつがタバコを吸ってたとか何とか言って、自分でスカートを燃やして火傷したんだと言えばいい。
あいつ一人の証言より、クラス全員の証言の方が強い。
所詮学校は──大人は、馬鹿ばかりだから。
そうだ、そうしよう。
私は新たに思いついた案に満足して。
出て行った明美にもう関心の無くなった教師が始める授業に、意識を向けるのだった。
突如静寂が破られる。
ガラッと扉が開く音がしたけれど、どうせ明美が戻ってきたのだろうと誰も気にも留めなかった。
だが。
状況は直ぐに変わる。
最初に異変に気付いたのは、教室後方に座る男子生徒だった。
「ひい!?」
ガタンと椅子が倒れる音と共に、響く悲鳴。
何事かとクラス全員の視線が向いた。
その瞬間。
「うわ!?」
「きゃあ!?」
あちこちから悲鳴が響きわたった。
(何?)
私は怪訝な顔でそちらを見て。
教室後方の存在に目を見開くのだった。
「あ、明美……!?」
そう、先ほど出て行ったはずの明美がそこに立って居たのだ。
なぜかその全身は黒い服で覆われて。まるで死神のようで……。
右手には。
死神が持つような、大鎌が握られていたのだった──
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