8 / 11
8、
しおりを挟む「な、な……?」
目を白黒させるバンズに近付いて、その顔を覗き込んでニヤリと笑うボイス。
「まあ落ち着けよ」
その言葉と共に魔法が解かれたのか、ドサリと床に落とされるバンズ。呆然と座り込むその顔を覗き込んでボイスは言った。
「ハゲ魔法には俺も興味があるからね。これから研究しようと思う。そしたら……解明できたら毛生え魔法を作ってやるよ」
「ほ、本当に?」
「ああ。だから金輪際、シーラ嬢には近づくな」
その言葉にギョッとしたのは私だけではない。バンズも驚いてそのイケメン顔を見るのだった。
「どうしてだよ!シーラは僕の婚約者だ!」
「元、だろう?」
「僕は彼女と結婚する!」
「浮気ばかりしてたくせに」
よくご存知で。そこは大魔法使いゆえかご都合主義なのか。私とバンズのことをよく知ってるんですね。
「で、でも、でも……だって……!」
「でもでもだってじゃない。お前ももう大人だろうが、理解しろ。お前もシーラ嬢もお互いのことを愛してない。それで幸せになれると思うか?」
「……」
「彼女と幸せになりたいなら、誠実になれ」
「でも……僕はたくさんの女性を愛したい」
「もうお前ハゲとけ?」
せっかくの大魔法使いの言葉が台無しだよ!それでも浮気したいとかいう男の髪などもはや不要だと思うのだ!
私は三回目の魔法を発動させてバンズの髪を落とすのだった。
「キャー!?」
「安心してよバンズ。少しだけ残ってるから」
いわゆるモミアゲという箇所と、襟足部分にちょろちょろっと、ね。良かったね、残ってるよ。
「もうそれ剃った方がいいと思うんだけど」
ミナリスの言葉もごもっとも。まあどうするかはバンズ次第だね。
ガックリと項垂れるバンズにもう用はないというかのように、立ち上がったボイスは私に近付いてきた。またも身構える私。
また言われるのかな。
「というわけでシーラ嬢、握手してくれ」
「いやしないわ」
いくらイケメンでもいきなり握手はしませんよ。怪しさしかないのに、誰がするのかってね。
「心配しなくても大丈夫だよ、ちょっと惚れ魔法かけるだけだから」
「心配しかないし!誰が握手するか!」
「それは困ったなあ。握手しないとこの魔法を発動させること出来ないんだよね」
「……そもそもどうして惚れさせたいんですか」
「え?好きだから?」
なんで疑問形なんですかね。
って、今、サラッと凄いこと言いませんでした?
「は?」
思わず聞き返す私。私を含めたこの場に居る全員がポカンとする中で。
一人だけ余裕の笑みを浮かべるボイスが、更にニッコリと深い笑みを浮かべて……
「俺、きみのこと気に入っちゃった。一目惚れってやつかな?」
という爆弾発言を投下するのだった。
33
お気に入りに追加
285
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
『まて』をやめました【完結】
かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。
朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。
時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの?
超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌!
恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。
貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。
だから、もう縋って来ないでね。
本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます
※小説になろうさんにも、別名で載せています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完
瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。
夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。
*五話でさくっと読めます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】契約結婚の妻は、まったく言うことを聞かない
あごにくまるたろう
恋愛
完結してます。全6話。
女が苦手な騎士は、言いなりになりそうな令嬢と契約結婚したはずが、なんにも言うことを聞いてもらえない話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
もしもゲーム通りになってたら?
クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが
もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら?
全てがゲーム通りに進んだとしたら?
果たしてヒロインは幸せになれるのか
※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。
※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。
※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
異世界の神は毎回思う。なんで悪役令嬢の身体に聖女級の良い子ちゃんの魂入れてんのに誰も気付かないの?
下菊みこと
恋愛
理不尽に身体を奪われた悪役令嬢が、その分他の身体をもらって好きにするお話。
異世界の神は思う。悪役令嬢に聖女級の魂入れたら普通に気づけよと。身体をなくした悪役令嬢は言う。貴族なんて相手のうわべしか見てないよと。よくある悪役令嬢転生モノで、ヒロインになるんだろう女の子に身体を奪われた(神が勝手に与えちゃった)悪役令嬢はその後他の身体をもらってなんだかんだ好きにする。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる