【完結】浮気性の婚約者にハゲる魔法をかけたら大魔法使いに惚れられました。なぜ

リオール

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「な、な……?」

 目を白黒させるバンズに近付いて、その顔を覗き込んでニヤリと笑うボイス。

「まあ落ち着けよ」

 その言葉と共に魔法が解かれたのか、ドサリと床に落とされるバンズ。呆然と座り込むその顔を覗き込んでボイスは言った。

「ハゲ魔法には俺も興味があるからね。これから研究しようと思う。そしたら……解明できたら毛生え魔法を作ってやるよ」
「ほ、本当に?」
「ああ。だから金輪際、シーラ嬢には近づくな」

 その言葉にギョッとしたのは私だけではない。バンズも驚いてそのイケメン顔を見るのだった。

「どうしてだよ!シーラは僕の婚約者だ!」
「元、だろう?」
「僕は彼女と結婚する!」
「浮気ばかりしてたくせに」

 よくご存知で。そこは大魔法使いゆえかご都合主義なのか。私とバンズのことをよく知ってるんですね。

「で、でも、でも……だって……!」
「でもでもだってじゃない。お前ももう大人だろうが、理解しろ。お前もシーラ嬢もお互いのことを愛してない。それで幸せになれると思うか?」
「……」
「彼女と幸せになりたいなら、誠実になれ」
「でも……僕はたくさんの女性を愛したい」
「もうお前ハゲとけ?」

 せっかくの大魔法使いの言葉が台無しだよ!それでも浮気したいとかいう男の髪などもはや不要だと思うのだ!

 私は三回目の魔法を発動させてバンズの髪を落とすのだった。

「キャー!?」
「安心してよバンズ。少しだけ残ってるから」

 いわゆるモミアゲという箇所と、襟足部分にちょろちょろっと、ね。良かったね、残ってるよ。

「もうそれ剃った方がいいと思うんだけど」

 ミナリスの言葉もごもっとも。まあどうするかはバンズ次第だね。

 ガックリと項垂れるバンズにもう用はないというかのように、立ち上がったボイスは私に近付いてきた。またも身構える私。

 また言われるのかな。

「というわけでシーラ嬢、握手してくれ」
「いやしないわ」

 いくらイケメンでもいきなり握手はしませんよ。怪しさしかないのに、誰がするのかってね。

「心配しなくても大丈夫だよ、ちょっと惚れ魔法かけるだけだから」
「心配しかないし!誰が握手するか!」
「それは困ったなあ。握手しないとこの魔法を発動させること出来ないんだよね」
「……そもそもどうして惚れさせたいんですか」
「え?好きだから?」

 なんで疑問形なんですかね。

 って、今、サラッと凄いこと言いませんでした?

「は?」

 思わず聞き返す私。私を含めたこの場に居る全員がポカンとする中で。
 一人だけ余裕の笑みを浮かべるボイスが、更にニッコリと深い笑みを浮かべて……

「俺、きみのこと気に入っちゃった。一目惚れってやつかな?」

 という爆弾発言を投下するのだった。


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