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「あ~スッキリしたあ!」
「バンズの頭の話?」
「まあそれもだけど……」

 6月に入り初夏の暑さが身に染みる日々を送る中、私は自身のそよ風魔法を満喫しながら清々しい気分で思い切り伸びをした。

 バンズとの婚約解消の手続きは、滞りなく終わった。
 なぜかバンズは泣きわめいて「シーラと結婚出来ないならハゲてやる!!」とか叫んでたらしいが。もうハゲてるし。もっとハゲる気か。いっそスキンヘッドにすればいい。眩しくて皆の目がくらむことだろう。

「婚約解消の件ね。やっと解消されて解放されてヒャッホーなのよ」
「それは良かったわね」

 うんそう良かったのだ。良かったのだけどね。

「弊害さえなければ最高の魔法だったのにな」
「ハゲ魔法のこと?」
「そう」
「弊害って?」

 その言葉に私は無言で教室を見回した。途端に外される視線。特に男子。

「見事に、誰も私と結婚したくなくなったという、ね」

 そりゃそうだよね、怒らせたらハゲにされる恐怖があるのに、そんな女と誰が結婚したいっていうね!

「いっそのこと、既にハゲてる人と結婚するとか」
「いやそれ凄いオジサンか、若ハゲの人しか居ないし。選択肢狭いし」

 若ハゲはともかくとして、オジサンはちょっとなあ……。

「というか、若ハゲとなるとバンズになるじゃないか」
「それはキツイ」

 私の言葉にミナリスは苦笑して肩を竦めた。

 正直、私はハゲてようがなんだろうが、誠実な男性なら誰でもいい。

「誠実さが無いから……ハゲさせられる可能性があるから皆恐がってるってことでしょ?この世に誠実な男は居ないのか!」
「まあ女だってどこまで誠実なのかって話だけどね」
「それは……まあ……」

 ミナリスの言葉に私はムグッとなって黙り込んだ。私だって聖人君子ではないけれど。でも少なくとも浮気はしないと誓う。

「そうだ」
「何を思いついたのよ」
「ハゲ魔法が恐いと思わない人を見つければいいのよ」
「どんな人よそれ」
「例えばスキンヘッドにしてる人とか」
「まあそういう人は一定数居るでしょうね」

 あんま貴族にスキンヘッドを好んでする人は居なさそうだけどね。というかツルリン頭のヒーローって需要あるのか?

「それか髪を生やす魔法を持ってる人」
「あーなるほど」

 そうだそうだ、それがあるじゃないか。前代未聞のハゲ魔法を授かった私だけど、それならばその逆の魔法を授かった人だって居るだろう。

「よし探そう」
「そんな簡単に見つかる?」

 髪生やしの魔法も聞いた事がないが、国中探せば一人くらい居るのではないだろうか。

 出来ればその人自身が独身で年齢近ければいいのだけど、もしそうでなくとも髪生やしの魔法があると知れば私の旦那さんになる人も安心だろう。

「そうと決まれば旅の支度だあ!」

 幸い7月になれば長期休暇が待っている!ひと月かけて国を回れば、うまくすれば見つかるんじゃないかしら!

「勉強には燃えないけど、こういうのには燃えるのねシーラって」
「さすがに独身はゴメンです!」

 浮気男は嫌だけど。
 恋愛はしたいのです。

「ついでにお婿さん候補も探してこよう」
「つまり男漁りの旅なのね」

 身も蓋もない言い方あ!



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