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しおりを挟む魔法と聞くと難しいイメージがあるけれど、誰もが魔法を使えるこの世界において低レベルな魔法は簡単に使える。誰もが生まれつき一つは魔法を使えるものだ。
ちなみに私は生まれつき風を起こす魔法を持っている。レベル1なのでそよ風程度だが。暑い時期とか結構使えるんだよ。某国にある扇風機みたく。ミナリスは土魔法。畑の土が肥料無しでも最高土になるらしく、よく農家からお呼びがかかる。
「ミナリス、今日の放課後はどこかでお茶でもどう?」
「今日は南東の村からお呼びがかかってるの。もうすぐ種蒔きのシーズンだからね」
「忙しいのね」
「人気者は辛いわ」
全然羨ましくない人気者だな。まあ夏場にやたらとそよ風要求される私よりマシか。しかも猛暑の日なんて要求されたから風起こしたのに、「生温くて気持ち悪い!」とか言われるしな。ふざけんな。
ただ使える魔法は生涯一つというわけでもない。突然開花することもよくある話だ。
「あーハゲさす魔法に開花しないかしら」
「誰得よそれ」
「私得」
ほら、鬱陶しい奴がいたら──バンズとか──ハゲさすぞ!って脅せばいいわけで。バンズとか。バンズとか。そしてバンズとか。
「バンズ何回ハゲんのよ」
「1回目は前部分。オデコが広くなる。2回目はその前部分を進行させて河童ヘアーに。3回目は後頭部で逆モヒカンとか」
「こっわ!ハゲ魔法、恐いわよ!」
「でしょでしょ。使えると思わない?」
「脅迫が罪にならなければいいんだけどね」
「それな」
伯爵令嬢二人してなんの話をしてるんだってな。
学園内で話すことでもないのだが、私はともかくミナリスはそんなこんなで休日も忙しいから。どうしても教室で話すことが多くなる。私らの会話を聞いて男子が蒼白になってる気がするけど、多分気のせいだろう。
無いからね、そんな魔法。ハゲの魔法は未だ聞いた事が無い。
「ハゲ魔法を誰か開発してくれないだろうか」
「だから誰得」
「だから私と「もういいわ」」
最後まで言わせてよ!
でもまあそうよね。魔法は突然閃いたり、既存のを駆使して新しいのを開発したりするもんだ。突然の閃きはともかくとして、わざわざハゲ魔法を開発する人はいないだろう。
となればだ。
「誰も開発してくれないのなら、私が開発してみせようホトトギス」
「ホトトギスもうええっつーの!」
ミナリスちゃんノリ悪いわ!
つれない親友に心のツッコミをした瞬間だった。
「あ」
「い」
い、じゃない!ミナリス、そういうのいいから!
「あ、神が降りてきたかも」
「なに、髪が降りてきたの?」
「そう、神。……待って、なんか『かみ』違いな気がするのだけど?」
「気のせいよ」
肩をすくめるミナリスを胡散臭げに見てから、私はコホンと咳払いをして仕切り直した。
「降りてきた。魔法の神が、閃きの神が降りてきたわよ!」
「え、まさかシーラ、あなた……」
「魔法、開花したよ!」
「まさかのご都合展開!」
まさかのご都合展開の神キタコレ!!
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