33 / 37
本編
第23話 続 決めゼリフ品評会
しおりを挟む
魔王にされてしまった勇者の恋人。彼女は自分を討ち滅ぼしにきた勇者を相見えた時、何を思い、何を話すのか。
フールズゲームメンバーによる自己解釈の元、恋人魔王の決めゼリフが今ここに爆誕する。
「というわけで、トップバッターは誰からにします?」
「俺がいこう」
むんずと鷲津が手を上げる。鷲津の両サイドでは、鷲津! やっちゃいなさい! 鷲津先輩ガンバです! と女性陣がやいのやいのと盛り上がっていた。おほんと時田が咳払いをする。
「では参ります。勇者はついに魔王の元へと辿り着いた⋯⋯そう。行方不明だった恋人の元に」
「殺すぞ」
やいのやいの言っていた女性陣の動きがピタリと止まった。まさに青菜に塩状態。まさかそんなはずはないと思い直した時田が念のために確認する。
「⋯⋯終わり?」
「そうだが?」
「うっそだろ!? 安直すぎるだろ! 勇者の恋人なんですけど相手⋯⋯なんかこう、もっとあるだろ! 積もる想いがさ!」
「お前は分かってないな。長ったらしいセリフだけが全てじゃない。短い言葉にこそ真意は宿るものだ」
確かに⋯⋯と、時田は思ってしまった。思ってしまったが。
「それらしいこと言ったって騙されねえぞ」
「ふん。騙されたかどうかは戦闘後のセリフを聞いてから考えるんだな」
そう言って、鷲津は胸の前で両腕を組んだ。どうも自信があるらしい。
「わかったよ⋯⋯確かに好意的に捉えれば、殺すぞと短く言うことで、むしろ勇者に対する殺意がビンビン伝わってくるような感じがするよ。きっと破局寸前だったんだろうな。うん」
と、自分を無理やり納得させて、
「じゃあ準備は良いか?」
鷲津に用意を促した。
「ああ」
真剣な眼差しで頷く鷲津に対して、時田はこくりとゆっくり頷き返す。
「魔王は膝をついた。勇者が差し向ける剣の前で⋯⋯」
「やられた」
「お前ふっざけんなよ!?」
これでもかと言わんばかりに、時田は鷲津の顔面に顔を近づけた。さすがの鷲津も目を逸らす。
「すまん。思いつかなかった」
「最初から素直にそう言えっての! びっくりするわほんと。けどあえて短くするというのはありだな。サンキュ鷲津」
こくりと頷いた親友は、女性陣二人に目を向ける。
「次はどっちが行く? ハードルは最大限に下ろしておいたぞ」
「やかましいわ」
巻原はそう言ってからキッと睨み、ふんと鼻を鳴らす。
「今の私はハードルが高ければ高いほど燃えるの。あんたの次に評価されても全然嬉しくないわけ」
「じゃ、じゃあうち行きたいです! ⋯⋯その、うちもそこまで自信ないので」
やれやれと時田がかぶりを振った。他二人も同じ気持ちなのか、何を言っているんだと言わんばかりの顔をしていた。金星はまだ自分の才能に対する自覚がない。そう。残酷的表現が異様に上手いという才能への自覚が。
鷲津がグッとガッツポーズを決めた。
「行け! 金星! 残酷の申し子!」
巻原も鷲津に続いた。同じようなガッツポーズをする。
「お願い金星ちゃん! このままだと張り合いがないの。私の必殺の決めゼリフが輝くにふさわしい場を用意して!」
「どっちも嬉しくない声援です⋯⋯」
金星は至極当然な感想を述べると、両手で頬をパンパンと叩いた!
「田中金星⋯⋯いかせてもらいます」
「良いねえ! ではさっそく」
時田はすうっと息を吸い、目を閉じた。それを見ていた三人が息を呑む。金星のターンが始まる。
フールズゲームメンバーによる自己解釈の元、恋人魔王の決めゼリフが今ここに爆誕する。
「というわけで、トップバッターは誰からにします?」
「俺がいこう」
むんずと鷲津が手を上げる。鷲津の両サイドでは、鷲津! やっちゃいなさい! 鷲津先輩ガンバです! と女性陣がやいのやいのと盛り上がっていた。おほんと時田が咳払いをする。
「では参ります。勇者はついに魔王の元へと辿り着いた⋯⋯そう。行方不明だった恋人の元に」
「殺すぞ」
やいのやいの言っていた女性陣の動きがピタリと止まった。まさに青菜に塩状態。まさかそんなはずはないと思い直した時田が念のために確認する。
「⋯⋯終わり?」
「そうだが?」
「うっそだろ!? 安直すぎるだろ! 勇者の恋人なんですけど相手⋯⋯なんかこう、もっとあるだろ! 積もる想いがさ!」
「お前は分かってないな。長ったらしいセリフだけが全てじゃない。短い言葉にこそ真意は宿るものだ」
確かに⋯⋯と、時田は思ってしまった。思ってしまったが。
「それらしいこと言ったって騙されねえぞ」
「ふん。騙されたかどうかは戦闘後のセリフを聞いてから考えるんだな」
そう言って、鷲津は胸の前で両腕を組んだ。どうも自信があるらしい。
「わかったよ⋯⋯確かに好意的に捉えれば、殺すぞと短く言うことで、むしろ勇者に対する殺意がビンビン伝わってくるような感じがするよ。きっと破局寸前だったんだろうな。うん」
と、自分を無理やり納得させて、
「じゃあ準備は良いか?」
鷲津に用意を促した。
「ああ」
真剣な眼差しで頷く鷲津に対して、時田はこくりとゆっくり頷き返す。
「魔王は膝をついた。勇者が差し向ける剣の前で⋯⋯」
「やられた」
「お前ふっざけんなよ!?」
これでもかと言わんばかりに、時田は鷲津の顔面に顔を近づけた。さすがの鷲津も目を逸らす。
「すまん。思いつかなかった」
「最初から素直にそう言えっての! びっくりするわほんと。けどあえて短くするというのはありだな。サンキュ鷲津」
こくりと頷いた親友は、女性陣二人に目を向ける。
「次はどっちが行く? ハードルは最大限に下ろしておいたぞ」
「やかましいわ」
巻原はそう言ってからキッと睨み、ふんと鼻を鳴らす。
「今の私はハードルが高ければ高いほど燃えるの。あんたの次に評価されても全然嬉しくないわけ」
「じゃ、じゃあうち行きたいです! ⋯⋯その、うちもそこまで自信ないので」
やれやれと時田がかぶりを振った。他二人も同じ気持ちなのか、何を言っているんだと言わんばかりの顔をしていた。金星はまだ自分の才能に対する自覚がない。そう。残酷的表現が異様に上手いという才能への自覚が。
鷲津がグッとガッツポーズを決めた。
「行け! 金星! 残酷の申し子!」
巻原も鷲津に続いた。同じようなガッツポーズをする。
「お願い金星ちゃん! このままだと張り合いがないの。私の必殺の決めゼリフが輝くにふさわしい場を用意して!」
「どっちも嬉しくない声援です⋯⋯」
金星は至極当然な感想を述べると、両手で頬をパンパンと叩いた!
「田中金星⋯⋯いかせてもらいます」
「良いねえ! ではさっそく」
時田はすうっと息を吸い、目を閉じた。それを見ていた三人が息を呑む。金星のターンが始まる。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
スカートとスラックスの境界線〜葉山瑞希がスカートを着る理由〜
さわな
ライト文芸
高等部の始業式当日、透矢は小学校の同級生だった瑞希と小五以来の再会を果たす。何故か瑞希はスカートを着用し、女の身なりをしていた。昔、いじめっ子から守ってもらった過去をきっかけに瑞希は透矢を慕うようになるが、透矢はなかなか瑞希を受け入れられない。
瑞希は男? 女? スカートを履く理由は……?
性別不明の高校生・葉山瑞希と、ごく普通の男子高校生・新井透矢が自分らしい生き方を模索するボーイミーツボーイ青春物語。
【3】Not equal romance【完結】
ホズミロザスケ
ライト文芸
大学生の桂咲(かつら えみ)には異性の友人が一人だけいる。駿河総一郎(するが そういちろう)だ。同じ年齢、同じ学科、同じ趣味、そしてマンションの隣人ということもあり、いつも一緒にいる。ずっと友達だと思っていた咲は駿河とともに季節を重ねていくたび、感情の変化を感じるようになり……。
「いずれ、キミに繋がる物語」シリーズ三作目(登場する人物が共通しています)。単品でも問題なく読んでいただけます。
※当作品は「カクヨム」「小説家になろう」にも同時掲載しております。(過去に「エブリスタ」にも掲載)
演じる家族
ことは
ライト文芸
永野未来(ながのみらい)、14歳。
大好きだったおばあちゃんが突然、いや、徐々に消えていった。
だが、彼女は甦った。
未来の双子の姉、春子として。
未来には、おばあちゃんがいない。
それが永野家の、ルールだ。
【表紙イラスト】ノーコピーライトガール様からお借りしました。
https://fromtheasia.com/illustration/nocopyrightgirl
鎌倉古民家カフェ「かおりぎ」
水川サキ
ライト文芸
旧題」:かおりぎの庭~鎌倉薬膳カフェの出会い~
【私にとって大切なものが、ここには満ちあふれている】
彼氏と別れて、会社が倒産。
不運に見舞われていた夏芽(なつめ)に、父親が見合いを勧めてきた。
夏芽は見合いをする前に彼が暮らしているというカフェにこっそり行ってどんな人か見てみることにしたのだが。
静かで、穏やかだけど、たしかに強い生彩を感じた。
三度目の庄司
西原衣都
ライト文芸
庄司有希の家族は複雑だ。
小学校に入学する前、両親が離婚した。
中学校に入学する前、両親が再婚した。
両親は別れたりくっついたりしている。同じ相手と再婚したのだ。
名字が大西から庄司に変わるのは二回目だ。
有希が高校三年生時、両親の関係が再びあやしくなってきた。もしかしたら、また大西になって、また庄司になるかもしれない。うんざりした有希はそんな両親に抗議すべく家出を決行した。
健全な家出だ。そこでよく知ってるのに、知らない男の子と一夏を過ごすことになった。有希はその子と話すうち、この境遇をどうでもよくなってしまった。彼も同じ境遇を引き受けた子供だったから。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【1】胃の中の君彦【完結】
ホズミロザスケ
ライト文芸
喜志芸術大学・文芸学科一回生の神楽小路君彦は、教室に忘れた筆箱を渡されたのをきっかけに、同じ学科の同級生、佐野真綾に出会う。
ある日、人と関わることを嫌う神楽小路に、佐野は一緒に課題制作をしようと持ちかける。最初は断るも、しつこく誘ってくる佐野に折れた神楽小路は彼女と一緒に食堂のメニュー調査を始める。
佐野や同級生との交流を通じ、閉鎖的だった神楽小路の日常は少しずつ変わっていく。
「いずれ、キミに繋がる物語」シリーズ一作目。
※完結済。全三十六話。(トラブルがあり、完結後に編集し直しましたため、他サイトより話数は少なくなってますが、内容量は同じです)
※当作品は「カクヨム」「小説家になろう」にも同時掲載しております。(過去に「エブリスタ」「貸し本棚」にも掲載)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる