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第五章 パラレル
第130話 Opportunity
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帰宅するまでにもLINEの着信がひっきりなしで、世間的にもかなりバズっている様子だった。
祐太はディディエに自分の正体をついに明かしたのだろうか。ひとまず黛君の心配がなくなったものだから、そんなことが気がかりだった。
帰宅後すぐに祐太たちが暮らすフロアに直行したが、秋菜が先に帰宅しており、特に変わった様子は見られない。秋菜は例の画像(元はタユユのインスタかららしい)についてまだ知らないのだろうか。知ってたら結構面倒くさいことになっていそうなのだけど。
「ただいまー」
リビングのソファに寝そべった秋菜が携帯を眺めながらニヤニヤしている。
「お帰りー、夏葉ちゃん。見て見てっ、ディディエがめっちゃバズってるよっ!」
あれぇ、知ってるのか……。だとしたら、まさかタユユの正体が祐太だってまだ気づいてなかったり? するわけないか。秋菜に限ってそれはないよなぁ。だけど、そうだったらこの期に及んでまだ祐太に何も言ってこないってどういうことだろうか。謎だわ。
「あ、ディディエはタユユに会えたんだ」
さり気なく、あくまでわたしは何も知りませんでしたよという体で言ってみる。
「あはは。何言ってんの、夏葉ちゃん? タユユは祐太じゃん」
だよね。やっぱ知ってたよね。だろうと思った。けどどうして今までそのことに何も触れなかったんだろ。秋菜ならいの一番に祐太のことイジると思うんだけどなぁ。
「う……」
「やだなぁ、夏葉ちゃんったら。わたしが気づかないとでも思ったの? そんなわけないじゃん」
いや、思っていませんでしたけどね、そりゃまぁ。
「ですよねぇ……じゃあなんで祐太に黙ってたの?」
そこが謎なんだけど。知ってたのに黙ってたっていうのは一体どういう理由なわけ?
「いやだって、祐太に言ったら絶対あの子落ち込むじゃん。下手したらやめちゃうかもしれないもん」
意外。秋菜が祐太のことそんな風に気にかけるとは思ってもみなかったわ。何なら徹底的に握り潰すくらいのことはするかと……。
「ねぇ、夏葉ちゃん。今すっごく失礼なこと考えてなかった?」
「……ごめん……考えてたけどさ」
「考えてたんかーいっ」
「だってまさか秋菜が祐太に対してそんな思いやりがあったなんて……」
「ちょっ。わたしのこと何だと思ってるわけ⁉ わたしもさ。夏葉ちゃんの変化とか目の当たりにして、色々と考えるところがあるわけよ。性別のこととかについてもね。祐太が女の子の格好がしたいんだったら別にそれも悪いことじゃないんじゃないかなって思ったんだよ」
「わたしの変化が影響していると……?」
「そうだよ。色々悩んでる夏葉ちゃんを一番近くで見てきたわけだしさ。わたしも当然考えるよね。性別ってなんだろなってさ。あれやこれや考えてたら、ややっこしくてわけが分からなくなっちゃうじゃん。祐太がどんな性なのかは全然分かんないんだけど、わたしは祐太のことを受け入れてるつもりだよ」
不覚にもちょっと感動してしまった。あの秋菜が祐太をそんな風に受け入れようとしているなんて、以前なら考えられない。しかもそんな秋菜の気持ちに、わたしのことが少なからず影響を与えているのだとしたらなおさらだ。
「あー、祐太はさ。女の子のコスプレを楽しんでるだけで、女の子として生きたいとまでは思っていないみたいだよ。時々こうしてコスプレを楽しむので満足みたい」
「えぇ~、そうなのぉ~?」
「ちょ、なんでそこで残念っぽい感じになってるのよ⁉︎ そもそもちっちゃい頃から秋菜を見て、いっつもかわいく着飾って羨ましいなって思ってたらしいよ」
「へぇ~、そうなんだ……ていうかそれ、祐太が夏葉ちゃんに言ってたの?」
「そうだけど?」
「ちっ。何でそういうのをわたしに相談してこないかなぁ」
不満そうに秋菜は言う。だけどそりゃそうだろう。秋菜のことを一番よく知るわたしだって秋菜のリアクションを予想できなかったのに。
でもここは秋菜の臍を曲げさせる事態を避けたいところだ。せっかく秋菜がタユユのことを好意的に受け止めているのだ。
「それはさぁ、あれだよ。たまたまわたしが早い段階でタユユのことを知ったんだよ。それで祐太に言ったんだよ。それで渋々祐太が気持ちを話してくれたんだ。ちょっと自棄っぱち気味だったけどね。祐太としてはさ、わたしが女子化しちゃって秋菜と服をシェアしてお洒落したりメイクしたりするのを見て、羨ましかったんだってさ。でも男が女になるっていう経験をしてるわたしだったから、話しやすかったんじゃないのかなーって思うよ」
「なるほどぉ。確かにそうかもね。あ、あの子が夏葉ちゃんに無愛想になってたのって、もしかしてやきもち⁉︎」
「まぁ、そうみたいよ」
「はっはぁ~、なるほどねぇ! 色々と腑に落ちたわ。なるほどなるほどぉ」
ふぅ。どうにか納得してくれたか。よかったぁ。でも秋菜が味方してくれたら心強いぞ。よかったね、祐太。
「ただいまー」
ちょうどご機嫌な様子でディディエと祐太が帰ってきた。
「お帰りぃ~。ディディエ、タユユに会えたね~」
秋菜が満面の笑みでディディエたちを迎え入れた。
その様子を見て分かってしまった。多少のイジリはあるのだろうことを。
ま、でも基本的に秋菜は味方になってくれるはず。でも多少のかわいがりは覚悟するんだな。頑張れタユユ。
祐太はディディエに自分の正体をついに明かしたのだろうか。ひとまず黛君の心配がなくなったものだから、そんなことが気がかりだった。
帰宅後すぐに祐太たちが暮らすフロアに直行したが、秋菜が先に帰宅しており、特に変わった様子は見られない。秋菜は例の画像(元はタユユのインスタかららしい)についてまだ知らないのだろうか。知ってたら結構面倒くさいことになっていそうなのだけど。
「ただいまー」
リビングのソファに寝そべった秋菜が携帯を眺めながらニヤニヤしている。
「お帰りー、夏葉ちゃん。見て見てっ、ディディエがめっちゃバズってるよっ!」
あれぇ、知ってるのか……。だとしたら、まさかタユユの正体が祐太だってまだ気づいてなかったり? するわけないか。秋菜に限ってそれはないよなぁ。だけど、そうだったらこの期に及んでまだ祐太に何も言ってこないってどういうことだろうか。謎だわ。
「あ、ディディエはタユユに会えたんだ」
さり気なく、あくまでわたしは何も知りませんでしたよという体で言ってみる。
「あはは。何言ってんの、夏葉ちゃん? タユユは祐太じゃん」
だよね。やっぱ知ってたよね。だろうと思った。けどどうして今までそのことに何も触れなかったんだろ。秋菜ならいの一番に祐太のことイジると思うんだけどなぁ。
「う……」
「やだなぁ、夏葉ちゃんったら。わたしが気づかないとでも思ったの? そんなわけないじゃん」
いや、思っていませんでしたけどね、そりゃまぁ。
「ですよねぇ……じゃあなんで祐太に黙ってたの?」
そこが謎なんだけど。知ってたのに黙ってたっていうのは一体どういう理由なわけ?
「いやだって、祐太に言ったら絶対あの子落ち込むじゃん。下手したらやめちゃうかもしれないもん」
意外。秋菜が祐太のことそんな風に気にかけるとは思ってもみなかったわ。何なら徹底的に握り潰すくらいのことはするかと……。
「ねぇ、夏葉ちゃん。今すっごく失礼なこと考えてなかった?」
「……ごめん……考えてたけどさ」
「考えてたんかーいっ」
「だってまさか秋菜が祐太に対してそんな思いやりがあったなんて……」
「ちょっ。わたしのこと何だと思ってるわけ⁉ わたしもさ。夏葉ちゃんの変化とか目の当たりにして、色々と考えるところがあるわけよ。性別のこととかについてもね。祐太が女の子の格好がしたいんだったら別にそれも悪いことじゃないんじゃないかなって思ったんだよ」
「わたしの変化が影響していると……?」
「そうだよ。色々悩んでる夏葉ちゃんを一番近くで見てきたわけだしさ。わたしも当然考えるよね。性別ってなんだろなってさ。あれやこれや考えてたら、ややっこしくてわけが分からなくなっちゃうじゃん。祐太がどんな性なのかは全然分かんないんだけど、わたしは祐太のことを受け入れてるつもりだよ」
不覚にもちょっと感動してしまった。あの秋菜が祐太をそんな風に受け入れようとしているなんて、以前なら考えられない。しかもそんな秋菜の気持ちに、わたしのことが少なからず影響を与えているのだとしたらなおさらだ。
「あー、祐太はさ。女の子のコスプレを楽しんでるだけで、女の子として生きたいとまでは思っていないみたいだよ。時々こうしてコスプレを楽しむので満足みたい」
「えぇ~、そうなのぉ~?」
「ちょ、なんでそこで残念っぽい感じになってるのよ⁉︎ そもそもちっちゃい頃から秋菜を見て、いっつもかわいく着飾って羨ましいなって思ってたらしいよ」
「へぇ~、そうなんだ……ていうかそれ、祐太が夏葉ちゃんに言ってたの?」
「そうだけど?」
「ちっ。何でそういうのをわたしに相談してこないかなぁ」
不満そうに秋菜は言う。だけどそりゃそうだろう。秋菜のことを一番よく知るわたしだって秋菜のリアクションを予想できなかったのに。
でもここは秋菜の臍を曲げさせる事態を避けたいところだ。せっかく秋菜がタユユのことを好意的に受け止めているのだ。
「それはさぁ、あれだよ。たまたまわたしが早い段階でタユユのことを知ったんだよ。それで祐太に言ったんだよ。それで渋々祐太が気持ちを話してくれたんだ。ちょっと自棄っぱち気味だったけどね。祐太としてはさ、わたしが女子化しちゃって秋菜と服をシェアしてお洒落したりメイクしたりするのを見て、羨ましかったんだってさ。でも男が女になるっていう経験をしてるわたしだったから、話しやすかったんじゃないのかなーって思うよ」
「なるほどぉ。確かにそうかもね。あ、あの子が夏葉ちゃんに無愛想になってたのって、もしかしてやきもち⁉︎」
「まぁ、そうみたいよ」
「はっはぁ~、なるほどねぇ! 色々と腑に落ちたわ。なるほどなるほどぉ」
ふぅ。どうにか納得してくれたか。よかったぁ。でも秋菜が味方してくれたら心強いぞ。よかったね、祐太。
「ただいまー」
ちょうどご機嫌な様子でディディエと祐太が帰ってきた。
「お帰りぃ~。ディディエ、タユユに会えたね~」
秋菜が満面の笑みでディディエたちを迎え入れた。
その様子を見て分かってしまった。多少のイジリはあるのだろうことを。
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