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第五章 パラレル
第128話 不思議
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夏休みが明けると早々に、今度は文化祭の準備が始まる。桜桃学園は予算があるので、毎年売れっ子のお笑い芸人を呼んだりするらしく、なかなか盛り上がる様子だ。
模擬店だとかお化け屋敷だとか、各クラス趣向を凝らして出し物を考える。
秋菜のクラスでは喫茶店をやると言っていた。さすがに漫画やラノベのようにメイド喫茶というわけにはいかず純喫茶だそうだが、隣のクラスはジャズ喫茶だとかで思いっきり被っている。
そこでうちのクラスが何をやるのかだが、これがなかなか決まらずに難航したのだった。
運営側から火器の使用は厳禁と言い渡されているので、調理に関してはせいぜいホットプレートか電磁調理器くらいしか使えない。まあ少量の調理にしか対応できないだろう。
そこはセレブの集まる学校なので、経済力と権力にものを言わせてどうにかしようとする者もなくはないが、クラスの執行委員によってどうにかそれは阻止された。いざというときには頼むと事前に言われていたが、我が家は民事不介入というか子供のことには基本不介入なので役立てないし困ったなぁと思っていたのだ。
そうして散々ああでもないこうでもないと迷走した挙句に、どうにかやっと落ち着いた落とし所というのが、某大手アイスクリームの販売だった。と言ってもこれだって決して簡単なことではなかった。販売から接客、盛り付け方、商品知識と、きちんとした講習と教育を受けるという本格的なものだ。
そんなわけでわたしたちは、学園祭にて某アイスクリーム屋さんの店舗を教室内に開くべく動き出すわけなのだけど……。
そのアイス屋さんの営業部との折衝担当が、どういうわけかなし崩し的にわたしと十一夜君ということにされてしまったのだ。これは多分に友紀ちゃんや楓ちゃんの思惑が背後で働いていたに違いない。
それで十一夜君と放課後にアイス屋さんと打ち合わせに行くという名目で、実際の折衝は十一夜家が立てた影武者に任せ、わたしたちは例のごとく報告会ということでうさぎ屋に集合していた。
集まっているのはわたしと十一夜君、聖連ちゃん、そしてすみれさんと細野のじっちゃんというメンバーだ。
当初は細野ご夫妻の参加についてあまり快くは思っていなかったらしい十一夜君だが、この度のすみれさんの活躍ぶり——と言うより主にすみれさんのコネのお陰だけど——によって、その実力を見直して受け入れてくれたようだ。やはりこういった世界は実力主義なのだろうなぁ。
「あらまぁ、美味しいわねぇ。この、抹茶なんとか? 若い人はこういうお店よく知っているのね」
抹茶エスプーマ善哉を口にして、感心した様子ですみれさんが言う。相変わらずのほほんとしてらっしゃる。
武蔵のじっちゃんはそんなすみれさんに、手に負えないといったジェスチャーでだんまりを決め込んでいる。
「それじゃ、いいでしょうか」
聖連ちゃんが報告会を始めるべく仕切る。皆異論はないので黙って首肯で応じる。
「それじゃまずはわたしから。黛先輩に関してちょっと調べてみましたが、不思議な人でした」
「不思議な人?」
思わず口を突いて出てしまったが、調査結果不思議な人ってどうなの? って思ってしまったのだ。
「はい。不思議な人です」
いやそれは分かったけど、漠然とし過ぎだし。
「どういうことかと言うと、戸籍がですね、随分最近作成されたか、もしくは書き換えられたものです。それだけじゃないんです。どうも何度か書き換えられた形跡があります。戸籍なんて結婚や離婚、出生等の変更や追加はあっても、データ全体の書き換えなんてそうそうあるとも思えないので、試しに無作為に取り出したデータと比較してみましたが、やっぱり思ったとおりそうそう書き換えられた形跡なんて出てきませんでした」
聖連ちゃんの言葉から、何か違法なハッキングが行われたことは明白だけど、敢えてそこには触れないでおこうと思う、うん。
「不思議だなと思って、黛先輩が帰国する前の記録についても調べてみたんですよ。スイス時代の。データ上は確かに在籍したはずの高校が、ヨーロッパで活動している十一夜家の者に調査してもらったところ、黛先輩の実体が存在した形跡ないんですよ。やっぱり不思議じゃないですか。それでご家族のことも調べてみたんですよね。お父さんって方は政府機関所属ということは間違いありません。スイスのCERN(欧州原子核研究機構)と日本の素粒子物理学研究所の共同研究開発プロジェクトというものがありまして、そのプロジェクトに黛先輩のお父さんは携わっていますね」
なんか凄そうなプロジェクトに関わっている人だということは分かったけど、それが黛君の謎と何か関係しているということなのかな。
聖連ちゃんが、一通り話したところで十一夜君に目配せして頷いた。
「聖連からの情報で、黛君の家に侵入してみた」
出た。十一夜君お得意の不法侵入。
はいはい。その是非について今更問うつもりはないですよ。続きをどうぞ。
「不思議なことに、両親と暮らしているような形跡はない。それなのにセキュリティシステムは入っているし、警備と思われる私服の人間が四六時中家の周囲で張っていた。しかも黛君は平日中は寝るために帰るだけ。週末は不在だ。部屋の中から毛髪や指紋を採取したが、不思議なことに黛君のもの以外に生物学的に血縁関係にある可能性がある毛髪は一切出てこなかった。まあ養子縁組による家族という可能性もなくはないが」
「それじゃあ、あの男が言っていたように、別の並行世界からやってきたっていうのは本当なの?」
と訊いては見たが、まさかとも思う。だが、少なくとも普通ではないというのは確実に言えそうだ。
「いや、この情報だけでははっきりと言い切れない。だけど可能性がないと言い切れるわけでもないってことさ」
うぅ……。つまり十一夜君にしてもわたしと同じくはっきりとしたことはまだ分からないってことか。
「あ、それと電話を盗聴していたのですが、学校とのやり取りで電話対応しているのは黛先輩の家とは全然違う場所でした。経由された基地局を辿ると、どうやらある施設に絞られるのですが、国が所有している土地の敷地内にある建物と特定していいと思うんですよね」
「え、聖連ちゃん、つまりそれは親御さんの振りをした政府関係の人が電話対応してるという意味になるのかな?」
「そうですね。状況的にそう考えてもいいんじゃないかと思っています。ちなみに夏葉先輩が朧との接触に使っていたあの書店の近くですね」
「あ、なるほどぉ。だからよく見かけていたんだねぇ。用事でよく来るって言ってたけど、そういうことかぁ……。あれ、細野先生が家庭訪問するって言ってたけど、どうなったんだろう」
確か拉致事件があったあの日、細野先生と黛君のことを話したばかりだったんだけど。
「通話記録によれば、やはり電話は例の施設に転送されていたようですね。まだ盗聴はしていなかったので内容までは不明ですが、恐らく体よく断ったのじゃないかと思いますけど」
「まぁ、あの子も教師らしくやっているのねぇ」
そう言って目を細めて満面の笑顔を浮かべるすみれさんに、じっちゃんが横槍を入れる。
「何が何が。わしが教鞭をとっておった頃などな、十一夜だの華名咲だののやんちゃ坊主共が仰山おって手を焼いたもんじゃが、しっかり手懐けたもんよ。あやつなどまだまだはなたれ小僧じゃわぃ。ふんっ」
武蔵さん、久しぶりに喋ったと思ったら何だか孫に張り合ってる。あ、すみれさんが細野先生のこと誉めたから妬いてるのか。
まったくいい大人が張り合っちゃって。かわいいなぁ。
うちのお祖父ちゃんもやんちゃ坊主だったのか。分かる気はするけど。
「ほれ」
どんっと音を立てて、テーブルの上にA4の紙束が乗せられた。
「これは?」
「預かっておった例のチップの解析のレポートじゃ。妙なアルファベットの羅列じゃったが、やっと解析に成功したぞ」
「えっ? うちの暗号解読班がまだ解読できないのに、もう⁉」
「フンッ。やれITだの何だのと言ってもな。こういうのには勘と経験が物を言う場合もあるのじゃよ。何を考えたのかこのデータを作ったやつは旧日本軍の九七式欧文印字機という暗号機を使って暗号化しておったわ。今どきこんな化石を使うとは誰も思うまいよ。よほどの好き者の仕業じゃろうな」
武蔵さんが鼻息も荒く語ると、自慢気に髭を撫でてふんぞり返った。
十一夜の人でもまだ解読できていないという暗号化データを既に解読したというのだから、そりゃ自慢気にもなるってもんか。
武蔵さんは誉めろと言わんばかりにすみれさんを横目にチラチラと気にしている。どんだけすみれさんに誉められたいのよこの人は。
「まぁ……あなた、なかなかやるものね」
すみれさんのその言葉にみるみる目尻が下がる武蔵さん。おぉおぉ、嬉しそうにまあ。ほんっと、いつまでも子供みたいだなぁ武蔵じっちゃんは。
「ふふん。まだまだ若いもんには負けんわい。どうじゃ、見直したかすみれ」
「うふふふふ。素敵よ、あなた。見直したわ」
「ふん、たわけっ」
「うふふふ」
おいおい。わたしたちは何を見せられてるんだ、これは? こんなところで老夫婦のおノロケとか微笑ましいけど、家でやってくれ。
「それで、内容は?」
見かねた十一夜君が二人の間に流れるのほほんとした空気を切り裂くように問い尋ねた。
「うむ。よかろう。内容は十年前の研究と実験計画に関する詳細な情報じゃ。さっき出ておった素粒子物理学研究所とやらの所属機関のようじゃが、公には秘匿されておる機関のようじゃ」
繋がってきた。黛君のお父さんが携わる研究とMSが欲しがる情報はやはり関連しているということになりそうだ。
「それで、その研究と実験計画の内容というのは?」
いつも眠そうにしている十一夜君の目がいつになく真剣味を帯びている。切れ長の目姿が凛々しくてなんかかっこよく見える。
と、そこに店内に設置されているテレビから大火災の臨時ニュース映像が流れてきた。
「始まったわね……」
すみれさんだ。
え、始まったって、何が? この火災とすみれさん、何か関係してるの⁉
模擬店だとかお化け屋敷だとか、各クラス趣向を凝らして出し物を考える。
秋菜のクラスでは喫茶店をやると言っていた。さすがに漫画やラノベのようにメイド喫茶というわけにはいかず純喫茶だそうだが、隣のクラスはジャズ喫茶だとかで思いっきり被っている。
そこでうちのクラスが何をやるのかだが、これがなかなか決まらずに難航したのだった。
運営側から火器の使用は厳禁と言い渡されているので、調理に関してはせいぜいホットプレートか電磁調理器くらいしか使えない。まあ少量の調理にしか対応できないだろう。
そこはセレブの集まる学校なので、経済力と権力にものを言わせてどうにかしようとする者もなくはないが、クラスの執行委員によってどうにかそれは阻止された。いざというときには頼むと事前に言われていたが、我が家は民事不介入というか子供のことには基本不介入なので役立てないし困ったなぁと思っていたのだ。
そうして散々ああでもないこうでもないと迷走した挙句に、どうにかやっと落ち着いた落とし所というのが、某大手アイスクリームの販売だった。と言ってもこれだって決して簡単なことではなかった。販売から接客、盛り付け方、商品知識と、きちんとした講習と教育を受けるという本格的なものだ。
そんなわけでわたしたちは、学園祭にて某アイスクリーム屋さんの店舗を教室内に開くべく動き出すわけなのだけど……。
そのアイス屋さんの営業部との折衝担当が、どういうわけかなし崩し的にわたしと十一夜君ということにされてしまったのだ。これは多分に友紀ちゃんや楓ちゃんの思惑が背後で働いていたに違いない。
それで十一夜君と放課後にアイス屋さんと打ち合わせに行くという名目で、実際の折衝は十一夜家が立てた影武者に任せ、わたしたちは例のごとく報告会ということでうさぎ屋に集合していた。
集まっているのはわたしと十一夜君、聖連ちゃん、そしてすみれさんと細野のじっちゃんというメンバーだ。
当初は細野ご夫妻の参加についてあまり快くは思っていなかったらしい十一夜君だが、この度のすみれさんの活躍ぶり——と言うより主にすみれさんのコネのお陰だけど——によって、その実力を見直して受け入れてくれたようだ。やはりこういった世界は実力主義なのだろうなぁ。
「あらまぁ、美味しいわねぇ。この、抹茶なんとか? 若い人はこういうお店よく知っているのね」
抹茶エスプーマ善哉を口にして、感心した様子ですみれさんが言う。相変わらずのほほんとしてらっしゃる。
武蔵のじっちゃんはそんなすみれさんに、手に負えないといったジェスチャーでだんまりを決め込んでいる。
「それじゃ、いいでしょうか」
聖連ちゃんが報告会を始めるべく仕切る。皆異論はないので黙って首肯で応じる。
「それじゃまずはわたしから。黛先輩に関してちょっと調べてみましたが、不思議な人でした」
「不思議な人?」
思わず口を突いて出てしまったが、調査結果不思議な人ってどうなの? って思ってしまったのだ。
「はい。不思議な人です」
いやそれは分かったけど、漠然とし過ぎだし。
「どういうことかと言うと、戸籍がですね、随分最近作成されたか、もしくは書き換えられたものです。それだけじゃないんです。どうも何度か書き換えられた形跡があります。戸籍なんて結婚や離婚、出生等の変更や追加はあっても、データ全体の書き換えなんてそうそうあるとも思えないので、試しに無作為に取り出したデータと比較してみましたが、やっぱり思ったとおりそうそう書き換えられた形跡なんて出てきませんでした」
聖連ちゃんの言葉から、何か違法なハッキングが行われたことは明白だけど、敢えてそこには触れないでおこうと思う、うん。
「不思議だなと思って、黛先輩が帰国する前の記録についても調べてみたんですよ。スイス時代の。データ上は確かに在籍したはずの高校が、ヨーロッパで活動している十一夜家の者に調査してもらったところ、黛先輩の実体が存在した形跡ないんですよ。やっぱり不思議じゃないですか。それでご家族のことも調べてみたんですよね。お父さんって方は政府機関所属ということは間違いありません。スイスのCERN(欧州原子核研究機構)と日本の素粒子物理学研究所の共同研究開発プロジェクトというものがありまして、そのプロジェクトに黛先輩のお父さんは携わっていますね」
なんか凄そうなプロジェクトに関わっている人だということは分かったけど、それが黛君の謎と何か関係しているということなのかな。
聖連ちゃんが、一通り話したところで十一夜君に目配せして頷いた。
「聖連からの情報で、黛君の家に侵入してみた」
出た。十一夜君お得意の不法侵入。
はいはい。その是非について今更問うつもりはないですよ。続きをどうぞ。
「不思議なことに、両親と暮らしているような形跡はない。それなのにセキュリティシステムは入っているし、警備と思われる私服の人間が四六時中家の周囲で張っていた。しかも黛君は平日中は寝るために帰るだけ。週末は不在だ。部屋の中から毛髪や指紋を採取したが、不思議なことに黛君のもの以外に生物学的に血縁関係にある可能性がある毛髪は一切出てこなかった。まあ養子縁組による家族という可能性もなくはないが」
「それじゃあ、あの男が言っていたように、別の並行世界からやってきたっていうのは本当なの?」
と訊いては見たが、まさかとも思う。だが、少なくとも普通ではないというのは確実に言えそうだ。
「いや、この情報だけでははっきりと言い切れない。だけど可能性がないと言い切れるわけでもないってことさ」
うぅ……。つまり十一夜君にしてもわたしと同じくはっきりとしたことはまだ分からないってことか。
「あ、それと電話を盗聴していたのですが、学校とのやり取りで電話対応しているのは黛先輩の家とは全然違う場所でした。経由された基地局を辿ると、どうやらある施設に絞られるのですが、国が所有している土地の敷地内にある建物と特定していいと思うんですよね」
「え、聖連ちゃん、つまりそれは親御さんの振りをした政府関係の人が電話対応してるという意味になるのかな?」
「そうですね。状況的にそう考えてもいいんじゃないかと思っています。ちなみに夏葉先輩が朧との接触に使っていたあの書店の近くですね」
「あ、なるほどぉ。だからよく見かけていたんだねぇ。用事でよく来るって言ってたけど、そういうことかぁ……。あれ、細野先生が家庭訪問するって言ってたけど、どうなったんだろう」
確か拉致事件があったあの日、細野先生と黛君のことを話したばかりだったんだけど。
「通話記録によれば、やはり電話は例の施設に転送されていたようですね。まだ盗聴はしていなかったので内容までは不明ですが、恐らく体よく断ったのじゃないかと思いますけど」
「まぁ、あの子も教師らしくやっているのねぇ」
そう言って目を細めて満面の笑顔を浮かべるすみれさんに、じっちゃんが横槍を入れる。
「何が何が。わしが教鞭をとっておった頃などな、十一夜だの華名咲だののやんちゃ坊主共が仰山おって手を焼いたもんじゃが、しっかり手懐けたもんよ。あやつなどまだまだはなたれ小僧じゃわぃ。ふんっ」
武蔵さん、久しぶりに喋ったと思ったら何だか孫に張り合ってる。あ、すみれさんが細野先生のこと誉めたから妬いてるのか。
まったくいい大人が張り合っちゃって。かわいいなぁ。
うちのお祖父ちゃんもやんちゃ坊主だったのか。分かる気はするけど。
「ほれ」
どんっと音を立てて、テーブルの上にA4の紙束が乗せられた。
「これは?」
「預かっておった例のチップの解析のレポートじゃ。妙なアルファベットの羅列じゃったが、やっと解析に成功したぞ」
「えっ? うちの暗号解読班がまだ解読できないのに、もう⁉」
「フンッ。やれITだの何だのと言ってもな。こういうのには勘と経験が物を言う場合もあるのじゃよ。何を考えたのかこのデータを作ったやつは旧日本軍の九七式欧文印字機という暗号機を使って暗号化しておったわ。今どきこんな化石を使うとは誰も思うまいよ。よほどの好き者の仕業じゃろうな」
武蔵さんが鼻息も荒く語ると、自慢気に髭を撫でてふんぞり返った。
十一夜の人でもまだ解読できていないという暗号化データを既に解読したというのだから、そりゃ自慢気にもなるってもんか。
武蔵さんは誉めろと言わんばかりにすみれさんを横目にチラチラと気にしている。どんだけすみれさんに誉められたいのよこの人は。
「まぁ……あなた、なかなかやるものね」
すみれさんのその言葉にみるみる目尻が下がる武蔵さん。おぉおぉ、嬉しそうにまあ。ほんっと、いつまでも子供みたいだなぁ武蔵じっちゃんは。
「ふふん。まだまだ若いもんには負けんわい。どうじゃ、見直したかすみれ」
「うふふふふ。素敵よ、あなた。見直したわ」
「ふん、たわけっ」
「うふふふ」
おいおい。わたしたちは何を見せられてるんだ、これは? こんなところで老夫婦のおノロケとか微笑ましいけど、家でやってくれ。
「それで、内容は?」
見かねた十一夜君が二人の間に流れるのほほんとした空気を切り裂くように問い尋ねた。
「うむ。よかろう。内容は十年前の研究と実験計画に関する詳細な情報じゃ。さっき出ておった素粒子物理学研究所とやらの所属機関のようじゃが、公には秘匿されておる機関のようじゃ」
繋がってきた。黛君のお父さんが携わる研究とMSが欲しがる情報はやはり関連しているということになりそうだ。
「それで、その研究と実験計画の内容というのは?」
いつも眠そうにしている十一夜君の目がいつになく真剣味を帯びている。切れ長の目姿が凛々しくてなんかかっこよく見える。
と、そこに店内に設置されているテレビから大火災の臨時ニュース映像が流れてきた。
「始まったわね……」
すみれさんだ。
え、始まったって、何が? この火災とすみれさん、何か関係してるの⁉
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