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第四章 Love And Hate
第95話 感触
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本当に女の子になってしまった。
改めてその事実が医学的証拠として提出されると、今更ながら色々と考えさせられる。
気がつくと溜息ばかり吐いていて、叔母さんから指摘される。
受け入れているつもりだったのに、今更ショックを受けているのだろうか。
いや、現実を受け入れて、もし男性に戻れる時が訪れるなら、その時また改めて考えれば良いと、割り切っていたはずではないか。
またうだうだとそんなことを考えていたら、食も進まなかった。
「どうしたの、夏葉ちゃん? 調子でも悪い?」
食卓を囲む中、秋菜がわたしの様子がおかしいことに気がついたようで、心配して尋ねられる。
「あ~。今日ね、病院に行ってきたんだよ、DNA検査の結果を聞きに」
「あぁ、今日だったんだ。それで、どうだった?」
「いやぁ、分かっちゃいたけど、体も心も女性って言われて、改めてショックを噛み締めてるところ」
「今更? 夏葉ちゃん、まだ受け入れてなかったんだ?」
「いや、受け入れてたつもりなんだけどさぁ。いざ医学的に診断が出ると、なんか複雑な気持ちになるんだよねぇ、これが」
「そんなもん?」
「そんなもんなんだよ」
叔父さんたちは口を出さずに聞いている。
今ひとつ食欲も出ないし、早めに自部屋に退散してベッドに入った。
よほどショックが大きかったのか、その晩熱を出した。
熱のせいか、変な夢を見た。
男の自分がなぜか十一夜君と桐島さんと三人で仲良く食事をしているのを、女のわたしが遠くから見ているという変な夢……。
そこへどういうわけか黛君が厨房から出てきて、その後を追うように、彼のお父さんだと思い込んでたあのおじさんが出てくる。
わたしは声をかけようかと思ったけど、あの人はお父さんじゃないからやめておこうと思い留まる。
あの人がお父さんじゃなくても、黛君は黛君なのに、声をかけるのを思い留まる理由になっていないが、これが夢の中ってことだろう。自分でも全く意味がわからない。
ウェイトレスが水を運んできたのでお礼を言おうと顔を見上げたら、高笑いする麻由美ちゃんだった。
もうほんっと、何が何やら……。
翌朝、怠さが昨晩と変わらず熱も下がらない。この状況に、なんだか嫌なことを思い出す。
そう、わたしが女子化してしまったあの運命的な発熱だ。
あの時も、朝になっても熱が下がらないという事態が数日続き、その間に体が女子化してしまうという、多分人生を大きく変えることとなる大事件が起こったのだ。
病院で女性と診断された矢先に、今度はまさかまた男子に戻るとか? さすがにそれはないよな、と思いつつもそんな疑問が脳裏を掠める。
男子に戻る。
あれほど望んでいたにもかかわらず、今の自分には単純に嬉しいと思うことはできなかった。
もしそうなった場合、せっかく親しくなったクラスメイトたちの前から姿を消さなければならないことが心に重くのしかかる。
あとつんつるてんになった体毛問題な。
どうすんのこれ?
脇毛もすね毛もお髭もないよ? 何なら一番恥ずかしいのはあそこの毛がないよ?
まあ女子でもここまで処理しちゃってる人はそんなにいないと思うんだけど、男としてはつんつるてんはなんかだいぶ恥ずかしい気がするんだけど……。
あ、海外に行っちゃえば普通?
家族がいるパナマに行っちゃえばそこは問題ないか。
男子に戻った場合、一番心配なのが陰毛事情ってどうなのよって気もするが、意外とそういうことが気がかりだったりして……あは。
まあとにかく、すっかりこの生活にも馴染んだ今となってはJK生活も結構楽しかったりして、むさっ苦しい野郎どもの汗臭い世界に戻るとしても、夏場はちょっとなって思ったりする自分もいるわけだ。
そんな愚にもつかないことをぐるぐると考えながら一日中熱に浮かされていたが、翌日には熱もようやく下がってくれた。
熱は下がれど不安は尽きぬ。
そういえば、女体化した時ってずっとおっぱいが成長していったけど、今回変な発熱で心配だったので、何度もおっぱいの状態を確認した。
今では掌に余るほどに成長した大きさよし。
揉み心地よし。いつも通りだ。
形は鏡見てないから不明。
色艶よし。色素沈着とは無縁のきれいな色をしている。
うむ。幸いにもおっぱい戦線異状なし。
って、「幸い」って言っちゃった?
うーーん。男子化してないことを幸いって、心の中で思ってるってことなのかなぁ……。
やはり複雑な心境だ。
そう言えば心のどこかでホッとしている自分がいるような気もしないではない。
女子化しちゃった時には、男として最後の砦があった股間の変化にショックを受けたっけなぁ……。
今や隔世の感があるよね……。
すっかり遠い日の思い出となりつつあるあの日のことを思い出しながら股間をパンツの上から確認してみる。
————あれ、この感触は?
改めてその事実が医学的証拠として提出されると、今更ながら色々と考えさせられる。
気がつくと溜息ばかり吐いていて、叔母さんから指摘される。
受け入れているつもりだったのに、今更ショックを受けているのだろうか。
いや、現実を受け入れて、もし男性に戻れる時が訪れるなら、その時また改めて考えれば良いと、割り切っていたはずではないか。
またうだうだとそんなことを考えていたら、食も進まなかった。
「どうしたの、夏葉ちゃん? 調子でも悪い?」
食卓を囲む中、秋菜がわたしの様子がおかしいことに気がついたようで、心配して尋ねられる。
「あ~。今日ね、病院に行ってきたんだよ、DNA検査の結果を聞きに」
「あぁ、今日だったんだ。それで、どうだった?」
「いやぁ、分かっちゃいたけど、体も心も女性って言われて、改めてショックを噛み締めてるところ」
「今更? 夏葉ちゃん、まだ受け入れてなかったんだ?」
「いや、受け入れてたつもりなんだけどさぁ。いざ医学的に診断が出ると、なんか複雑な気持ちになるんだよねぇ、これが」
「そんなもん?」
「そんなもんなんだよ」
叔父さんたちは口を出さずに聞いている。
今ひとつ食欲も出ないし、早めに自部屋に退散してベッドに入った。
よほどショックが大きかったのか、その晩熱を出した。
熱のせいか、変な夢を見た。
男の自分がなぜか十一夜君と桐島さんと三人で仲良く食事をしているのを、女のわたしが遠くから見ているという変な夢……。
そこへどういうわけか黛君が厨房から出てきて、その後を追うように、彼のお父さんだと思い込んでたあのおじさんが出てくる。
わたしは声をかけようかと思ったけど、あの人はお父さんじゃないからやめておこうと思い留まる。
あの人がお父さんじゃなくても、黛君は黛君なのに、声をかけるのを思い留まる理由になっていないが、これが夢の中ってことだろう。自分でも全く意味がわからない。
ウェイトレスが水を運んできたのでお礼を言おうと顔を見上げたら、高笑いする麻由美ちゃんだった。
もうほんっと、何が何やら……。
翌朝、怠さが昨晩と変わらず熱も下がらない。この状況に、なんだか嫌なことを思い出す。
そう、わたしが女子化してしまったあの運命的な発熱だ。
あの時も、朝になっても熱が下がらないという事態が数日続き、その間に体が女子化してしまうという、多分人生を大きく変えることとなる大事件が起こったのだ。
病院で女性と診断された矢先に、今度はまさかまた男子に戻るとか? さすがにそれはないよな、と思いつつもそんな疑問が脳裏を掠める。
男子に戻る。
あれほど望んでいたにもかかわらず、今の自分には単純に嬉しいと思うことはできなかった。
もしそうなった場合、せっかく親しくなったクラスメイトたちの前から姿を消さなければならないことが心に重くのしかかる。
あとつんつるてんになった体毛問題な。
どうすんのこれ?
脇毛もすね毛もお髭もないよ? 何なら一番恥ずかしいのはあそこの毛がないよ?
まあ女子でもここまで処理しちゃってる人はそんなにいないと思うんだけど、男としてはつんつるてんはなんかだいぶ恥ずかしい気がするんだけど……。
あ、海外に行っちゃえば普通?
家族がいるパナマに行っちゃえばそこは問題ないか。
男子に戻った場合、一番心配なのが陰毛事情ってどうなのよって気もするが、意外とそういうことが気がかりだったりして……あは。
まあとにかく、すっかりこの生活にも馴染んだ今となってはJK生活も結構楽しかったりして、むさっ苦しい野郎どもの汗臭い世界に戻るとしても、夏場はちょっとなって思ったりする自分もいるわけだ。
そんな愚にもつかないことをぐるぐると考えながら一日中熱に浮かされていたが、翌日には熱もようやく下がってくれた。
熱は下がれど不安は尽きぬ。
そういえば、女体化した時ってずっとおっぱいが成長していったけど、今回変な発熱で心配だったので、何度もおっぱいの状態を確認した。
今では掌に余るほどに成長した大きさよし。
揉み心地よし。いつも通りだ。
形は鏡見てないから不明。
色艶よし。色素沈着とは無縁のきれいな色をしている。
うむ。幸いにもおっぱい戦線異状なし。
って、「幸い」って言っちゃった?
うーーん。男子化してないことを幸いって、心の中で思ってるってことなのかなぁ……。
やはり複雑な心境だ。
そう言えば心のどこかでホッとしている自分がいるような気もしないではない。
女子化しちゃった時には、男として最後の砦があった股間の変化にショックを受けたっけなぁ……。
今や隔世の感があるよね……。
すっかり遠い日の思い出となりつつあるあの日のことを思い出しながら股間をパンツの上から確認してみる。
————あれ、この感触は?
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